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    FUMIxTxxxH

    BMB垢 ルクアロ前提チェズモクの人
    ここに上げたものはpixivにも上げます!

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    FUMIxTxxxH

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    一個前のおまけ。
    チェズレイの白髪の話。

    A few years later


     特にやることが無かったから。ソファの背もたれに腰かけて、雑務に励む相棒の形良く丸い頭を、なかなか拝む機会のない旋毛を、隙のないキューティクルの流れを辿って眺めていた時だった。

    「あ、白髪。」
     気づいたらもう手が伸びていた。出会った頃より少し短い、それでも丁寧に伸ばされた髪から一束を掬う。チェズレイの手元のそれは然して重要な案件ではないとあらかじめ聞いていたので、モクマがちょっかいを出しても邪険に振り払われることはなかった。
    「よく気づきますね、どこです? これ? どれ……ああ、こんなものよくもまあ気づきますねェ……」
     嘆息混じりの声には感心よりも呆れの色が多く滲んでいる。ちくりと刺すような棘は、それこそ出会った頃からモクマが気にしたためしなどないので痛くも痒くもない。甘い棘で刺して刺されて、互いにわかってやっている戯れももう長い。
    「おじさん、老眼知らずよ?」
    「忍者だからですか?」
    「そ、忍者だから」
     こめかみを悪戯に擦り合わせながら二人でモクマの手の中を覗き込む。ごく僅か光り方が違うことで気づいた一本の白髪は何だか小さな幸運の兆しにも見えた。
    「抜きます?」
     あの時の仕返しに、と笑うチェズレイは楽しそうだ。
    「よく覚えてるねぇ。……うんにゃ、このままにしとくよ。」
     ひとすじふたすじ曇っても褪せても、この男の持つ輝きは衰えない。むしろうすぎぬを重ねるように、内部に微細な傷を抱える宝石のように、それらが増えていくにつれ光の屈折を複雑化させてより多面的な色味を孕むだろう。あとなんか勿体ない。
     白く透き通った一本を、ただでさえ淡い金髪の中に混ぜ込むようにして戻してしまうと、もうどこにあったかわからなくなってしまった。秘密の庭に宝物を埋めたような心地で真っ直ぐな髪を梳く。
    「お前さんも味が出てきたな」
    「何だか助平な言い方ですね」
    「スケベなおじさんは嫌い?」
    「品が無いのはいただけませんが……ま、それも雑味ということで」
     手袋越しの指先に呼ばれて顔を寄せると、愛おしそうにモクマの髪へ触れてくる。毛質が強いので根本から立ち上がりふわふわと纏まりにくいのは相変わらずだが、かつてと違い全体が煙がかったように灰色をしている。
     モクマの髪。里を追われ島を出てからあっという間に褪色し、歳に見合わぬ真っ白さでモクマの纏う胡散臭さを大いに助けてくれていた。チェズレイと過ごすうちにふたたび色を取り戻しはじめたものの、そも年齢も年齢なので完全に真っ黒とはいかなかった。というか本当にシマシマになった。「斑に染まった間抜けさもあなたらしいですけど」と言いながらも見苦しくならないようチェズレイが定期的に染めぼかしてくれるので、“おじさん”は以前よりも緩やかに老けていっている。それは年下の男と歩みを揃えるのにちょうどよかった。
     緩やかであれモクマが年を取るなら、当然チェズレイも同じだ。かつての鮮やかな毒々しさは薄れ、代わりに重く燻したような深みのある妖しさが増した。嗜好が複雑化し、妥協点の幅が広がり、無意味な遊びを楽しむようになった。
    「ねえ、モクマさん」
     ついでに可愛げとかそういうものも増加の一途を辿っている。当たり前のようにソファの隣を空け、手元の帳簿やタブレットを遠くへ押しやってモクマを見上げる視線は小さな子供のように傲慢で甘ったれだ。
     堪らなくなって、勢いよく座面に転がり込みながらその真っ白い頬やら目元やら耳元やらへやたらめったらキスを落としてやった。
    「ん~いい子いい子! まだまだ育てよ〜!」
    「私が今いくつだと思っているんですかあなた」
     焦れたようなキスが唇へ落ちてくる。――ああ、まったく年甲斐もない!
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    Replies from the creator

    FUMIxTxxxH

    DONElife is yet unknown.

    モクマさんの手について。
    諸君がワヤワヤやってるのが好きです。
     事の起こりは、路傍の『それ』にルークが興味を示したことだ。

    「モクマさん、あれは何でしょう?」
     大祭KAGURAから数週間後・ブロッサム繁華街。
     夜とはまた趣を異にする昼時の雑踏は穏やかながら活気に満ちている。人々の隙間から少し背伸びしてルークの視線に倣うと、路地の入り口、布を敷いた簡素なテーブルを挟んで観光客と商売人らしい組み合わせが何やら神妙な顔を突き合わせているのが見て取れた。手に手を取って随分と熱心な様子だが、色恋沙汰でもなさそうで。
    「観光地ともなれば路上での商いはいろいろあるけども。ありゃあ……手相を見てるんだな」
    「手相……様々ある占いの中で、手指の形や手のひらに現れる線からその人を読み解くといったものですね」
     両腕に荷物を引っ下げたままタブレットでちょちょいと字引する手際はまさに若者のそれで、実のところモクマはいつも感心している。
    「こんな道端で……というよりは軒先を借りて営業しているんでしょうか」
    「案外こういう場所の方が一見さんは足を止めやすいもんだよ。そも観光なんて普段見ないものを見て歩くのが目的だもの。当たるも八卦当たらぬも八卦、ってやつさ。」
     益体 8628

    FUMIxTxxxH

    DONEknot for two.

    ED後、チェズレイの手の話です。
    お手て繋いでイチャイチャしてるだけ。
     夕食の香草焼きが美味かった。サラダのドレッシングはモクマが作ったが、こちらも会心の出来だった。チェズレイも気に入ってくれたらしい。
     どこまでもマナーの行き届いた彼が最後までひとくち分残しておくのは、食べ終わってしまうのを惜しむ気持ちの表れだと、今のモクマは知っている。たぶんもう、今のこの世でモクマだけが知っている。


     片付けを済ませると、どちらからともなくリビングのソファに並んで腰を下ろした。テレビも点けず穏やかな静けさを共有する。
     二人では居るが、特に交歓に耽るでもなくただ二人で居る。それが心地好い関係に落ち着ける日がくるなんて、かつては思いもしなかった。決して楽しいばかりではなかった二人の馴れ初めを手繰れどただただ小気味良いばかりだ。
     モクマは晩酌に徳利一本と猪口を持ち込み、チェズレイはタブレットで何やら悪巧みを捏ね回している。しかしお互いに片手間だ。何故なら、ふたりの隣り合った手と手は繋がれているから。チェズレイが求め、モクマが応えた。逆の日もある。時折ふたりの間に発生する、まるで幼い恋人同士のような戯れ。
     ……そんな片手間に、モクマはぼんやりと宙を仰いだ。まだ一杯 4701

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    高間晴

    DOODLEチェズモク800字(いつもより字数オーバー気味)。珍しく二日酔いのモクさん。■二日酔いの朝


     朝、モクマはベッドから身を起こしてずきずき痛む頭を抱える。二日酔いなんて酒を飲み始めた年の頃以来経験していない。だが、昨夜はチェズレイが隣でお酌なんてしてくれたから嬉しくなって、ちょっとばかり飲みすぎた気がする。それ以降の記憶がない。
     ふいに部屋のドアをノックする音が聞こえた。チェズレイの声が「朝ごはんが出来ましたよ」と告げる。モクマは返事をして部屋を出ると洗面所へ向かう。冷たい水で顔を洗うと少しさっぱりした気がして、そのままダイニングへ。
     おはようと挨拶をすればチェズレイが鮮やかに微笑む。味噌汁のいい匂いがする――と思ったのは一瞬で、吐気をかすかに覚えた。
     ――あ、これ完全に二日酔いだわ。
     典型的な症状。食べ物の匂いがすると胃のあたりが気持ち悪くなる。頭痛もぶり返し始めた。だがチェズレイがご飯をよそってくれているのを見ると、どうにも言えない。
     朝ごはんはやっぱり白米がいいな、なんて冗談半分で言ったら、その日のうちに炊飯器を取り寄せて味噌汁の作り方までマスターしてしまうのがこのチェズレイという男だ。そこまで想ってもらえるのは嬉しいが、時々、ほんの少しだけ 892

    高間晴

    DOODLEチェズモク800字。眠れない夜もある。■インソムニア


     同じベッドの中、モクマはチェズレイの隣で寝返りをうつ。
    「眠れないんですか?」
    「なんか寝付きが悪くてな。……寝酒でもするか」
     起き上がろうとしたモクマの肩を押し止める。薄暗がりの中でプラチナブロンドが揺らめいた。
    「寝酒は体によくありません。それだったら私が催眠をかけて差し上げます」
    「えっ」
     モクマは少しぎょっとする。これまで見てきたチェズレイの催眠といえば、空恐ろしいものばかりだったのだから。するとそれを見透かしたようにアメジストの瞳が瞬いて眉尻が下がる。今にも涙がこぼれ落ちてきそうだ。――モクマはこの顔にたいそう弱かった。
    「モクマさん……私があなたに害のある催眠をかけるとでも?」
    「い、いやそんなこと思っちゃおらんけど……」
     言われてみれば確かにそうだ。この男が自分にそんなことをするはずがない。
     しなやかな手によって再びベッドに背を預け、モクマは隣に横たわるチェズレイと目を合わせた。
    「目を閉じて、ゆっくり呼吸してください。体の力を抜いて」
     穏やかな声に、言われるとおりにモクマは従う。
    「想像してください。あなたは果てのない広い草原にいます。そ 854