「で、あいつなんて言ったと思うよ?『お前もそういうところは愉快だな』だぞ?どういうところだよ愉快なのはお前の頭だっつーの!」
毎月恒例の近況報告という名の飲み会。今夜指定されたのは、最近話題の激安居酒屋だった。飲み放題をつけた慶は、焼酎としか書いてない酒をどんどん飲み干していく。僕も少しだけ飲んでみたけど、お酒にこだわりのある久納さんが飲んだら卒倒するだろうなという味だった。
「慶、あんまり安いお酒だと悪酔いするよ?せめて飲み放題やめて普通のにしなよ」
「いや、いい。あいつの愚痴のために高い金を払うのはなんか癪だろ」
そう言ってむくれている姿は、駄々をこねる幼稚園児みたいだ。まあ手に持ってるのは焼酎ロックだから可愛くはないんだけど。結局二日酔いで困るのは慶自身だと言っても、このモードに入ったら何も聞かないのは経験済だ。そうだね、とだけ返して好きなだけ飲ませておくのが一番いい。
「…おい聞いてんのかよ正人」
「うん、聞いてる聞いてる。六弦に面白いやつだって言われたのが気に食わないんでしょ?」
「要約するなよなんか減った気がする」
「うーん、大分酔ってきてるなぁ」
「酔ってない」
「はいお水も飲んで。で、慶は結局どうしたいのさ」