私はある問題に直面していた。それは
「暁人さんいつ起きるんだろう?」
お兄ちゃんが起きないことだ。お兄ちゃんが改心したのは良いものの安心しきった顔でスヤスヤと寝ているのだ。ちゃんと食事やトイレの時は起きるけどそれ以外は寝ていることが殆どで、絵梨佳ちゃんがほっぺにツンツンしたり、爆音を出したり、好物の稲荷を作ったりしても起きないのだ。KKさんが言うには
「多分不安な状態でいたから逆に安心しきって眠っているんじゃないか?まぁそっとしておいてやれ」
とのことだけどさすがに心配になる。
「ていうかKKさんの方こそ退院してから全然寝てないみたいですけど何かあったんですか?」
「ああ、片っ端からヤクザを逮捕してるからな。暁人が裏社会の人間とも繋がっていたからその縁を切るために暁人が有力な情報を流している間に俺も証拠を掴んで一気に潰したんだよ」
「えっとつまり・・・」
「まあ簡単に言えば俺ら二人で日本中の極道を壊滅させてる感じだな」
さらりと凄いことを言うKKさん。というかこの人はお兄ちゃんのためなら何でもしそうな人だ。
「そうだよ~はんしゃはぶっつぶさないといけないからね~」
「あ、お兄ちゃん起きた」
「・・・えっ!?寝てた!?」
どうやら自分が寝ていたことにも気づいてなかったらしい。
「おう爆睡してたぞ。寝顔も可愛かったって麻里達が写真撮ってたぞ」
お兄ちゃんは恥ずかしそうにして布団を被った。ちなみにその後の写真を見せてもらったのだが本当に可愛い寝顔をしていた。
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元々里があった場所やって来ると大量の十字架が立てられていた。
「こんなことしかできないけど・・・」
お兄ちゃんは花を一つずつ丁寧に置いていった。私達は手を合わせるだけで何も言わずにいた。しばらくするとお兄ちゃんは立ち上がった。
「麻里、綺麗なものを汚すのは簡単なことだけど汚れたものを綺麗にするのは難しいんだよ。それにこれは贖罪だ。だからこれでいいんだよ」
「でもやっぱり・・・」
私が反論しようとするとお兄ちゃんは私の肩に手を置いた。
「ありがとう麻里。僕のために泣いてくれて。大丈夫だよ僕はもう二度と間違えたりしない。一緒にいる限り絶対に」
そう言って微笑むお兄ちゃんはとても美しかった。だけど家に帰ったとたん爆睡しやがってこの野郎! 私は自分の頬を引っ張った。痛い・・・夢じゃないんだ。お兄ちゃんは本当に帰ってきたんだ。
「・・・ま、り・・・ぼくの、そばから・・・はなれ、ない、で・・・」
寝言でそんなことを言っているお兄ちゃんに少しだけ意地悪をしたくなって私はそっぽを向いて寝ることにした。もちろん嬉しくて泣きながら寝ました。
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皆が寝静まったころ、暁人は出かけていた。肌は傷跡にまみれ、赤いスカートを穿いている。そしてライフルを取り出すと、脳天に弾丸を打ち込んだ。
「お前がマレビト退治に協力するとはな」
俺は暁人の近くで見ていた。消した傷跡がまた出てきているのはある種の精神的なスイッチなのだろうか。
「俺がいる限りマレビトは消されると思え、盗んだ武器はたんまりとあるからな。死にてぇ奴は前に出ろ」
煙草を咥えながらそう言う暁人の姿はどこか頼もしかった。ただしケツに弾丸だけは止めてくれ、マジであれはトラウマものだから。
そのあとはひたすらにマレビト狩りをしていた。まぁ楽勝だったけどな。ただ一つだけ問題があったとすれば・・・ 俺は隣にいる暁人をチラ見する。
そこには銃口をマレビトの口に突っ込み引き金を引く暁人がいた。うん、あれだ、あれはダメだ。マレビトには血も肉の無いのだが何度見てても慣れないし正直逆にグロすぎて吐き気を催しそうになる。
「あまり大事にするなよ」
「わかってる」