〈今日の夕飯は外食で済ませて〉
暁人からメールが届く。連絡用にスマホを持たせておいといて正解だった。
「適当にラーメンにでもするか」
「誰と連絡を取ってるの?」
「暁人だよ。最近スマホを持たせてやった」
凛子がスマホをの画面を覗いてくる。
「彼とはどんな感じで過ごしてるの?」
「どんな感じって言われても普通としか答えられないな」
俺が仕事を終えて疲れているときに、何時も玄関から出迎えて、夕飯の準備までして、掃除に洗濯までしてくれる。ちょっと働き過ぎなんじゃないかと思うこともあるが、やりたくてやっているみたいだから何も言えない。この前だって俺が早く帰れる日を予想して、大盤振る舞いして・・・いやそこまでしなくてもいいんだが。笑顔を絶やさずに俺の世話をして
「KK・・・KK!!」
「な、なんだ!?」
「彼のこと考えてたでしょ?」
凛子に言われて自覚した。確かに凛子と喋っていても、頭に浮かんだのは暁人のことだった。
「もしかして好き?」
「はぁ!?」
「KKが暁人くんのことを考えてたからそれでかな~って」
「あいつは俺の世話を焼いてくれるからな。有り難いなとは思うけど、好きとかはねぇよ」
俺が否定すると凛子は残念そうな顔をした。一体こいつの考えが読めない。
「なんだ?俺に好きな奴がいたら良かったのか?」
「さぁ」
なんだよさぁって。まるで分からないぞ。
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「KKお帰り」
「暁人、ただい・・・ま」
いつものように暁人が出迎えるが何かおかしい。鼻を刺すような異臭が微かにする。生ゴミとかそういうのではなく、血のような不快な臭いがする。
「どうかしたの?」
「いや、何でもない。ちょっと疲れたみたいだ」
だが臭いは強くなってくる。リビングに向かうにつれてどんどん強くなっていく血生臭い空気が俺の鼻を刺激する。そしてリビングに入るが特に異変が見当たらない。とりあえず窓を開けて換気をする。
「寒くない?」
「俺は別に」
「・・・」
「どうした?」
「な、なんでもないよ!」
暗い顔をした暁人に声をかけると、すぐに元の表情に戻った。
「とりあえず、お風呂の準備してくるね」
暁人はそそくさと風呂場に向かう。俺は風呂が沸くまでの間、異臭の原因について考えた。第一、この異臭は月に一回は必ずと入っていい程嗅いでいる。明らかに暁人の様子がおかしいが、怪我をしている様子はない。それに異臭を放つ原因となる物は何処にもない。
「KK、お風呂沸いたよ」
風呂場から戻ってきた暁人はいつものように笑顔を向けてくる。俺は悶々とした気分のまま風呂場に向かった。風呂から上がってリビングに戻ると、いつものように暁人がテレビを見ていた。
「暁人」
「どうしたの?」
「今日は疲れたからもう寝る。後は好きにしろ」
俺がそう言うと、暁人は笑顔を崩すことなく、布団を敷いて寝る準備を始めた。そして俺はすぐに寝てしまった。
「KKには、見せられないや」