またあそんでね①Only if you wish,
──次は、◯◯。◯◯遊園地へお越しの方は、こちらでお降り下さい。
アナウンスとともに、上っ調子な音楽が車内に流れ出す。
男はすっと背を伸ばして立ち上がり、口元には笑みをたたえながら、こちらを振り返った。
「凛」
男が名を呼ぶ。してやったりの、悪ガキのような表情で。
いさぎ、と。
凛も呼び返す。それは、数十分前に知ったばかりの男の名だった。
「……お前、まさか」
「賭けは、俺の勝ちだし? 今日一日だけは、誰が何と言おうと付き合ってもらうからな!」
開け放たれた電車のドアから、生ぬるい風が吹き込んでくる。
流れ出す人々の群れが、車内の空気を押し動かし、佇む二人の前髪をふわりと揺らした。
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