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    まさのき

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    まさのき

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    ポップメガンテ前後のif話です。ディーノは父さんと幸せに暮らすことでしょう。あとたくさん人が死ぬ

    #ダイの大冒険
    daiNoDaiboken

    生きもののにおい『まあおまえの匂いは日向のキラーパンサーってとこだな』
    『―――は―――のにおいがするよ』
    『なんだそれ。全然説明になってねえじゃねえかよ』


     
     ぼくが「こわい」って言ったら、〈とうさん〉がぼくをこわがらせるものをみんななくしてくれたので、それで、ぼくはうれしくなりました。
     
     ここに来てからは、こわいことの連続でした。
     知らないおねえちゃんや、おにいちゃんが、ぼくにこわいことをさせようとします。あぶないものを持たされたり、つきとばされたりして、ぼくはすごく心細いおもいをしました。ぼくは何回も、いやだっていったのに。
     それで、ぼくは頭の中で、「こわい人たちがぼくをいじめるから、だれか助けて」ってたくさんお願いしました。そうしたら〈とうさん〉が来てくれて、こわい人たちをみんないなくしてくれました。〈とうさん〉はすごく強くて、かっこよくて、〈とうさん〉ががおおってすると、風がたくさんふいて、地面がぐらぐらゆれます。気がついたときには、こわいおねえちゃんも、よろいを着たひとも、大きいきばのいっぱいついたモンスターも、誰もぼくをいじめなくなりました。
     ぼくが〈とうさん〉に「ありがとう」って言うと、〈とうさん〉はぼくのあたまをいっぱいなでてくれて、あったかい気もちになりました。
     
     ぼくの足元で、こわいおにいちゃんがねむっていたので、足でつっついてみました。本当はねたふりをしていて、またぼくをいじめにくるんじゃないかと思うと、心臓がどきどきしたから。まずはじめに、くつで頭のところをつついてみました。おにいちゃんはまだねむっていたので、今度は、すこしいやな気もちがしたけど、手でもさわってみました。でもおにいちゃんはぼくのことを怒らなかったので、ほっとしました。
     おにいちゃんはちょっとだけ目をあけてねむっていました。ぼくはかがみこんで、おにいちゃんの背中に耳をあててみました。そしたら、おにいちゃんの背中から、へんなにおいがしたので、ぼくはびっくりしました。〈とうさん〉は、それは血のにおいだとぼくにおしえてくれました。ぼくは血のにおいのことについて、ひとつくわしくなりました。
     
     とうさんがまたがおおってすると、おそらからおおきなドラゴンがとんできました。とうさんは、「行こうディーノ」と、ぼくに声をかけました。ディーノというのは、ぼくの名前のことです。
    「どうした?」と、とうさんはぼくにききました。「こっちに来ないか」
     ぼくはすこしもじもじしました。とうさんにお願いがしたかったけど、おこられたらいやだなと思ったからです。
    「このおにいちゃんと一緒でもいい?」
     とうさんはちょっとむずかしい顔をして、それから、「かまわない」と言いました。
    「それだけでいいのか」
     ぼくはうん、とこたえました。ぼくたちはいっしょにドラゴンに乗って、空のうえをあちこちとんでまわりました。ぼくは、こんなに楽しい気もちになったのははじめてで、うんとはしゃぎました。はしゃぎすぎて、一どだけ、ドラゴンのせなかからおにいちゃんを落っことしてしまいました。
     おにいちゃんはぐっすりねむっていたので、せなかから落っことされても怒りませんでした。とうさんはおにいちゃんをおいていこうとしたけど、ぼくはちゃんとドラゴンをとめて、おにいちゃんをまたせなかに乗せてあげました。
    「そんなにそれが気に入ったのか」
    「とうさん、このおにいちゃん、へんなにおいするよ」
    「それは生きものの朽ちていく匂いだ」
    「朽ちていくにおいって、血のにおいのこと?」
    「いいや。それとは似ているが、別のものだ。饐え、ほどけ、限りなく遠ざかっていく、そういうものの匂いだ」
     とうさんの言っていることは、むずかしくてよくわからなかったけど、ぼくは「うん」とこたえました。ぼくは、おにいちゃんのあごのところに鼻をつけて、しばらくにおいをかいでいました。おにいちゃんの体からは、やっぱり、へんなにおいがしました。でも、いやじゃないにおいです。それは生きものの朽ちていくにおいだと、とうさんは言っていました。

     ぼくたちはドラゴンをおりて、そうして、ふたりで暮らしはじめました。でも、ぼくがずっとおにいちゃんのにおいをかいでいるので、とうさんは自分の血を一滴たらして、おにいちゃんのにおいがこのさきもずっと変わらないようにしてくれました。とうさんは何度もやめなさいって言ったけど、ぼくはいやなことがあったり、こわいことがあったときには、きまってこのにおいをかぎにきます。このにおいをかぐと、すごくほっとするから。だからぼくは、誰かに好きなにおいをおしえてって言われたら、こう答えるつもりです。ぼくの好きなにおいは、生きもののくちていくにおいです。
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    まさのき

    DONEアンデルセンの「雪の女王」をわりとまじめにパロったカイ潔(+糸師兄弟)です。藤田貴美さんの漫画版に多大なインスピレーションをいただいてます。中盤までカイザーの気配が皆無ですが、ちゃんとカイ潔です。

    ゲルダ→潔(と冴)、カイ→凛、盗賊の娘→カイザー
    花待ちの窓雪の晩に、枕べで聞く物語



    第一のお話 はじまり


     昔、むかしのお話です。ここではないどこか遠くの国の、知らない土地の、小さな箱庭の村に、ひっそりとよりそい合って暮らす、三人の子どもたちがおりました。三度の春と冬のあいだに生まれた彼らは、名前をそれぞれ冴、世一、凛といいました。赤髪の冴は、三人の中ではもっとも年長で、その下に世一と凛が続きます。泣き虫世一と、やんちゃな凛、面倒見のよい冴の三人組は、遊ぶときも、出かけるときも、眠るときでさえもいつも一緒でした。血をわけた兄弟である冴と凛は、となりの家に住む世一のことを、まるで本当の兄弟のようにたいせつに思っていました。世一だって、冴と凛の二人と血がつながっていないことなんて、つゆとも気にしたことはありません。だって、朝も昼も夜も、扉を開けばそこに冴と凛が立っていて、ふたりといれば、世一に怖いものなんて、なんにもなかったのです。三人は野を駆けて遊び、泥まみれになって眠り、手に手をとって、いつまでもいつまでも仲むつまじく暮らしていました。
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    まさのき

    PASTポップメガンテ前後のif話です。ディーノは父さんと幸せに暮らすことでしょう。あとたくさん人が死ぬ
    生きもののにおい『まあおまえの匂いは日向のキラーパンサーってとこだな』
    『―――は―――のにおいがするよ』
    『なんだそれ。全然説明になってねえじゃねえかよ』


     
     ぼくが「こわい」って言ったら、〈とうさん〉がぼくをこわがらせるものをみんななくしてくれたので、それで、ぼくはうれしくなりました。
     
     ここに来てからは、こわいことの連続でした。
     知らないおねえちゃんや、おにいちゃんが、ぼくにこわいことをさせようとします。あぶないものを持たされたり、つきとばされたりして、ぼくはすごく心細いおもいをしました。ぼくは何回も、いやだっていったのに。
     それで、ぼくは頭の中で、「こわい人たちがぼくをいじめるから、だれか助けて」ってたくさんお願いしました。そうしたら〈とうさん〉が来てくれて、こわい人たちをみんないなくしてくれました。〈とうさん〉はすごく強くて、かっこよくて、〈とうさん〉ががおおってすると、風がたくさんふいて、地面がぐらぐらゆれます。気がついたときには、こわいおねえちゃんも、よろいを着たひとも、大きいきばのいっぱいついたモンスターも、誰もぼくをいじめなくなりました。
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