悶々ベッドに横たわっていたら、白いシャツが床に落ちるのが見えた。
思わず視線をスティーブに向けると、ギリシア彫刻のような身体が目に飛び込んでくる。
砂漠で水を求める人のように掠れた声で名前を呼ぶ。
スティーブは俺にゆっくりと覆いかぶさり、唇を重ねた。キスは次第に深まり、スティーブは俺の服に手をかける。
肌を重ねることは好きだ。ぬるついた皮膚が溶け合ってスティーブと境目が無くなるような気がするから。洗脳以外で自分が自分じゃなくなるのは初めてで、狂いそうな快楽の中で自分に血が通っている感覚を呼び起こす。俺を生に縛りつけているのはスティーブだと思い知らされる。そのことが憎らしく何よりも愛しかった。
「僕を見ろよ」
ギラついた青い瞳に、思わず吹き出してしまう。
みんなに愛されるヒーローじゃない、欲望に屈服した裸の男がそこにいた。