いつまでも子ども扱い「ねぇ、宗司ってさ、独身だよね?」
「ええ、そうですよ」
「宗司って何歳だっけ」
「39歳です」
暴行事件を起こしすぎて親に見捨てられたあたしの実質的な保護者、烏丸宗司。あたしは彼の事が好きだ。彼に保護されたのは小学校中学年くらいの時だったから、最初は純粋に義理の親として好きだったけれど、最近はそうではない。彼のどの手にも指輪が嵌っていない事、家の中にあたしと宗司以外の生活用品が無い事を確認して問いかける。こんな質問をすれば彼の歳なら好意があることくらいわかるだろうに、あえて無視しているのか、あたしを子供としてしか見ていないからそういう発想に至らないのか、ニュースを見ながら淡々と返事をする。
「彼女とかいるの?39で独身って結構婚期逃してない?」
「まぁ、そうでしょうけど居なくて困るわけでもありませんし」
ソファに座ってiPadの画面を眺める彼の腕にほのかに膨らみ始めた胸を押し当てながら問を続けるが全く反応は無い。とりあえず彼女がいないらしい事は確認できて安心した。事実として彼は自分とあたし一人の面倒を見ることができるくらいの経済力と生活能力があり、わざわざ彼女や妻を作って家事をしてもらう必要も共働きしてもらって経済援助を受ける必要も無いのだ。
「でもいたらきっと幸せだよ」
「幸せの形は人それぞれですよ。私は一人で暮らすのが好きなんです」
「じゃあ何であたしを泊めてくれるの?」
小学生の時から変わらず宗司は週末に同じ場所に迎えに来てあたしを家に泊めて世話をしてくれる。長期の休みで学校が無い時なんかは1カ月近く宗司の家に居座ったままというのもざらだ。
「あなたは私の娘みたいなものですから」
『娘』と言われてあたしは頬を膨らませ、宗司の手からiPadを奪い取る。
「ねぇ!こんだけ言ってもわかんないわけ!?こんなに可愛い女子中学生が家に居るんだよ!?手を出そうって気にはならないの!?」
「貴女は私を犯罪者にする気ですか」
「バレてないだけで世の中中学生に手出す大人なんていっぱいいるじゃん!ねえ知ってるでしょ?あたし生理だって来て子供ももう産めるんだよ。中学卒業すれば結婚だってできる!あたしもう子供じゃない!『女』なんだよ!」
宗司から取り上げたiPadを床に投げ捨てると宗司の胸倉に掴みかかりながら服を捲り上げてブラを見せつける。大きくは無いけれど、もうきちんとしたブラジャーが必要なくらいには育っている。しかし宗司は小さくため息をつくと服を捲り上げるあたしの手を掴んで服を下ろさせる。
「さっき私の年齢を聞いたでしょう。貴女のお父さんと大して変わらないんですよ」
「だったら何だっていうの。今時年の差婚なんて珍しくないじゃん」
宗司は困ったように目を伏せてあたしから顔を背けながら眼鏡のブリッジを軽く抑える。
「私はあくまでも貴女を娘として愛しているんです」
「じゃああたしに彼氏ができてもいいわけ?あたしが援交してよその親父とセックスしてても気にならないの?」
「後者は犯罪だから止めますよ」
「今の状況だって同じようなもんじゃないの?宗司はあたしとは血縁関係ないただのおじさんだよ」
「それじゃああの家に帰りますか?」
「…………」
宗司は意地悪だ。あたしが自分の家に絶対に帰りたがらないのを分かっていて、通報しないのを分かっていてあたしの恋心を無視したまま一緒に過ごすという美味しい思いだけを享受しているのだ。
「うるさい!うるさいうるさい!いいからあたしを愛せ!」
やけくそになって歯がぶつかるような勢いで宗司にキスをすると、口の中に舌を差し込まれた。肉厚な舌で口内を犯され、息継ぎのタイミングが分からず酸欠で痙攣する手で宗司の服の袖を掴むとようやく解放され、突然の酸素の供給にむせ返る。
「キスもできないお子様はそれに相応しい態度でいなさい」
宗司はそう言い捨てて床に捨てられたiPadを拾い上げ、画面の割れ等が無いかを確認していた。