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    spring10152

    @spring10152

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    spring10152

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    告白 「タマと一緒に倒れていたのはお母さんと彼氏さん」「ずっと家の中にいなきゃいけなくて、お前は世界からいなくならなきゃいけないって言われてた」

     タマが身の上話を始めたのは、一緒に暮らし始めてから1ヶ月ほどして、夕食後にテレビを眺めながら休んでいる時、CMが流れている間に躊躇いがちに消え入りそうな声で自分と一緒に倒れていた人達はどうしたのかとタマが問いかけてきたのに亡くなっていたから葬儀を行って今は埋葬済みだと正義が答えてからだった。

      「手も、前はこんなじゃなくて、おかしいのは角だけだった」

     細い身体を震わせ、息を詰まらせながら語るタマの姿があまりにも痛々しくて、正義はタマの肩を抱いて「無理して話さなくていい」と告げたがタマは話を続けた。
     タマが言うには牙や巨大な手はあの日突然変異したものだが、角は生まれつきのもので、人に見せるのが恥ずかしいからと物心ついた頃には家に閉じ込められていた。やがて人目を避けて島に引っ越し、父親と母親の仲が悪くなり、離婚した後は『お前のせいだ』と監禁生活に加え母親による虐待が始まった。毎日家事をさせられ、文句をつけられ、罵声を浴びせられ、殴られることもあった。食事は1日1回。入浴は許されず、毛布を一枚だけ与えられ、暑い日も寒い日も硬い床で寝る日々。母親が新しい彼氏と付き合い始めると、彼氏から殴る蹴る、時折り煙草を肌に押し付けられたりの暴力を振るわれるようになった。
     あの日は母親とその彼氏が酒を飲んで酷く酔っていて、酌をさせられていたタマを見て怪物退治と言い始め、車に押し込んだかと思えば山に連れ出し、普段に増して一層酷い暴行を加えた。散々に嬲られて薄れゆく意識の中、割れた酒瓶を振り上げる男を見て殺される、と思い力を振り絞って振り払ったら首が半分千切れてしまい、動揺している間に続いて襲いかかってきた母親から逃れようと腕を振っていたら腹を抉ってしまった。自分の身体の変化に混乱している間に、殴られた頭からの出血と無理矢理飲まされた酒が回っていたこともあり意識を失い、気づいたら正義に保護されていたらしい。
     「タマ、本当に怪物になっちゃった。……ここにいるのも迷惑だし、出て行った方がいいよね」俯きじっと異形の手を見つめながら震える声でタマは呟いた。
     「迷惑じゃない。出ていかなくてもいい。今は姿を隠していてもらわなきゃならんがどうにか外に出られる方法も一緒に考えてやる」こう答えつつ頭を撫でると、タマは黙ってボロボロと涙を溢した。
     「辛かったな」丸まった背を優しくさするとタマはう、ぐ、ぅ、と声を詰まらせて泣いた。
     これ以上どんな言葉を掛けたら良いか分からなかった正義は、タマにティッシュを箱ごと持たせて涙を拭かせながらあやすように背を軽く叩いていた。
     やがて泣き疲れてタマの涙が止まるのを見ると、「牛乳暖めてやろうか」と立ち上がりキッチンへ向かい、冷蔵庫から牛乳を取り出して自分の大きくて質素なマグカップへ注いで砂糖を加え、電子レンジで温めて戻ってきた。
     「おいしい」「それ飲んだら歯磨いてやるから、今日はもう寝な」火傷をしないようぬるめに作られたホットミルクを飲んで一息つくタマを見て正義はふ、と微笑んだ。
     手が大きくて歯ブラシが持てないタマの歯を丁寧に磨いてやって寝室へ向かうのを見送り、タマが来てから別室に新しく用意した自分の布団に潜り込む。
     数十分して微睡み始めた時トントン、と控えめにドアがノックされた。起き上がってドアを開けると、そこにはタマが毛布を引きずって立っていた。
     「どうした?」「……一緒に寝てもいい?」正義よりも30㎝近く背の低いタマが上目遣いで見上げてくる。
     「いいよ、おいで」タマを部屋に招き入れ、布団に入れると(娘と暮らしていた時みたいだ)なんて思いながら自分の胸に頭を擦り付けてくるタマを寝かしつけ、一緒に眠りについた。
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    spring10152

    DONE烏丸さんが芽衣ちゃんを育てて食べようと決意する話
    捕食者と被食者の出会い「おじさんあたしを隠して!」
    彼女との出会いはこの一言だった。私は彼女の通う小学校の学校医で、職務を終えて自分の病院へと帰ろうと丁度車のドアを開けたところに彼女が飛び込んできたのだ。何事かと事情を問おうにも彼女はしっかりと車に入り込んでしまい後部座席の足元に姿を隠して早く発車しろと怒鳴るばかりで取り付く島もないので、仕方なく私は彼女を車に乗せたまま出発した。
     到着するとひとまず彼女を病院に上げて事情を聴くことにした。何でも担任が気に食わなくて鋏で刺してきて追われていたところを私は保護してしまったらしい。そういえば健康診断の時に問題児が居るから怪我を負わされないよう注意しろと言われていたが、もしやこの子の事だったか、と面倒事を抱え込んでしまった事にため息を吐いた。食べて隠蔽しようかとも思ったが、事前準備もなく連れてきたのでは警察に捕まってしまうかもしれないし、聞いてみれば4年生だという彼女は食べるにはやや大きい。どうしたものか、とりあえず学校に帰そうかとすると「どうせ明日には処分が決まるんだから今日はここに居させてよ」とふてぶてしい態度の彼女は病院内の備品に張り付いて離れない。しぶしぶ私は彼女を病院に置いたままその日の診察を終わらせた。
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    recommended works

    @t_utumiiiii

    DOODLE #不穏なお題30日チャレンジ 1(2).「お肉」(傭オフェ)
    ※あんまり気持ちよくない描写
    (傭オフェ) ウィリアム・ウェッブ・エリスは、同じく試合の招待客であるナワーブと共に、荘園の屋敷で試合開始の案内を待っていた。
     ここ数日の間、窓の外はいかにも12月らしい有様で吹雪いており、「試合が終わるまでの間、ここからは誰も出られない」という制約がなかろうが、とても外に出られる天候ではない。空は雪雲によって分厚く遮られ、薄暗い屋敷の中は昼間から薄暗く、日記を書くには蝋燭を灯かなければいけないほどだった。しかも、室内の空気は、窓を締め切っていても吐く息が白く染まる程に冷やされているため、招待客(サバイバー)自ら薪木を入れることのできるストーブのある台所に集まって寝泊まりをするようになっていた。
     果たして荘園主は、やがて行われるべき「試合」のことを――彼がウィリアムを招待し、ウィリアムが起死回生を掛けて挑む筈の試合のことを、覚えているのだろうか? という不安を、ウィリアムは、敢えてはっきりと口にしたことはない。(言ったところで仕方がない)と彼は鷹揚に振る舞うフリをするが、実のところ、その不安を口に出して、現実を改めて認識することが恐ろしいのだ。野人の“失踪”による欠員は速やかに補填されたにも関わらず、新しく誰かがここを訪れる気配もないどころか、屋敷に招かれたときには(姿は見えないのだが)使用人がやっていたのだろう館内のあらゆること――食事の提供や清掃、各部屋に暖気を行き渡らせる仕事等――の一切が滞り、屋敷からは、人の滞在しているらしい気配がまるで失せていた。
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    spring10152

    DONEひなたに彼氏の肉を食わせる静さんの話
    幸福な食卓私はルームシェアをしているひなたの為に毎日食事の用意をする。それが私達の役割分担だったから。私は正直料理の腕には自信がある。毎日一汁三菜、ほかほかと湯気を立てる温かい食事を、愛を込めて用意していた。そう私は彼女の愛していた。
    私が彼女の愛していたというのは、友愛や親愛ではない。恋愛感情だ。私は彼女が欲しいと思っているし、彼女が他人と話していれば嫉妬する。正真正銘欲を持って愛していた。
    けれど彼女が同性愛者でない事は分かっていたし、私はこのルームシェア生活が続きさえすればそれで良かった。想いを伝えるつもりなどなかった。あの日までは。
    彼女が男の恋人を作ってきたのだ。今まで恋愛にはあまり興味が無い、彼氏はいらないと言っていた彼女が。私の見知らぬ男の隣で幸せそうに笑っていたのだ。許し難かった。そんな男の何がいいのだ。背なら私だってひなたよりも高いし、性格だって女の子に好かれやすい。顔だって悪くないはずだ。私の方がひなたの事を何でも知っていて気遣いができて最高の恋人になれる筈なのに。それなのに、あいつは男というだけで私からその座を奪い取ったのだ。
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