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    spring10152

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    処罰の箱庭SSまとめ

    鳥籠の小話認識の歪み レグホンと烏骨鶏

     「災難だったね」私のお見舞いにやってきた烏骨鶏が、私の無くなった腕を見てまるで自分のことのように痛々しい顔をして話しかけてくる。
     「大丈夫、きっとすぐ生えてくるし、レッドも帰ってくるよ」烏骨鶏は器用に林檎を飾り切りにして美しい葉を作りながら静かに呟く。無くなった腕が生えてくるわけはないし、死者は蘇らない。
     一見荒唐無稽で、無責任で、他人事のような慰めに聞こえるが、彼女はいたって真剣に言っているのだ。
     彼女は記憶保持能力が低い。それは私達の中では比較的生き残りやすく、そして数多くの私達を見送ってきた彼女の防衛機制のためだ。だから彼女は今までの私達が死んだことを覚えていないし、これからの私達が死ぬことを覚えない。
     それ故に、彼女の中では私達は怪我をしても元通りになるし、戦地に赴いたまま帰らなくなっても帰ってくるのだ。
     自分一人だけ幸せに暮らしていて憎たらしいのか、空想に囚われていて哀れなのか。その答えを出す頃には私の無くなった腕が生えていることだろう。


    同一の別人 梟と木兎

     梟は私が何代目かを区別していない。その割に自分が親しかった個体との区別はきっちりつけていて、私とは一定の距離を置いている。
     けれど私は知っている。私が仮眠をとっているとき、梟が私の髪に口付けていることを、縋り付いてもう嫌だ、何も失いたくない、と、か細い声で呟いていることを。
     きっと以前の私は彼女の愛する人で、心の支えとなっていたのだろう。
     『私』を求めて涙を流す彼女に、私は一体何ができるだろうか。


    キスの味 2番と3番

     「初めてのキスはレモンの味がするって本当かな」多目的室のカーペットの上に転がり本を読んでいた2番があたしに向けてか、それとも独り言かといった風に呟いた。
     「ねえ、あんたあたしより長生きしてたんでしょ。華の女子高生だったんならキスの経験の1つや2つくらいあるでしょ」本から視線を上げた2番があたしを見る。
     「とっ、当然でしょ!あたし可愛かったし!そりゃあモテたんだから!」彼女の視線に焦り、あたしは思わず見栄を張って盛大な嘘を吐いてしまった。
     「何味だった?」彼女は本を閉じて無造作に置くと体を起こしてあたしの話を聞く姿勢を取る。「甘かったわ」泳ぐ視線を悟られないよう彼女から顔を逸らしながら答える。
     「ふーん?」彼女の声の近さに驚き、顔を戻すとふにゅ、と唇に心地よい温かさの柔らかいものが触れ、状況を理解させるかのようにゆっくりとその熱は離れていった。
     「嘘つき」彼女は意地悪く口角を上げて囁いた。「何の味もしないじゃん」
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    spring10152

    DONE烏丸さんが芽衣ちゃんを育てて食べようと決意する話
    捕食者と被食者の出会い「おじさんあたしを隠して!」
    彼女との出会いはこの一言だった。私は彼女の通う小学校の学校医で、職務を終えて自分の病院へと帰ろうと丁度車のドアを開けたところに彼女が飛び込んできたのだ。何事かと事情を問おうにも彼女はしっかりと車に入り込んでしまい後部座席の足元に姿を隠して早く発車しろと怒鳴るばかりで取り付く島もないので、仕方なく私は彼女を車に乗せたまま出発した。
     到着するとひとまず彼女を病院に上げて事情を聴くことにした。何でも担任が気に食わなくて鋏で刺してきて追われていたところを私は保護してしまったらしい。そういえば健康診断の時に問題児が居るから怪我を負わされないよう注意しろと言われていたが、もしやこの子の事だったか、と面倒事を抱え込んでしまった事にため息を吐いた。食べて隠蔽しようかとも思ったが、事前準備もなく連れてきたのでは警察に捕まってしまうかもしれないし、聞いてみれば4年生だという彼女は食べるにはやや大きい。どうしたものか、とりあえず学校に帰そうかとすると「どうせ明日には処分が決まるんだから今日はここに居させてよ」とふてぶてしい態度の彼女は病院内の備品に張り付いて離れない。しぶしぶ私は彼女を病院に置いたままその日の診察を終わらせた。
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    spring10152

    DONEひなたに彼氏の肉を食わせる静さんの話
    幸福な食卓私はルームシェアをしているひなたの為に毎日食事の用意をする。それが私達の役割分担だったから。私は正直料理の腕には自信がある。毎日一汁三菜、ほかほかと湯気を立てる温かい食事を、愛を込めて用意していた。そう私は彼女の愛していた。
    私が彼女の愛していたというのは、友愛や親愛ではない。恋愛感情だ。私は彼女が欲しいと思っているし、彼女が他人と話していれば嫉妬する。正真正銘欲を持って愛していた。
    けれど彼女が同性愛者でない事は分かっていたし、私はこのルームシェア生活が続きさえすればそれで良かった。想いを伝えるつもりなどなかった。あの日までは。
    彼女が男の恋人を作ってきたのだ。今まで恋愛にはあまり興味が無い、彼氏はいらないと言っていた彼女が。私の見知らぬ男の隣で幸せそうに笑っていたのだ。許し難かった。そんな男の何がいいのだ。背なら私だってひなたよりも高いし、性格だって女の子に好かれやすい。顔だって悪くないはずだ。私の方がひなたの事を何でも知っていて気遣いができて最高の恋人になれる筈なのに。それなのに、あいつは男というだけで私からその座を奪い取ったのだ。
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