4/19 Bs2-E1―――負けに不思議の負けなし。
チームが決して好調ではない場合、勝負を分けるのはミスの数だ。
エラー、投げミスに配球ミス、走塁死やバントミス…
それを言うのであれば今日の鷲のミスの数は相手を上回ってしまったと言わざるを得ない。
昨日の相手チームもひとつのエラーから崩れた。
今日はそれが逆だった。
再三の好機に点が取れない。
挙句に9回表、ツーアウト一塁二塁でツヨシ内野手がライト前ヒット。
二塁走者は足の速いハルキ外野手。
浅い当たりだが、ここは本塁を狙うしかない。
全ての状況がサードコーチャーにゴーサインを出させた。
結果は………
「………もう。仕方なかったのよ…。あのワンプレーだけじゃないわ。9回に至るまで色んな事が起こっての負けだった……」
「おーい、大丈夫か?試合終わってからずーっとカウンターで溶けちまってたけど…」
「大丈夫…。ごめんなさい、オーナー。こんな遅い時間まで…」
「いや、俺は別に平気なんだがよ。そろそろ終電の時間だろ?親御さんが心配するんじゃねえか…ってかマディンやマドリーヌとは同居してんのか?」
「ううん、私は一人暮らし。お父さんとお母さんの実家は、ここから電車で一時間くらいの所よ」
「なら良いか。…いや良くねえな、大学生とは言え未成年者をこんな時間に一人で帰らせるのはな…家まで送るか?」
「ううん、私は平気。こちらのセッツァーもそろそろお仕事切り上げると思うから、この近くで待ち合わせを」
「それなら、この店に来いって連絡入れとけよ。俺もそっちのセッツァーにいっぺん会ってみたかったしさ」
仕事中とは言え、鷲が負けた一報はダーツバーで嫌でも耳に入っている筈。
落ち込んでいるであろう同じ姿のセッツァーに、何か気の利いた一杯でも振る舞おうか―――
ブラックジャックのオーナーは、ボトルを眺めて優しく微笑んだ!