はじめての、ふわふわ。朝だ、と言っても恐らくもう昼に近いと思うのだが。
今日はRADも休みだしゆっくり出来そうだと思って、アラームも切ってあった。
体を起こし、腕を上げて大きく伸びをした途端、腰に重みを感じる。
「…もう、おきるの…?」
振り返ると、目の開ききっていないシメオンが、俺の腰にしがみついていた。
「…おはよう。珍しいね、まだ眠いの?」
「んー…もーちょっ…とぉ…」
シメオンが、ギュッと抱きしめ頭を擦りつけてくる。
「…もー…しょーがないでちゅねー」
俺は、シメオンに向き直り、あぐらをかいてシメオンの体を引き込んだ。
シメオンは俺の膝の上ですやすや眠っている。
「かわいいなぁ、ほんと…」
俺の腰に腕を回して眠るシメオンの頭を撫でる。
柔らかくてふわふわした髪は、触り心地がよく、ついずっと撫でてしまう。
今日はどこへ行こう、何をしようと考えていたけれど、こんなのんびりした休日も、たまにはいいのかもしれない。
だって、こんなに無防備にシメオンが甘えてくれるのだから。
そんなほんわかした気分に包まれていると、部屋の扉からけたたましい音がする。
ドンドンドンドンッ!
「おいっ!MC!いるんだろ!?ちょっと付き合えよ!…っとぉ」
扉を叩きながら開けてきたのは、空気が読めないことに関しては天才的な、マモンだった。
勢いよく部屋に入ってきたものの、俺と、俺に絡みついているシメオンの姿を見て、さすがに足を止める。
「…しっ!しっしっ!」
俺は、マモンを睨みつけ、手で追い払うジェスチャーをしながらマモンを追い出した。
シメオンが泊まりに来てるんだから、フツー、邪魔しないだろ!
さすが、悪魔と言うべきか…。
ほっとしたのも束の間、俺の膝の上でシメオンが動く気配がした。
「…んん…だれか…きたの?」
シメオンが、体を回して俺をぼやぁっと見つめる。
「うん。マモンが来たけど、追い返した」
俺はまた、シメオンの頭を撫でながら答える。
「…みられちゃっ…た?」
恥ずかしそうに、上目遣いで俺を見る。
「…だろうね」
「……はずかしっ」
俺が肯定すると、シメオンはまた俺の腰に腕を回し、ギュッと俺の腹に顔をくっつけて隠した。
「…今さらでしょ」
あまりに可愛い反応に、俺はくすりと笑う。
「…お、起きるっ」
しばらく俺にくっついていたシメオンが、ガバッと勢いよく起き上がる。
先ほどの出来事ですっかり目が覚めてしまったらしい。
「えー?もう起きちゃうの?」
せっかくの甘々な時間を邪魔されたようで悔しくて、シメオンの腕を引っぱって俺のあぐらの上に乗せ、向かい合う形で座らせる。
「うわっ!」
「まだいいじゃん。今日はゆっくりしよ?」
突然のことに驚いているシメオンを、ギューッと抱きしめ、肩に顎を乗せる。
この時間を、誰にも邪魔されたくない、そんな気持ちを込めて。
「…いいの?」
シメオンは、俺の腰のあたりを掴み、少し体を離して俺の目を見る。
確かに、休日はどこかに出かけたり何かをすることがほとんどなので、こうして、何もせずのんびりすることはめったにない。
「いいよ。今日はゆっくりしたい気分…でしょ?」
予定も決めてなかったし、何よりシメオンが、そうしたいと言っている気がして。
「…うん」
俺が微笑むと、シメオンは俺に抱きついてきた。
やっぱり今日は、これがいい。
「ね、シメオン」
「ん?…あっ…ちょっと…やめっ…くすぐったいっ…」
呼びかけに応え顔を向けたシメオンの唇に軽く触れる。
突然のキスに目を見開くシメオンの、おでこに、頬にと、キスの雨を降らせる。
やめてと言いながら、俺のキスを受け入れ、優しく笑うシメオンが可愛くて仕方ない。
俺は、シメオンを抱え直し、ストレートに誘う。
「…シメオン、もっかいしよ?」
「えっ?…も…もう、お昼だよっ!?」
シメオンが、明らかに動揺している。
「いーじゃん。お昼はあとで外で食べよ?」
「そ、そういう問題じゃなくて!だ、誰か来たらっ…」
キョロキョロしながら戸口の方を見る。
さっき、マモンが入ってきたことを思い返しているのだろう。
「大丈夫だよ。マモンは追い払ったし、あとは部屋に引きこもってるか、すでに出かけてるかだろうから誰も来ないって…たぶん」
「…今、たぶんって言った?」
俺が最後につけ足した一言を、シメオンは聞き逃さなかった。
ただ、実は、さっきマモンを追い出した時に魔法で鍵をかけておいたので誰も入って来られないのだけれど、シメオンはそれを知らず本気で心配しているようだから、このまま内緒にしておこう。
「あ、聞こえちゃった?ねー、誰か入ってきちゃうかもねー」
そう言いながら、シメオンの首筋に舌を這わせ、パジャマの裾から手を入れる。
「やっ…じ、じゃあダメだよ!」
「なんで?見せつけてやればいーじゃん」
「そんなっ…むりぃっ…あっ」
シメオンが腕の中でジタバタするので、腰の辺りを撫でると徐々に力が抜けていく。
「ま、時間もあるし、たっぷり可愛がってあげるっ」
一瞬の隙をついて、体を反転させ、抱えていたシメオンをベッドに組み敷く。
「やっ…ちょっ…ほんとにっ…だ…めぇ…」
「ホントにそー思ってる?」
俺がどんどん身ぐるみを剥がしていくと、言葉とは裏腹に、シメオンから熱っぽい視線が注がれる。
これは、堕ちるのも、時間の問題だな。
今日は一日、シメオンとこうやってまったり過ごそう。
たまにはそんな日も、あってもいいよね。