いい夢を 温客行が目を覚ましてから、幾年が経っただろう。
「……老温?」
髪が真っ白になった片割れの、カクリと力の抜ける姿が目の裏に焼き付き、心の臓が止まりかけたことは今でも鮮烈な記憶。
周子舒を生かす代わりに眠り続ける姿をそばで見守り、目覚めるのを待ち続けた時に感じた恐怖は、眠る温客行の呼吸が止まるのではないかという想像だった。
なにがあろうとずっと付き添っていたが、ようやく目を覚ました温客行の姿を見てもその頃の恐怖が抜けるのに要した時はあまりにも長く。
「どこにいるんだ?」
いつの間にか、眠るときには何をしてもしなくても、隣にいることが習慣化していた。
温客行が失われることを恐れて眠りの浅い周子舒に嫌な顔せずそばで寄り添い続けるのは私の特権だといって憚らない男は、神仙の身体が睡眠をあまり必要としないのをいいことに夜がな通しで寝顔を見続けていたこともある。
1485