家族(another side) 先輩は、よく先の話をする。
明日、来週、次の季節、来年、そして、いつかという見えないところまで。
その度に僕は、できたら、とか、そうなるといいですね、とか、返してきた。
そうすると先輩は、張り合いがないな、と肩を竦めていた。
だって分からないじゃないか、先のことなんて。
いつまでもふたりでこうしていられるとは限らない、出会いがあれば別れもある、こんな仕事でいつどうなるかも知れやしない。だから期待し過ぎないようにしないと、って、そういう僕なりの気の持ち方なんですよって、話したことも何度かある。
そうすると、先輩は今度は、何にも言わずに苦しそうに、少しだけ、目を細くしていた。
それから経たかなりの年月。
1869