となり 何かを決めるとき──そう、例えば勤務の帰りに寄った店で
「今日酒飲みます?」
と聞かれたら俺は
「飲む」
とか
「今日はやめておこう」
とか、答える。
その度にサギョウは
「そうですね」
と言って俺に倣う。
また別の時、
「今日うち来ます?」
と聞かれて、
「行く」
もしくは
「行かない」
と答えると、
「了解でーす」
と、返してくる。
そう、あいつはまず、相手に聞くんだ。
気付いたのは付き合いを始めてからしばらく経ってようやくだ。だが思い返してみればそれより以前からもそうだったように思う。
だから、今日、
「します?」
と聞かれて、
「お前はどうしたいんだ?」
と、聞き返した。
質問に質問で返すのはもってのほか。知っていた、わかっていた、それでも聞いた、知りたくて。
サギョウは目を見開いた、それだけ予想外だったのだろう。
言い淀んだ口元に触れて、答えより早く告げた。
「上も下もない、隣だ。だから、お前から言って、いいんだ」
ゆっくり見開かれて、それからまた徐々に撓んだ目元。
「……したい」
求められて、頷いて、それから抱きしめた。
兄だから、後輩だから。
故についたのだろう窺い譲る癖。
すぐには気付けなかった、俺はいつでも優先されて、そして決められる立場にいたから。
申し訳なさを上回る、今のうちに知られてよかったという安堵。
そしてなにより──
甘えてくれた喜びが、ますます身体を熱くさせた。