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    オサハタ

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    オサハタ

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    付き合い始めたばかりの半サギョの可愛いはなし。

    #半サギョ

    kawaii 上役、から、最近恋人になったこの人は、何だか急に言い淀む機会が多くなった。
     言おうとしたくせに、その直前ではっとして、何でもない、ってはぐらかす。

     そんなの、気にするなって方が無理だろう?
     
     だから意を決してとうとう問い詰めてやった。
     何を言おうとしたのかと。
     ここは僕の部屋、他には誰もいない、ゴビーはとっくにおねんねだ。
     だからいいでしょう、と、顔を近付けて目頭に力を込めて問うと、向こうは、ぐっ、と一度たじろいでから、ようやく教えてくれた。

     可愛い、と、言おうとした。

     と。

     おずおずと絞り出された声に嘘はないだろう、そういう人じゃ無い。
     とはいえそれがそんなにも禁句であろうかと眉を顰めた僕に、曰く相手は、

     俺が言うとどうにも上から目線というか、お前にしてみれば面白くない言い回しなのではと思うと、口にするのが憚られた。

     とのことだった。

     可愛い。

     その言葉が僕には縁遠いものであるのは確かだ。親──特に母だが──に『あの時は可愛かった』なんて気恥ずかしい思い出と共に過去形で言われることがたまにある程度で。

     とはいえ、別に、言われるのが嫌、という感覚は、無いな。

     特に、貴方からならば。

    「可愛いですか? 僕は、あんたにとって」

     聞きながら、思い起こしたのは今までに相手が言い淀んだ状況の数々。
     それらはどれも何の意識もなくいつもどおりに振る舞っていたときばかりだ。
     それを、可愛い?

     真顔のままさらに顔の距離を詰めて迫った僕に、相手は──恋人になったばかりの、先輩は、

    「すごく、可愛い」

    僕の目を真っ向から見つめ返しながら、はっきりと、そう言った。

     だけど──

    「嬉しいですよ、ありがとうございます──でも、ね……?」

     僕にとっては、それの何が? と疑問に思うようなことを気遣って、それでいて聞いたらちゃんと答えてくれて、そして真っ直ぐに伝えてくれる、そんなあんたが──大好きな恋人が──顔を真っ赤っかにして、照れ臭そうに、そのくせ僕以上に嬉しそうにはにかんでいるところなんて見せられ、たら──

    「先輩も、すーっごく、可愛いですよ?」

    と、伝えられずにはいられないでしょう?
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