Blooming 会ってすぐに気付いた、いつもと違う匂い。
指摘すると香水だと言われた。
珍しいな、と返すと、向こうは
『昔、背伸びをしていたときに買ったものを見つけて』
と言いながら親指の腹で自身の顎先を撫でた。
『久しぶりの、ふたりでの外出だから』
そう続いた言葉の端に滲むのは面映さ。
視線が逸らされたのはその延長であろうと予想はできたが、それでもこちらを向いて欲しいんだ、俺は。
「楽しみにしていてくれたなら、よかった」
心からの一言に、
『そりゃ勿論!』
と、相当な勢いで振り返ってくれた真剣な目つきと、そのすぐ下の血色が良くなっている頬。
そこは、頭上で綻んでいる桜の花弁よりも濃い紅色に染まっているが、
「ありがとう」
と、返した俺の頬も、同じような色をしているのだろう。