共同作業 はじめてだった。こんなのところを誰にも見られたくない、知られたくもない。必死に隠していたのによりにもよってアイツに見つかってしまった。
「香ちゃん、一人でしてたの?」
獠の呆れた口調はきっと顔にも出てると思う。
「……悪いかよ」
「いや、別に悪かぁないけどな」
ヒョイッと持ち上げられるマスコットのキーホルダー。それはアニキへのプレゼントだった。
「随分と可愛すぎじゃね?」
苦笑する獠からキーホルダーを奪い返しキッと睨みつけた。
「どうせ不器用だよ! こんなの作ったことないからな!」
何が切っ掛けなのか分からない。クラスの女子の間で何故かマスコット作りが流行りあたしもそれに参加せざるを得なくなった。
「ちょっと貸してみ」
「嫌だっ! って、あっ!」
獠が素早くオレの手からマスコットを奪い取り黒のマジックで眼鏡を描き始めてしまった。
「あぁっ! 何すんだよ!」
「ほれ、俺との共同作業だ」
渡されたマスコットには歪な眼鏡が描き足されたショックより違う感情が胸を占めてしまう。
「二人で作ったって事で」
よろしく。と獠は満足気に部屋を出て行く。
なんで、眼鏡に苦戦してたのに気づかれたんだろう。それに獠と共同作業って……。
「はじめて……なのに……」
アニキに渡すはずのマスコットはどうやら別の物になりそうだ。
了