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    yuuki1yuuki

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    yuuki1yuuki

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    悲鳴嶼さんが疲れてるやつ

    人の幸せは各々違う悲鳴嶼は疲れていた。
    本当に、本当に疲れていた。

    連勤だけなら耐えられた、そう、連勤だけなら耐えられた。
    だけど、それに官僚との食事会やら何やらが含まれるのならば話は別だ。
    昼間も夜も、休む暇無く働いた。
    猫、猫を吸わせてくれ。

    もう無理だ、身体が重たすぎる。
    眠い、辛い、疲れた…
    もう嫌だ、帰りたい。猫、猫、猫…

    重たすぎる足をずるずると引きずり歩く。
    あぁ、なんで私は家を山奥にしてしまったんだ、遠い、遠すぎる。
    この後、町を越えて、山を登って…遠いだろ。
    せめて担当範囲がりえ


    「悲鳴嶼さん、任務帰りかぁ?」
    「不死川か…」

    後ろから声をかけられ、振り向けば、良く知る気配に少し気分が上を向く

    「あ~…お疲れっぽいなぁ」
    「少しな」

    あぁ、猫、猫、猫、猫、猫を吸わせてくれ
    柔らかい腹毛に顔を埋めてもふもふしたい。かわいらしい肉球に口付けをさせてくれ。

    「もし良けりゃあ、家に来ませんかぁ、猫が縁の下で子を産みましてね、助言が欲しかったんですが」

    不死川の家は町の入り口よりも此方側、徒歩でも四半刻もかからない。
    だが、今から猫の世話の指南等無理だ。
    到着したら爆睡する自信がある

    「申し訳ないが「勿論、存分に休んでから猫の事教えてもらえたらありがてぇです。じゃっ行きますよ!」

    ひょいと右の脇の下に入り込んだ不死川がグッと私の腰を支えてくれる。
    人肌からの熱が服越しでも凄く心地よい。
    が、私は断ったと思ったのだが??

    「南無…」
    「悲鳴嶼さん、ちょっとすいません。」

    膝裏にスッと入れられた腕に持ち上げられておそらく不死川の胸の前に持ち上げられる。
    肩甲骨の後ろあたりに回された腕と膝裏に回された腕で支えられているが、安定感がある。

    「悲鳴嶼さん、何か疲れてんでしょ?ちょっと走りますんで、俺の首に腕回してもらっても?」

    言われた通りに腕を回すとほんの少しの時間で藤の香りがする屋敷についたようだ。

    「着きましたよ、いつもの部屋に行っててください。すぐに食事を持っていきますねぇ」
    「いやいや」
    「あっ、寝ててくれても良いですよぉ。うち隠が通いなんで、今から作りますから、ちょっと時間かかるんでむしろ寝ててください。布団出しますから」
    「いやいや」

    ひょいと玄関に座らされて凄く手際よく草履を脱がされたと思ったら今度はひょいと肩に俵のように担ぎ上げられる。

    「ちょっ!ちょっと待ってくれ!」
    「この部屋使ってくださいね、すぐに布団出すんでぇ」

    座布団の上に下ろされるとすぐに不死川が離れて、押入の開く音がしたと思えばすぐにバサッと布団を取り出す音がする

    「爽籟、悲鳴嶼さんの家にうちで休ませるって伝えてくれるかァ」
    「分カッタァ!」
    「ほいほい、布団を敷きましたよぉ、この上着も隊服も脱いでください!上だけで良いですから!ほら寝た寝た!」

    ボフンと布団に倒されると、干してあまり時間がたってないのか、ふかふかで気持ちが良くて、目蓋がどんどん下りてきてしまう。

    「おやすみなさい」
    「あぅ…」
    「ご飯出来たら起こしますからァ」

    暖かい声に暖かい布団
    太陽の香り。目蓋の裏が明るくなってすとんと意識が落ちていくのを感じた。

    腕、腕、腰、腹、胸、?胸?
    身体の上に微かな重みが動いている?
    ふっと目蓋を上げれば、既に外は明るくなっているらしく、隠の足音や、鳥の鳴き声が耳に届く。

    「んっんぅ」
    「目が覚めましたァ?」
    「不死川?」
    「おはようございます。ハハッ顔スッキリしてますね。風呂沸いてるんで入ってきてください」

    不死川の声に身体を起こそうとすると、胸の上から不満そうな声がする。

    「うなぁん!」
    「ねこ?」
    「あぁ、そいつ人が寝てたらすーぐ胸の上に乗っかってきて降ろそうとすると怒るんですよぉ、おらこっち来い、子猫が待ってんぞぉ黒豆」

    黒豆、と言うことは黒猫なのだろうなぁ
    胸元から小さな重みが消えていく。

    「黒豆と言うのか」
    「えぇ、豆みたいな麿眉がある黒猫だからさぁ、風呂からあがったら抱っこしてやってくださいね」

    腕を引かれて立ち上がらせてきたかと思いきや、そのまま不死川が背にまわり、風呂場までぐいぐいと背中を押される

    「さぁさぁ、風呂から上がったら飯ですよぉ、早く入ってきてくださいよ」

    何度か訪れた不死川の自宅だが、今日は妙に騒がしい。
    笑い声や怒鳴り声、女性の声までする。
    沢山の鴉と沢山の人が騒ぐ声が聞こえる。

    服を脱いで、少し熱いお湯で身体を流してから、湯ぶねに浸かれば身体から力が抜けてふぅーっと息をつく。身体の芯までじんわりじんわりと暖まって、身体の緊張が解れていく。

    「ふむ、やっと頭がまわり始めたようだ」

    やはり不眠は身体に悪いようだ。
    普段ならば途中の仕事をまわりにきちんと振って、自分の休息を持てばもっと早く解決したであろう任務もあった。
    そんなことも頭に浮かばない程に頭も身体も疲労していたのだろう
    これは誘拐もどきではあったが、不死川に感謝をせねばな

    「悲鳴嶼さん着替え適当に置いときますねぇ」
    「すまん、助かる」
    「手拭いも服の上に置いてます。着替え終わったら、脱衣場出てすぐのところに爽籟が居ますんでぇ、飯にしましょう」

    楽しそうな声にフッと笑って足音が遠ざかった後に風呂から上がり丈がちょうど良い作務衣に袖を通すと、扉と柱の間から視線を感じて顔を向けると、クワワワワッと甘えた声がする

    「爽籟か?」
    「ソウダァ!実弥ガ待ッテルゥ」

    テテッと床と鳥の爪が当たる音がしたかと思うと、右の裾がツンツンと引っ張られる。
    ツンツンツンツン頑張る爽籟に小さく笑いながらついていくと何故か縁側に案内されると、先程よりもワイワイガヤガヤと騒がしかと思うと、聞こえる声にんっと違和感を感じた。

    「あっ!あがったんですかぁ?どうでした?家の風呂。実は前任の拘りなのか檜なんですよぉ」
    「おっ!旦那!今日の炊き込みは家の嫁衆と甘露寺と胡蝶の五人で作ったんですよ」
    「おはようございます。ですが、だいたい悲鳴嶼さんが仕事をこのように抱え込むから道中で不死川に誘拐されるような事になる「悲鳴嶼さん、おはようございます、でもちゃんと仕事をふってくれないと毒の研究しか出来ないですからこまりますよ」
    「そうですよ!私だって柱なんですから!」
    「悲鳴嶼さん!この漬け物は家の千寿郎が浸けたんだ!是非食べて欲しい!!」
    「…美味しかったよ。悲鳴嶼さんもどうぞ」
    「……」

    柱が集まって何をしているのかと思う気持ちと、皆が楽しそうに笑ってるのを見ると身体が軽くなった。

    「さぁさぁ、悲鳴嶼さん!座ってくださいよぉ汁だけは俺が作っちまったんで我慢して飲んでくださいよぉ」

    縁側に座らされて近くに盆で食事を並べられる。

    「不死川は何度俺がさつま芋を入れた方がいいと言っても聞いてくれなかったんだ」
    「もう、完成してるっつったろぉがぁ」
    「追加で入れれば良かったのに」

    ぎゃいぎゃいと年若い柱の男性陣が騒ぎ女性陣はきゃらきゃらと楽しそうにおにぎりを作り続けている。

    「悲鳴嶼さん、しっかり冷えてるんでどうぞ」
    「ありがとう、伊黒。だが何故こんなに集まっているのだ?」

    飲み物を差し出してきた伊黒に訊ねれば、伊黒はすとんと隣に腰を下ろして、私を見上げてきてるのだろう、目線を頬骨の辺りに感じる。

    「爽籟が今疲れ果てて文句を言わせてくれる状態の悲鳴嶼さんが家に来てるから、最近自分達に仕事を回してくれない柱の統括に文句がある人間は風屋敷に来るようにと通達が入って皆集まってきたんですよ」
    「なるほど…」
    「だから覚悟を決めておいた方が良いですよ。ここに居るのは文句がある人間だけですから」
    「分かった。すまなかったな」

    わいわいと並べられる料理に笑い声につい自分まで笑ってしまう。

    「笑ってても駄目ですからねぇ、食事が終わったら即座に文句言いますから、しっかり聞いて貰いますからぁ」

    席を立った伊黒の変わりに不死川がすとんと座り、私の頬をグイッと引っ張ってくる

    「分かったから、食事をさせてくれるか?」
    「とっとと食ってくださいよ。俺らも言いたいことまとめておくんでぇ」

    ふいっと顔を反らした不死川の頭をポンポンと撫でてやると不死川の体温がグンと上がる。
    それを感じながら見えぬ目で皆が居るであろう明るい外を見つめて、あまりの眩しさにぎゅっと目を細めた。


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