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    renge_sumirexxx

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    乱寂でDom/subです。先生が他の男と寝てる表現、失禁があります(どちらも詳しい描写ではありません)。なんでも楽しめる方のみ。

    乱寂Dom/sub「あ〜おまえ。そか、ごめんねー」
    乱数くんの声が響く。お腹に。私の、胎内に、本来無い器官に。
    「よしよし、ごめんね?待たせちゃった?」
    「…ッ、らむだくん…」
    「わ〜ごめんて、わかってるって!あ、ぼくお酒飲んでるからチューできないわ、あーあ」
    「…ちゅー」
    「出来ないって」
    乱数くん、と呼ばれた飴村乱数は冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出してごくごく飲んだ。
    乱数の頬は酒によって確かに上気していて、この世のどの薔薇より美しいほんとうの薔薇色だ。ぁあ、だめだ、無理。寂雷は腹が痛む。ない臓器が、痛むのだ。
    「寂雷、今月お薬飲まなかったの〜?そういうのボクヤダって言ってなかった?」
    「……忙しくて」
    「ほんとかな〜?甘えてるんじゃない?」
    「…。」
    甘えて何が悪い。いや、悪いのかな、わからない。本当にわからないよと神宮寺寂雷はうなだれてただただ悲しく思う。


    神宮寺寂雷は、中学生の時に、問診、血液検査、面談で、『DomよりのSwitch』と診断された。そして医師になり再度診断を受けた際には『レベル4のDom』と伝えられた。どちらも、ふうん、と思った。
    思春期の時期のまだ身体も心も落ち着かない時期の検査結果が後に変わることはよくあることだし、何より寂雷自体が自分がDomなのではないかなと思う節がたくさんあったので、驚きも歓喜も落胆も特になかった。
    Dom/sub共にレベル5が今の基準値では最大で、レベル3からはカウンセラーがつく場合もあり、希望を尋ねられたが寂雷は日常生活において現状困っていることは何もないと伝えると、医師は「貴方ほどの方ですもんね、Domとしてはとても生きやすいでしょう」と朗らかに笑った。事実寂雷は人になにかを指示したり、褒めてあげたりすることが嫌いではなかったし、寂雷に褒められ喜ぶものの顔はたくさん見てきた。実際subの女性や男性とも付き合ったことがあるし、ただあまり長続きしないのはDom/sub性の問題ではなく単に自分の性格との相性なのだろうと思っていた。Domだと診断された今も特になにも疑問に思わないし感慨も心配もない。ありがとうございました、と伝えると若い男性の医師は嬉しそうに頬を染め、寂雷はきっとこの方はsubだろうな、可愛らしい、と思い診察室を去った。
    レベル4のDom。
    わかってよかった、これからの生き方も今まで通りだし、なんら問題はない。寂雷は採血のあと貼られる清潔な綿とテープを剥いで適したゴミ箱に捨てた。レベル4のDom。問題ない。今日は一日空いているし、どこかで美味しいものでも食べて帰ろうかな。軽い足取りで病院を出た。外の光は変わらず、眩しかった。


    「……飴村くん、何日も連絡もなく、どこに行ってたの…。」
    語尾は震えた。
    え〜?と、シャワーの音にかき消されながら、鼓膜を震わす声がする。聞いてくれているんだ、と少し安堵した。
    寂雷は風呂場のドアの前に指示されたわけでもないのにぺしゃんと座っていて、寂雷は乱数といると自然にこうなってしまう。そう、寂雷は『レベル4のDom』だったのに、乱数に会ってからから、いわゆる交際というものをするようになってから、『レベル5のsub』に診断が変わった。信じられないと自分でも思う。カウンセラーをつけられてしまったし、抑制剤を飲むよう勧められ、それは当然のこととは言え寂雷を戸惑わせた。
    乱数は『レベル3のDom』だった。しかし、プロのDom(パートナーが見つからない重度のsubに対してパートナーの役をする、『職業』として訓練されたDom)だ。
    出会って、お互いのダイナミクスを伝え合う前に身体の関係をもち付き合ってしまい、その後に寂雷は気持ちや身体に不調が出てしまうようになってしまった。
    身体が、心が、そわそわ落ち着かないのだ。
    まだ寂雷がレベル5のsubだと医師から最後通告のようなものを受け取る前は乱数がレベル3のDomだときいたあとであったし、寂雷はもう一段階上のレベル4のDomだったので、単純にDom同士だからダイナミクスの相性が良くなくて身体にバグが起きているのでは?と考え、乱数に伝えた。
    仕事に支障をきたすのは絶対に許されないし、別れも視野に入れたことだった。寂雷はこの時初めてダイナミクスのことをよくよく考えた。今まで些細なことと疎かにしていたのだ。驕っていたとすら思う。そして乱数のことを本気で好きなのだと、気づいた。
    別れたくなかった。


    乱数はその日、アイスクリームを食べていて、昼間の、大通りの公園で二人でいた。風船を持った小さな子や家族連れや恋人同士や部活終わりの若者たちがみんな太陽のまぶしい光を跳ね返すみたいに光っていた、そんな中。

    「寂雷、『Kneel』」

    突然、乱数が、言ったのだ。
    その後のことを正直寂雷は覚えていない。ただ、乱数がその小さな身体で自分を立ち起こしてくれ、好奇の目から守ってくれ、混乱しながらも甘く痺れる身体を抱きしめてくれ、「いい子」と言ったことしか覚えていない。信じられないことに、寂雷は、漏らしていた。
    信じられないほどの味わったことのない悦びが、寂雷の身体をめちゃくちゃにしたのだ。じんわり濡れる下肢が不快なはずなのに気持ちいい。快楽と混乱する頭がもう自分では制御出来なかった。寂雷は泣きじゃくっていた。
    そう乱数によって、完全にsubになっていることに気付いた、始まりの日だ。


    「寂雷〜シャンプー切れちゃった、とって」
    「は、はいッ」
    「慌てなくていーてば」
    「はい。」
    「いい子だね」
    寂雷は立てない。腹の痺れに堪らない。少しずつ、たまっていく感触。
    洗面台の下からシャンプーを取り、ようやっと膝で立ち、ドアの隙間から差し出す指が少し触れて、寂雷はまた座り込んでしまった。寂雷と乱数は、恋人同士(一応)ではあるが、パートナーではない。そして乱数は、交友関係が物凄く広い上にプロDomの仕事も請け負っている。寂雷は、すごくわかる、と思っている。飴村乱数という男はとても『aftercare』が、上手い。所謂、『お仕置き』の後のケアが、なんとも絶妙なのだ。だから信じざるを得ない。だって、subにはそれが全てなのだから。
    「寂雷さあ〜、いい子にしてたぁ?ボクがいないあいだ〜」
    のんびりした声が聞こえる。酒を入れて気分が良いのだろうか、それとも、他の誰か、誰か可愛い子と会ってきたのだろうか。
    やめなさい、寂雷、彼はプロのDomですよそこは触れない、と頭の裏で声がする。
    「…いいこに、して、いました」
    「へ〜」
    「いいこに、していました」
    聞こえなかったかと大きな声で告げる。
    「ハハッ」
    乾いた笑いが聞こえた。
    「ウソじゃん?」
    ガチャンとシャワールームのドアが開いて、乱数がこちらを見下ろした。
    「ウソじゃん?」
    ギラリと光る目に、寂雷は何も言えない。彼には何もかもお見通しだと思う、出会ってから、ずっと。
    あの公園での初めて地面に溶け込むような感覚を不意に思い出した。
    「…ご、ご、ごめんなさい」
    「はい。言い訳は後で聞くからね。寂雷、タオル」
    「はい」
    乱数の目はいつもと変わらなくて、それが寂雷には恐ろしい。


    寂雷は、一昨日、乱数の不在による体調の不調に耐えかねて、いや、性的な欲求もあったのかもしれない、わからない、とにかく恋人、乱数がいるのに別の男に会った。
    乱数にはバレていないはずなのに、すべてを見透かされているみたいだ。いや、きっと、バレているのだろう。
    5つ歳下の男とは会ってすぐホテルに行き寝た。男は意外にも紳士的で、ホテルに誘ったときも躊躇う姿を見せた。行為自体をするつもりではなくただデートの中でパートナーがいない男自身のDom欲を満たすつもりであったらしい。ただ、寂雷の調子がもうどうにも駄目で、抱いてもらわないと無理だった。伝えると男は了承してくれて優しく抱いてくれ、たくさん褒めてくれた。寂雷は、男の手でとかされながら、足りないとずっと思ってないてしまった。足りない足りない、全然足りない。最後まで男は優しくて、寂雷はどうしようもなくなり別れた後直ぐ別の男を探しまた会った。同じことだとわかっていながら。

    「寂雷さ〜、ダメじゃん?ボクがいないあいだ勝手なことしてちゃ?」
    風呂場から出た乱数が洗面所で髪の毛をがしがしと拭きながらボクサータイプの下着を身につけ、オーバーサイズの部屋着にしているTシャツをかぶる。
    乱数は外では寂雷から見たら奇天烈とも言える派手な服を着ているが家ではシンプルなものを身につけることが多い。寂雷がぺしゃりと座っていると乱数の股間や尻が目の前にあって俯いてしまう。
    「言って。寂雷。誰とどこで何してたの」
    「…あ、あの。」
    「言え。寂雷」
    肝が震える。乱数は寂雷のすぐそばで歯を磨いたり化粧水を肌につけたりしている。
    「あ、…、昨日。本当に、昨日で、」
    「…。」
    「あの、ネット、の、掲示板で…人に、会いました…。」
    「掲示板〜?」
    アプリとかじゃなくて?と乱数がドライヤーをかけるためにコードをゆるめる。
    「アプリ…は、わからないから…パソコンで、検索して」
    「へー。いるんだね、今時そーいうやつ。ま、いるか」
    「…はい。検索して、」
    「なんて?」
    「え?」
    「なんて入れたの?検索ワード」
    「…たぶん…『出会い』『募集』『優良』とかで…」
    アッハ!大きな声が脱衣所兼洗面所に響く。乱数の笑い声に寂雷は身を竦める。
    「おもしろいね、ウケる、いいじゃん、前回ひでー出会いだったの、ベンキョーしてんじゃん。優良とかいれちゃってさ、馬鹿みたいだね」
    ドライヤーの音のせいで乱数の声は揺れて、寂雷は泣きたくなる。
    ひどい、前回のことを蒸し返すなんて。ひどいのではないのか?寂雷は、自分の太腿をさすった。どうしていいかわからない。寂雷は過去二度、同じことをしている。その時はレイプ紛いの目にあった。いや、あれはレイプだろう。セーフワードなしの完全なるレイプだった。そのときも何故か乱数にはすぐバレた。
    「……過去のことは…」
    「なぁに〜、?聞こえな〜い。はい、続けて。」
    「…はい。それで、会って、」
    「何?早く言えよグズ」
    「会って、ホテルに」
    「おまえから誘ったの?」
    「…は、い」
    「だろーね。ヤッた?ヤるかそりゃ、ホテルだもんね」
    「…。」
    「答えろって」
    「…はい、寝、ま、した…」
    「どんなやつ?」
    「普通の…サラリーマン風の人でした」
    「セックス、うまかった?」
    「そ、れほ、ど…」
    「ウケる、失礼過ぎない?」
    寂雷はうつむくしか出来ない。乱数の言葉責めにあって、胸が苦しい。だけど、その後にくるアフターケアを渇望している。だって素直に言ったのだから。二人目のことは言っていないけれど、最低限仕置きを承知で言ったのだから。だから苦しければ苦しいほどアフターケアはしみるし、この責め苦も寂雷にとっては甘美なものだ。ただ、今回のことは普通に寂雷の過失で、薬も飲み忘れていたし、してはいけないことをした。二度としないと誓ってすがったのに、三回目だ。いくらなんでもこれはと寂雷は恐怖に震えた。自分がおかしくなっていくことではなくて、乱数から別れを切り出されるかもしれないことに対して。

    「じゃくらぁ〜い、全部、言いな?一人目のやつとのプレイ内容と、あと、」

    二人目もね?

    Glareの眼で見下ろされて、寂雷はついに上半身までべたりと床についた。乱数の立っている珪藻土のバスマットに手をつけて、無様な伏せのポーズをとる。わかっていた、わかられていられた、隠し事なんて出来ないんだ乱数くんには。許されないかもしれない、そうしたら私は死ぬしかない、どうしよう、怖い、怖い、怖い。
    怖い。
    乱数が寂雷の身体を跨ぐように洗面所から出、寂雷は静かにただ、床に這いつくばっていた。早く、早く、早く、私を許して、乱数くん。
    リビングのテレビがついた音がして、冷蔵庫を開ける音がして寂雷は『sub drops』する。呼吸が浅く早くなり、胸が苦しく、意識が朦朧とする、立ち上がることなど到底不可能だ。



    (まで)

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    renge_sumirexxx

    DONE左寂。夜の街を車で走る二人。
    左寂ドライブ「……先生、なに食いてえよ?」
    「う〜〜ん、どうしようかなぁ」

    頬に指を当てるお得意のポーズをしながら青棺左馬刻の運転する車の助手席で神宮寺寂雷はゆったりと微笑んだ。二人は久々の逢瀬で、これから食事に行くことになっている。とても多忙な二人は店を予約することはだいぶ以前からしなくなっていて、今日も時間と互いの腹具合を見つつ移動しがてら店を決めるつもりだった。付き合いたての頃は互いにそれなりに気を張ってあちこち予約したものだがことごとく予定が潰れたり変更になってしまったりするので二人とも謝ったり謝られたりについには可笑しくなってしまって、自然と予約はしなくなった。時間が二人にそういうものを課さなくなったのかもしれない。いい感じにこなれた二人はとても良好にお付き合いを続けている。医者とヤクザという肩書きはもはや、そういう設定だよね、と寂雷が左馬刻の柔らかく白く美しい鼻先をかぷりと噛んで寝しなに笑ってじゃれるくらい甘やかなものになってしまった。左馬刻はまだ時に笑えないが、寂雷があまりに艶っぽく相反して無邪気に笑うのでうやむやになってしまっている。掴まれてるなあと思う。
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