隠れ家 そこは、僕のとっておきの隠れ家だった。
フィレネ王城の一角、使わなくなった調度やがらくたを一時的に保管している場所をくぐり抜けた先にあるちょっとした空間。なんてことはない、ただのゴミ捨て場に出来た隙間に過ぎない。
それでも小さかった僕には、ここがとても素敵な場所に思えていた。なにせここに集められるゴミの中には僕が見たこともないような古びた本だったり武器だったりが紛れ込んでいる。綺麗な刺繍が施されているけれど破けてしまった窓掛けや、縁の欠けた上等な花瓶、底の抜けた高そうな鍋。そいつらはどれもこれも僕には仲間のように思えていた。
僕はいずれフィレネを継ぐ立場にある。立派な王になるために父上や母上から色んなことを学んで、正直なところ自分でも王子さまとしてちゃんとやれていると思っていた。
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