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    名前で呼ばなきゃ振り向かない【士言】「毎度おなじみ、聖杯戦争、聖杯戦争でございます。ご不要になった夢希望、もう諦めた野望などがございましたら、お気軽にコロシアムにおいでください」
    誰が呼んだか、虎聖杯。時間、世界関係なしに冬木に集められたメンバーは己が願いを叶えるため、聖杯を求め激闘を繰り広げていた!りもしていたがなんだかんだと有耶無耶になったりしょうもない願いに使われたりで冬木市には割と穏やかな時間が流れていた。(ここまでのナレーション:cv.J氏)


    「言峰、なぁってば」
    ここは衛宮邸、数多の主要人物が訪れる魔の巣窟である。そんな衛宮邸にまだ幼さを覗かせる男の声が響く。
    「なんで無視するんだよ、今は切嗣も女性陣もいないんだからゆっくりしてけって」
    「……」
    「言峰?」
    少年、衛宮士郎は自分より(さまざまな意味で)一回りも二回りも大きい男に声をかけ続けている。士郎の言った通り、普段ならば男女の声が止む事のない衛宮邸も女性陣は仲良く新都へお買い物、切嗣夫婦も有り体に言えばデートに出かけた。つまり本日この家にいるのは士郎一人なのである。そんな衛宮邸を訪れたのは自動販売機よりもでかい神父、言峰綺礼であった。サーヴァントも連れずにそわ何かと身構えるところだが、生憎士郎はそうではない。むしろ彼を喜んで迎え入れた。理由は単純明快、この二人、端的に言えば恋人同士なのである。わざわざ綺礼がここに足を運んだのも、士郎に会いにきたのだ。
    「俺、アンタに何かしちゃったか?頼む、教えてくれないか?なんで言峰が怒ってるのか俺には分からないんだ…」
    すまない。憂いた表情を伏せ、謝る士郎を綺礼はちらっと流し目で見るとため息を吐いた。
    「取り繕うこともしないとは、正直者もここまで来れば阿保だな」
    「なんでさ、嘘を言ってもしょうがないし、それに言峰はそういう奴あまり好きじゃないだろ?」
    士郎は悩ましげに寄せていた眉を一変してキリッと釣り上げ綺礼の瞳を見つめた。その放たれた矢のような、磨き上げられた剣のような真っ直ぐな鷹の瞳を綺礼は気に入っている。
    「では聞こう、衛宮士郎。お前と私の関係は?」
    「え、えと。こ、恋人…です」
    突然投げかけられた問いに、士郎は顔を赤らめながら気恥ずかしさに段々と語尾を小さくしながらも答える。
    「今、冬木市に衛宮は何人いる?」
    「え。身近にいるのは俺と、じーさんの二人だけど」
    士郎が指折り数えながら脳裏に養父の姿を思い浮かべる。虎聖杯の騒動で再開を果たせた家族だ。
    「そう、二人だ。衛宮切嗣も衛宮士郎も、衛宮と呼んだらどちらも振り向くだろう?それでは些か面倒ではないか」
    「えっと、つまり俺のこと名前で呼びたいなって事?」
    「珍しく察しがいいではないか少年。だが半分ハズレだ」
    にまりと妖艶に微笑む綺礼に士郎の心臓はビートを刻み続ける。
    「私だけに名を呼ばせる気か、衛宮士郎。私たちは[[rb:恋人>・・]]だというのに?」
    恋人の部分を強調し、迫る綺礼に士郎はもうパニック寸前である。可愛そうなくらい顔と耳を真っ赤に染め、目の前にある愛おしい綺礼の豊かなまつ毛に視線が固定される。
    「で、でも、いきなり名前で呼び出したら皆不審がるだろ」
    たどたどしく反論された綺礼はそういうと思ったと言わんばかりのしたり顔で士郎の右耳に唇を寄せると、脳に直接塗り込むように士郎の鼓膜を震わせる。
    「二人きりの時だけでいい。名で呼べ……士郎」
    「っ!?ことっ、いや。き、きき、きれい?」
    「ああ」
    仄かに嬉しそうに返事をする綺礼に、士郎は心の中で可愛過ぎるぞ綺礼!!と叫び、悶え、転がり回っていた。
    「〜〜〜〜綺礼!」
    ガバッと目の前の男を抱きしめ、腕の中に閉じ込める。大人しく腕に収まった綺礼は士郎の首筋に擦り寄るが、それもまた士郎を大いにときめかせる。
    「綺礼といると心臓がいくつあっても足りないかもな」
    今日だけで3回はトキメキ死した。
    「ならばいっそ無くすか?」
    綺礼はクスクス笑いながら士郎の心臓部をするりと撫でる。
    「お揃いになりたい?」
    「それもほんの少しある。だが、この音を止めるには惜しい」
    未だにビートを刻み続けている心臓の音を聞くように掌を胸に当てる綺礼。愛おしげに撫でるその手を、士郎は上から手の甲を覆うように絡めとり持ち上げ、掌にキスをするとにこりと微笑む。
    「綺礼、愛してる」
    「私も、好ましく思っているよ」





    「でもなんで急に呼び方を変えようと思ったんだ?」
    「言ったではないか、衛宮が増えたからだと」
    「それに呼び分けるって言っても二人きりの時だけだど意味無くないか?」
    「本当に鈍いな、士郎。[[rb:鈍>なまくら]]にも程があろうに。そんな切れ味では私は切れんぞ」
    「綺礼を切る気はさらさらないよ」
    「……言い訳を用意しなければ下の名で呼べないとしたら、愛想が尽きるかね?」
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