士郎顔に逆ハーレム展開されてるラスプーチン。金枠概念実体化系カルデアです。
ラスプーチンは単体バスターのB2A2Q1で実装されそうという妄想入ってます。
「言峰、言峰」
ふよふよと赤い布を漂わせながら男の後を追うのは光に当たった赤銅を思わせる髪を持つ少年だ。かるがものように後ろをついて回る少年をため息をつきながら振り向くのは追われている男。
「少年、私についてきても何もないぞ」
青いストラを肩にかけた聖職者は自分より小さな少年のつむじを見下ろす。
「言峰を一人にするのはダメなんだ」
使命感を帯びた顔で見上げる少年に男は再度、軽いため息を吐く。
「私のことはラスプーチンと呼べと言っているだろう、少年」
「俺のことを少年呼びしてる間は言峰って呼ぶからな」
むっとした幼い顔を見せる少年、概念礼装『投影魔術』は擬似サーヴァント、グレゴリー・ラスプーチンに装備されているわけではない。どちらかと言えば少年と同じ顔のセイバー、千子村正に装備されるのだが、戦闘のない時はラスプーチンを見張っている。
「私は何もしないと言っているだろう」
「そうやってのらりくらり躱してきたんだろうけど俺は騙されないからな」
二人の会話はいつも平行線で決着がつかない。言峰を目の届かない所に行かせたくない投影魔術と追いかけられたくないラスプーチンの攻防は大抵第三者に話しかけられて終わることが多い。今回もそのパターンのようだ。
「ラスプーチン、どこだ」
「ん?リミゼロが呼んでるぞ」
投影魔術が声のした方を見ると投影魔術と同じ顔が二人を見つけ歩み寄る。
「ラスプーチン、マスターから呼び出しだ。投影も一緒に来い」
「え、うん。俺もなんだ」
リミゼロと呼ばれた投影魔術と同じ顔の男は、彼と同じく概念礼装の『リミテッド/ゼロオーバー』。彼はラスプーチンの手を取り、シミュレーター室へと歩いて行く。
「リミゼロ、なんで言峰と手繋いでるんだよ」
投影魔術はリミゼロに噛み付くがリミゼロは素知らぬ顔で見返す。
「なんでって言われても俺がこいつのだからだよ」
「なにさ、装備されてるからって手まで繋ぐ必要ないだろ!?」
リミゼロはバスターアップの効果を持っており、ラスプーチンの戦闘スタイルと相性がいい。なのでよく組まされるのだが、それが投影魔術にとっては不満であった。
パシュっと音を立てて扉が開かれる。中にはマスターとサーヴァントと概念礼装がいた。
「あ、きたきた。改めて彼は新しく召喚された概念礼装の『担い手はここに孤り』、担い手くんです」
「またこの手の顔が増えたのかマスター」
赤と黒を基調とした新人はとても見慣れた顔をしている。そしてまた、もう一人同じ顔が話しかける。
「自分と同じ顔がこうも集まられると言葉を無くすな」
彼はサーヴァント、千子村正。投影魔術達と同じ顔をしているが中身は老年の爺だ。
「折角だしこの顔の人たちを一堂に会したら面白いかなって思って」
担い手がラスプーチンをじっと見つめる。そして赤黒いヒビのような模様が走る腕を伸ばし、ラスの胸ぐらを掴んだ。
「……懐かしいな、もう顔も思い出せなかったが。会ってみれば案外分かるものだ」
対となる夫婦剣、干将を手に持ちラスの首を切り落とそうと振るが殺気に勘付きいち早く動いた村正がそれを弾く。
「手前、どういう了見だ。いきなりご挨拶じゃねぇか」
「なんで言峰に刃を向けるんだよ」
「コトミネ、そうだ、言峰だ。思い出してきた、アンタを殺したことは憶え続けていたが…そうだそうだ、言峰、ーっと…そう、キレイ、だ」
ぶつぶつと口の中で唱えるように独り言をこぼす担い手。
「何が目的かはとんと興味ねぇが、こいつに手を下そうってんなら俺も黙っちゃいねぇよ」
リミゼロもスラッと刀を抜く。
「なんでそいつの事庇うんだ?そいつは悪だぞ?」
担い手が淡々と、だが不思議そうに問いかける。
「落ち着きな担い手、悪だろうが悪かろうが今は切り合う時じゃねェだろうが。そんくらい分かってんだろ」
刀を構えたまま村正が声を掛ける。
「………はぁ、懐柔されたなお前ら」
担い手は干将を消してマスターに向き直る。
「すまんマスター、騒がせた」
「えーっと、カルデアでは私闘は御法度だからね」
「ああ、了解だ。言峰、俺は諦めたわけじゃねぇからな。機会があれば次こそだ」
「担い手くん聞いてた!?了承したよね!?」