いつかきっと王子様が… ここは美しい海辺の街、シンヨコハーマ。都ほど栄えてはいないけれど、豊かな海と貿易で人々が幸せに暮らす小国でした。王の名前はヒヨシ、先代から王位を継いだばかりの若い王様でしたが人々の人望も厚く慕われていました。ヒヨシの二人のきょうだい、ロナルドとヒマリも兄をよく助け国民のために働くよき王族でした。兄のロナルド王子は美しい銀の髪にトパーズのような青い瞳と見目も麗しく、国民特に女性からは大人気でした。
その王子には秘密がありました。
王子はカナヅチだったのです。
海の恵みで生きているようなこの国で泳げないとは言語道断。けれどそれには理由がありました。
「子供の時に溺れてから泳げないんだったな」
今日も泳ぎの特訓のために訪れている静かな入江で、指南役を仰せつかった人魚のヒナイチは憐れむようにそう言いました。ヒナイチはお城のお菓子と引き換えにロナルドに泳ぎを教えているのです。
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