Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    まみや

    @mami100_94

    @mami100_94 いろいろやってます

    ☆quiet follow Yell with Emoji 🍻 🍷 🍶 🍵
    POIPOI 44

    まみや

    ☆quiet follow

    夏なので…ホラーテイストスミイサ。
    浴衣と告白欲張りセット。
    全年齢です。
    ---
    なんやかんやあって、スミスはアメリカで、イサミは日本で軍人として復帰している謎世界戦。アフストを通ってない最終回以降って感じです。

    #スミイサ

    夏祭りの怪「スミス。こっちだ」
     導くイサミの声とカランコロンと鳴る下駄の音。祭りのざわめきは遠く、夜の闇に溶けていく。昼の熱気をまだ残す夏の夜だが、山の空気はひんやりと肌を撫でた。
     二人はいつもの任務服ではなかった。サマーホリデーを利用して日本に遊びに来たスミスとルルに日本の祭りを教えてやる!とイサミが用意してくれたのは浴衣だった。初めて袖を通す異国の衣装にスミスもルルも大層喜んだのだ。
     だが、そうして祭りに繰り出した先で皆とはぐれてしまった。提灯の赤は木々の間でぼやけ、虫の声がやけに大きく響く。
    「あいつら、もう下の広場まで降りてるって」
    「そうなのか?」
    「携帯。見てないのか?ヒビキからメッセージ入ってるぞ?」
     言われてスミスはずっと懐にしまい込んでいた端末の存在を思い出す。イサミと過ごす時間に夢中ですっかり忘れていた。
     頭上では梢がザワザワと鳴り、その隙間から時々町の明かりが見える。ハワイとも本土とも違う日本の山の闇は濃い。その非日常的な雰囲気に呑まれそうになりながら、スミスはもう一度心の中で決意を固めた。
    ​───今日こそは……言うんだ……。
     今回ホリデーの間にイサミと会うことになり、スミスは一つ心に決めていることがあった。
    「その、イサミ……」
    「なんだ?」
    「ええと……。こっちの道で合ってるのか?」
    「たぶん…さっきと同じところに出るはずなんだが」
     ほんとはそんな言葉を言うつもりではなかったのに。心に秘めた言葉をなかなか言い出せない。空港からこっち何度もこんなことを繰り返しているスミスだった。もっとも自分たちが道に迷っているのは本当だ。
    「早く下りないと花火が始まっちまう。こっちだ、スミス」
     イサミは今はあまり使われていない旧参道の方にスミスを誘った。
     古い参道は苔むした岩が不規則に並ぶ階段で、舗装されていた表参道に比べると格段に歩きづらい。履き慣れない下駄を履いたスミスは何度も転びそうになった。
    「すまない……アンタ、下駄なんて履くの初めてだもんな……」
     イサミはそう言って、なぜだか慣れた山で迷ってしまったこと、こんな裏道に案内してしまったことを詫びた。
    「謝らないでくれ、イサミ!日本のキモノ、一度着てみたかったんだ!」
    「ん……お前のサイズがあって良かったよ。もう一度御社に戻った方がいいか?でもこの階段をまた登るのもな…」
    「俺なら大丈夫だ!ルルたちが待ってる、急ごう」
    「そうだな。じゃ…」
     スッと差し出されたイサミの手をスミスは不思議そうに見返す。
    「下駄だと危ないからな。俺の手に掴まれ」
    「あ、ああ……ありがとう」
     しっかりとイサミの手を握り、二人は再び苔むした階段を降り始める。カランコロンと涼やかな音が山道に響いた。
     あまり使われていない道にはぽつりぽつりと古い電灯が灯るのみで足元は暗い。スミスは夜目が利くから見えないと言うことはないが、初めて履いた下駄で下りる階段は難しくて、スミスは何度かバランスを崩しそうになった。その度にイサミの力強い腕がグッとスミスを支えてくれる。
     重ねた手のひらからはイサミの体温が流れ込み、スミスは胸の動悸が上がるのを感じた。
    ───俺の手のひら、めちゃくちゃ汗かいてないか!?
     考えれば考えるほど焦って体温は上がり握った手のひらに意識が集中してしまう。かといって自分から振り払うことなどスミスには出来ない。
     そう、スミスはイサミに恋していた。
     相棒、友情、そういう感情を越えて。一度そう自覚したら心に抱いた慕情はもう限界を越え、言葉にせずにはいられなかった。振り向いて貰えるかは分からない。
    ───ダメなら何度でもトライするまでだ…!
     そんな考え事をしていたのがいけなかったのか、スミスは割れた石階段の狭間に躓いてしまった。ふわりと体が浮いて、階段の下に向かって落下する。イサミの手はしっかりと握られていたが流石にスミスの全体重を受け止めるのは難しく、イサミの体も押されて階段の下に向かって倒れ始めた。全ては一瞬の出来事だった。
    「危ない!」
     咄嗟にスミスは力強く足を踏み出し、手を伸ばしてイサミを掴まえる。たしかに掴んだ……と思った手の感触がふっと軽くなりスミスは焦った。
    「イサミ……!」
     足が痛いのも構わず踏ん張ると、イサミの腕を強く引き寄せる。勢い余ってそのまま後ろに倒れ込んだ。
    「いてて……」
    「大丈夫か?スミス……!」
    「あ、ああ……」
     スミスがクッションになりイサミは地面との激突を免れた。固い石階段に衝突したスミスの尻は少しばかり痛むが、二人して石段を転げ落ちるよりは被害は少ないといえる。問題はその態勢だ。尻餅をついたスミスの足の間にイサミの体がすっぽりと収まっていた。
    「スミス?」
     ゴクリ、とスミスの喉が鳴った。薄暗い街灯に照らされるイサミの胸元は大きくはだけている。蛍光灯の灯りのせいかいつもは日に焼けて浅黒い肌が妙にほの白く浮かび上がる。覗き込んだイサミの瞳に映る月が見えるほどに近い。
    「ご、ごめん、俺は何ともないよ!君は大丈夫?」
    「ああ……少し足を捻ったみたいだ」
    「え!?見せてみろ!」 
     慌ててスミスはイサミの足を掴み、触診するようにさすった。こうした怪我の対処は慣れている。患部は少し熱を持っているようだった。
    「ここは?痛い?」
    「あっ……う、ん……っ……」
     鼻から抜けるような甘い声。痛みのせいとはいえ艶かしいその声にスミスはハッと顔を上げた。
     目の前にはしどけなく浴衣のあわせから素足を覗かせている想い人。怪我の処置とはいえ、自分はその素肌をまさぐっている。こんな人気の無い夜道で何か良からぬことをしているような気分になってしまい、スミスは慌ててイサミから手を離した。
    「やっぱり挫いているみたいだな。あまり動かさない方がいいんだが……」
    「スミス…それ……」
    「え?」
     イサミが指差すのはスミスの足元。今日下ろしたてのスミスの下駄は、二人分の体重がかかったせいか鼻緒が切れていた。
    「ジーザス……だ、大丈夫だ、俺は裸足でも!」
    「なぁ、スミス。相談なんだが」
    「な、なに?」
    「お前がこれを履いて俺をおぶってくれよ」
     イサミは自分の下駄を脱ぐと鼻緒に指をかけて持ち上げてみせる。スミスが見た事のない妖しい笑みを浮かべて。
    ───確かに。そうすれば怪我をしたイサミを運べるし、履物は一足で済むな……
     スミスは裾をたくし上げ帯に挟むと、イサミに背を向けてしゃがみ込んだ。リリリ、と草むらで鳴く虫の声が近くなる。イサミの体温が背に落ちた瞬間、思わず息を呑んだ。
    「大丈夫か、スミス?俺、重くないか?」
    「まかせろ!このくらい訓練に比べれば何てこと無いさ!」
     そうは言っても慣れない『下駄』で訓練と同じ動きが出来るとは限らない。スミスは慎重に立ち上がった。
     けれどイサミの体は本当に軽かった。いくらスミスより少し小柄だと言っても鍛えた筋肉量に比べてその重さは軽過ぎるはずだ。だがスミスは背中に感じるイサミの体温にそれどころではなくなってしまった。
    ───Jesus…!こんなにイサミと密着するなんて…!背中に…背中に当たってる…!
     一歩一歩確かめるようにゆっくりと石段を下りながら、スミスは興奮し過ぎてどうにかなってしまいそうだった。不安定な体勢を補うように後ろからぎゅっとイサミが抱き着いてくる。首に回された腕に鼻血が落ちないか、それだけが心配だった。
    「スミス……」
    「え?あ、なに?」
     不埒なことを考えているのがバレたのかと焦ったスミスの声は少しだけ上擦っていた。
    「お前、俺になんか言いたいことあんだろ……今日ずっとなんか言いたそうな顔してる」
    「そ、それは…」
     イサミにはお見通しだったのか。でもそれはそれだけスミスのことをよく見ている、ということで。そのことがスミスにはひどく嬉しい。
     一歩また一歩と石段を下りながらスミスはいよいよ心に秘めてきた言葉を言わねばならぬと決心した。まだ闇の深い森は続いていたがどこかから祭りのざわめきが聞こえる。もうすぐこの二人きりの時間も終わってしまう。
    「イサミ…君に話さなきゃいけないことがある」
    「なんだ?」
    「俺は……君が好きだ。相棒として友としてはもちろんだけど、それだけじゃない。俺は君に恋してる」
     I've fallen for you.
     友としての好意じゃない。もっと深い愛を。スミスの言葉に後ろでふっとイサミが笑った気配がした。背中におぶっているのでその表情は分からないけれど、その吐息はひどく柔らかかった。
    「やっと申したか。待ちくたびれたぞよ」
    「へ?」
     おかしなイサミの言い回しにスミスは思わず後ろを振り向こうとした。だがガッチリとイサミの腕にホールドされていてはそれも叶わない。
    「返事は……下で聞くが良い……」
     ふっと背中が軽くなった。
    「イサミ!?イサミ!!!」
     その時、さっきまで遠くに聞こえていた祭囃子が急にすぐ近くから聞こえた。
    「あ!いた!」
    「スミスゥーーー!遅いっ!」
     目の前には石段の終わりがあり、その広場にヒビキやルルがいる。そして二人の背後にイサミの姿。
    「え?イサミ?いつの間に……」
    「スミス!お前どこではぐれたんだ!?心配したんだぞ!」
     怒りながらイサミの瞳は安堵でゆらめいている。その足元は怪我などしていなかった。
    ───どう言うことだ?さっきまで俺がおぶっていたのは…?
     スミスにはさっぱり訳が分からない。まるで狐につままれたようだ。
    「お前がまたいなくなったら…俺は……」
     イサミはそこまで言って喉を詰まらせた。いつもの冷静沈着な彼からは考えられないほど感情的になっている。無理もない。今までに何度もスミスには置いていかれたのだ。一緒にいるはずの彼の姿が見えなくなれば過去のことを思い出して不安にもなる。
    「ごめん、イサミ!ちょっと道に迷ったみたいで……」
    「そうか…俺も案内するはずだったのにごめんな。手でも繋いでおけば良かったな」
     イサミは真っ直ぐにスミスを見つめる。その瞳には薄く涙の膜が張っていて、それを誤魔化すためか少し照れたように微笑んだ。
     その揺れる榛色の瞳を見たスミスの心は夏の夜空のようにすっきりと晴れ渡った。何を迷うことがあるだろうか?さっき一度口にして少しだけ慣れたのかもしれない。
    「好きだ」
    「は……?」
    「好きだ、イサミ。俺は君に恋してしまった。お願い、答えて…」
     イサミにとっては唐突な告白だった。それでも、それはイサミにとって待ち望んでいた言葉だったのだ。
    「お、俺も……お前と同じ気持ちだ」
     イサミの返事に合わせたように辺りが暗くなる。見つめ合う二人の頭上でドン!と大きな音が鳴った。そしてハラハラと散ってゆく大きな火花と人々の歓声。皆、頭上の花火を見るのに夢中だった。
     引き寄せられるようにイサミが一歩スミスに近付く。スミスは少しだけ金色の頭を傾けてイサミの唇に触れるだけのキスをした。
     二人を祝福するように、夏の夜空に大輪の花が咲いた。


     帰り道。
    「そう言えばさぁ。この神社って恋愛成就のご利益もあるんだって!もう一度お参りしとく?」
     団扇でパタパタと扇ぎながらそう言ったヒビキの言葉に二人は顔を見合わせた。
    「俺たちは…いいかな?もうご利益あったし」
    「何それ!意味深ーーー!」
     カラコロと下駄を鳴らしながら帰る帰り道。皆の少し後を歩く二人はそっと小指を絡ませた。


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ☺🙏💘🎆
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    まみや

    DONE一日遅刻!クリスマスのお話。
    花屋パロ×かわいい住宅のスミイサ番外編。

    花屋バーススミイサがN野県H馬村の一軒家で同棲して付き合ってる話。ミユは地元の幼馴染で現保育士、ヒビキは地元スーパーの娘、ヒロは海外からの移住者でスノーボードインストラクター、サタケは消防団団長兼商店街会長です。って、サタチョ出せなかった(しょぼん)
    この話では既に付き合ってます。
    HOME SWEET HOME(クリスマス番外編)【スミス家、クリスマスを祝う】



     ジングルベールジングルベール鈴が鳴るぅ~。
     保育園で覚えたてのクリスマスソングを歌いながらルルは雪の積もった庭を冒険している。夏の間に遊んだプールや木登りの梯子はもう危ないからと撤去してしまったが、代わりに広くなった庭のあちこちには雪が降るたびに雪だるまを作った。
     今日は久しぶりの晴れの日。三日間降り続いたブリザードのような雪がようやっと止んで、木々の向こうには冬の雪国では滅多にお目にかかれない太陽すら顔を出していた。
     その太陽に温められて屋根の縁からぶら下がったつららからはポタポタと水が滴っている。そろそろ屋根に積もった雪が落ちてくるだろう。その下にルルが生き埋めにならないよう、イサミとスミスはルルの行動からはますます目が離せなくなった。
    9256

    related works

    recommended works