「浮奇、髪を…」
風呂から上がって雑にタオルドライした髪先からポタポタと雫を落としながらリビングへと向かったファルガーは、先に風呂を上がってソファに座っている浮奇に声を掛けようとして途中で言葉を止めた。熱心に手元を見つめる浮奇の前には、黒いネイルの瓶が置いてある。静かに近寄れば足音に気付いた浮奇が顔を上げた。
「ふーふーちゃん、上がったの?おかえり。」
「あぁ、ただいま。ネイルしてるのか?」
「ううん、これから。ちゃんと髪拭いてきた?」
母親のような口調で問いかける浮奇に、頷くことで返事をする。そのまま浮奇の隣へと腰掛ければ、動いたことで髪先から落ちた雫がソファに染みを作った。
「うそつき。」
「…拭いた、軽く。」
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