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    S24243114_0102

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    滅さんの黒い刀について思いをはせた結果生まれた怪文章。
    間接的な語り部は迅くんです。

    #仮面ライダーゼロワン
    maskedRiderZeroOne
    #滅

    ほころびがたなその刀は、少し刃こぼれしている。

     滅は何時も、一振りの刀を持ち歩いている。かつて腰の後ろのベルトに下がっていたそれは、今では羽織の下に隠す様にして持ち運ばれている。肌身離さず、いつ何時も。黒い柄、黒い鞘、黒い刀身。真っ黒で、所々に銀色の装飾が入ったその刀をいつから所持しているのか、迅は知らない。知ろうと思ったことはないし、何となく、聴いても滅は教えてくれなそうだと思っている。
     滅がこの刀を抜いたところを迅はあまり見たことがない。昔はよく使っていたような気もするけれど、破壊と再生を繰り返す中で、迅の古いデータは擦り切れて解らなくなってしまった。マギアたちに号令をかけるのに使っていたけれど、何かを斬るところは久しく見ていない。アタッシュアローを手に入れてからはそちらを使っていたから、刀を武器にしているところなんて数えるほどしか知らないのだ。デイブレイクタウンで侵入者を斬るのには使っていたと思う。
     滅の黒い刀が、実は少し刃こぼれしていることを迅は知っている。アタッシュアローを使うようになって、彼がこの刀を手入れすることがなくなった。滅の中でこの刀は武器としての役割を終えているのかもしれない。でも、そんな使わない刀を彼は何時も大切に持っているのだ。肌身離さず、常に彼の手にある。一度だけ、滅が休んでいる時に刀を触った事がある。見た目以上にずっしりと重たくて、冷たいけれどどこか暖かいような気がした。鞘からするりと抜けた刀身は美しい黒に輝いていて、でも少し欠けていた。
     滅がこの刀を振るう所を最後に見たのは、迅に刃を向けた時だった。アークに乗っ取られた体で、使わない刀を抜き、迅に斬りかかった。吹き飛ばされ、踏みつけられて最後を覚悟した迅が見たのは、己の顔の前で震えながら止められた黒い切っ先だった。だからわかる。あの刃の一番大きな傷は、迅に斬りかかった時にできたものだ。二番目に大きい傷はその直後に迅を抱えて飛電或人の前から姿を消したときについたものだ。他の傷はわからない。迅が覚えて居ない、ずっと昔についた傷。滅はそれを消そうとはしない。刀身を研いだり、新しい刀を見繕うこともしない。あの傷はずっと彼と共にあるのだ。
     滅が何故あの刀を手放さないのか、迅は知らない。知ろうと思ったこともないし、でも何となくわかる気がする。あれは何時も滅と共にあった。何時からかは解らない。でももしかしたら迅より長く、滅とともにあったかもしれない。あの刀は彼の思い出なのだと迅は思う。彼が語らない過去の記憶、迅がともに歩んだ日々の記憶、アークの為に戦い、アークに裏切られた時の記憶、大切な存在にその切っ先を向けた記憶。あの綻んだ刀は、滅と共にあり、これからもずっと、滅と共に歩むのだろう。
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