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    霧野薫

    @kaoru___0807

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    hbnho210

    SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様よりお題をお借りしました。
    お題:「初夏」「脱ぎたての服」5/1【SIDE ルーク】

     床に、布らしき塊が落ちていた。洗濯物を落としたか、それにしては…と近づいて手にとった。それは見覚えのある裂目だらけのシャツ。どうしてこんなところに、ルークは脱ぎ捨てられたアーロンのシャツを拾って、シャツの持ち主を探した。バスルームをのぞいたが姿はない。リビングの窓辺に、今度はこれも見覚えのある、長い長い…どこまでも長いアーロンのデニムのパンツ。手にとると足の生地の分だけ余計に重く、これをアーロンは穿いているのかとルークは唸りながら、フと、そのデニムがまだ暖かいことに気づき、まじまじとデニムを見た。アーロンの、脱ぎたての服。その肉体に何度も触れ、アーロンの熱はもうとっくに知っているけれど、服からつたわってくる体温と云うものはまた、何か、こう、…端的に言ってしまうと、欲情する。そう自覚して、ルークはティーンエイジャーみたいな反応をする己の身体と理性の間で右往左往しながら、とある事に気が付いた。アーロンの服だけがここにあると云うことは、アーロンは今。初夏の風にカーテンがゆれている。ルークはわずかに開いていた窓を勢いよく全開にして庭へ飛びだした。
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    hbnho210

    SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライさまよりお題「耳かき」「仕事中」お借りしました!あの世界の「耳のお掃除」事情がよくわからなかったので捏造です。
    お題:「耳かき」「仕事中」6/26「アーロン、おいで」
     ルークはソファに腰掛けて、まるで猫でも呼ぶように手招きをした。アーロンは呼ばれるままルークの隣に座ったが、フと、コイツ今ネコを呼ぶみたいに俺を呼んだな、ということに気がつき、牙を剥いてルークを睨むと、ずい、と目の前に木製の細い棒を差しだされた。棒の先には見覚えのある造形の飾りがついている。
    「これ、何だと思う? 何と、ニンジャジャンの”耳かき”なんだ!」
     聞きなれない言葉とはじめてみる物体を前に、アーロンは眉間に皺をよせてその”耳かき”とやらをまじまじと見た。
    「耳の掃除をする道具なんだけど、僕たちは使ったことのない道具だよな。ニンジャジャン公式グッズショップの新作なんだ。先端にちょっとカーブがついて小さなスプーンみたいになっているだろう、この先端を耳の中へ入れて、掃除するんだ。そしてなんといってもこの持ち手の上にのっかっているニンジャジャンのフィギュアが実に見事なんだよ! こんなに小さいのに、ほら、みてくれ、こんな細部まで正確に……、待ってアーロン、どこへ行くんだ」
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    hbnho210

    SPUR MEルクアロ版ワンドロワンライ様より、お題「歩幅」「メガネ」お借りしました!ルクアロです。老眼鏡が必要になりはじめた頃のルクアロです。ルクアロはおじいちゃんになっても骨になってもずっとずっと一緒にいると思っています。
    お題:「歩幅」「メガネ」3/19「お前、メガネなんか掛けてたか」
     洗いたての真っ白なシーツや青と白のストライプのシャツ、少しよれた赤いシャツやバスタオルがはためく午后の庭先でページを繰っていたルークは顔を上げて、眼鏡のフレームの端を指で摘まんで持ち上げた。
    「読書をするときだけだよ」
    「なるほど、老眼鏡ってやつか」
     アーロンは微笑って、ルークの傍らに座ると愉快そうに顔をのぞき込む。午后の陽光を反射するレンズのむこうでほそくなった瞳は、硝子の海のなかを泳ぐ翡翠色の魚のよう。アーロンはその魚を掴まえようと、凝、とみつめた。
    「アーロン、君には必要なさそうだな」
    「昔よりはだいぶ視力も落ちた」
     数年前に二人で作った木の椅子は二人で座るのに丁度良いサイズで、晴れた日の休日はそこで遅い昼食をとったり午睡をしたり、今日も初夏の訪れを前に青々と茂る樹の下でルークは読書をしていた。木洩れ陽にゆれる白いページに陰が射す。隣で、アーロンは何やら手のなかで小さな金属の欠片を弄んでいる。金属は擦合う度に小さい虫のような声で鳴いていたが、アーロンはまるで興味がなさそうだ。
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