Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    arakan_pourrir

    @arakan_pourrir

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 6

    arakan_pourrir

    ☆quiet follow

    9/24のペーパーにしようと思ってたリョ+沢

     真っ暗な空をバックにチカチカとライトが点滅している。滑走路を示す光の道筋を窓越しに見ていると、坊主頭が何か言いたそうにこちらを見つめているのがわかった。
     振り返って実像の方に顔を向けると、爛々と輝かせた瞳と視線が交わる。室内灯が反射して眩しい。楽しみだな! とその目が言っていた。
    「……深津サン、迎えに来てくれんの?」
    「飛行機の時間は伝えてあるからちゃんと来てくれるよ!」
     沢北は自信満々に答えるものの、深津を愛し、愛されていると豪語している沢北のフィルターを通してさえ深津が空港で出迎えてくれるビジョンを思い描くことは難しい。けれど、沢北の脳は空港に立つ深津の姿を鮮明に想像できるようで、でれでれと相好を崩す。
    「深津さん、どんなカッコして来るかな〜。日本だって寒いよな? あの人結構寒がりだからさ。え、どうしようリョータ、深津さんがふわふわもこもこのニットとか着て来たら……!」
     別にどうもしない。ふわふわでもこもこのニットを着ていようとも、きっとバスケットをするに足る筋肉がその下にしっかりと存在しているのは変わらないはずだ。
    「かわいすぎる!」
     だというのに、沢北はシートに座ったまま頭を抱えている。宮城はため息をついて、窓に視線を戻した。来るか来ないかわからない人間のことよりも、迎えに行くからな、と約束してくれた恋人のことを考えたい。
     三井サン、どんなカッコで来るかなあ。デートとなれば、それなりに気張ってくる三井のことだ。ジャケットにコートくらい着てくるかもしれない。何色のコートかな、一昨年一緒に選んだマフラーはしてきてくれるだろうか。去年のホリデーシーズンは会えなかったので、冬の格好で会えるのは二年ぶりだ。宮城も表に出さないだけで、沢北と同じくらいには浮かれていた。
     窓枠に肘をついて、緩んだ口もとを隠す。温泉ってことは、浴衣も着るんだよな。高校時代に合宿所で見た浴衣姿を思い出す。胸もとも足もともはだけていて、当時はだらしねえなあと呆れていたが、明日には自分だけが見ることができるのだと思うと、にやけ笑いが止まらない。それを隠すように、隣の男を睨みつける。
    「お前声でかいんだから静かにな」
     わかってるって、とくふくふ笑う沢北がはたして本当にわかっているのかどうかはひとまず置いておく。できればスチュワーデスに注意される前に寝てくれればいい。なにしろ沢北が注意されると、何故か一緒にいるこちらまで巻き込まれて恥ずかしい思いをさせられるのだ。だというのに当の本人がけろっとしているのがまた腹立たしい。
     ガタン、と機体が大きく揺れる。また窓の外に目を向けると、ゆっくりと車窓の景色が動いているのがライトの動きでわかる。大事な人のいる、日本に帰るのだと実感できるこの瞬間が一番わくわくする。
    「楽しみだな、リョータ!」
     ちょうどいいタイミングで沢北が声をかけてきたので、そーねとうなずく。宮城は腕を組んで下を向いた。日本まではおよそ半日かかるのだ、ずっと起きているわけにもいかない。「リョータ寝ちゃうの?」と話しかけてくる男は無視して、まぶたを閉じた。
     まさか機内で出される朝食の時間までずっと沢北が起きているとは、それこそ夢にも思わなかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator