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    kumaneko013

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    kumaneko013

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    キスの日ネタのアルハン♂ですが、キスの日とは…?となってしまった感があります。

     読書を一時中断し、眼鏡を外す。
     息を吐きつつ眉間の辺りを軽く揉み解していると、コンコン、と控えめなノックの音が耳に届いた。
     訪ねてきたのは……恐らくあいつだろうな。
     確信めいた予感と共にアルローは読みかけの本を閉じて、眼鏡と一緒にテーブルの上に置き、ソファーから立ち上がる。そのまま部屋の扉へ向かい、開けてみれば案の定。
    「アルローさん、こんばんは!」
     元気に挨拶してくる、幼い顔立ちをした赤毛の少年の姿。
     もはやエルガドで知らぬ者はいない、カムラの里の英雄こと『猛き炎』。そして今のアルローにとっては──可愛くて堪らない恋人でもある。確か今日も朝方から何処かに出かけてたな、と思い出し、
    「おう、お疲れさん」
     小さく笑みを浮かべながら、労いの言葉をかけてやる。
     するとアラタの方も嬉しそうに笑って、アルローに抱き付くのだった。

    「メシは? 済ませてきたのか?」
    「はい」
     なら茶でも淹れてやるか。
     そう思い、キッチンへ足を向けるアルロー。そんな彼に追随し、
    「アルローさん、アルローさんっ」
    「ん?」
     横から顔を覗き込んでくるアラタ。まるで人懐こい子犬に纏わり付かれているかのような感覚に陥り、自然とアルローの口元も緩んでしまう。これが教え子のジェイだったりした場合、でかい図体でウロチョロするなと頭のひとつでも叩いていそうだが。
    「あの、今日って何の日か知ってます?」
    「今日……?」
     唐突な質問だった。
     つい日付を確認してみたものの、特にこれといった答えは浮かんでこないし、分からない。
     雑貨屋のセール日か……? などと考え込むアルローだったが、
    「アルローさん、ちょっと屈んでください」
    「こうか?」
     言われた通り、少し膝を曲げて身を屈める。すると──
     背伸びをしてアルローの首筋に両腕を回したアラタが、ちゅっと唇を重ね合わせてきた。
    「今日はですね、なんと! キスの日らしいんです!」
     呆気に取られた表情のアルローから身を離し、何だか得意げな様子で、えへんと胸を反らすアラタ。しかしアルローは次第に渋面になっていき、
    「おまえさん、どこでそんな事覚えてきた?」
    「えっと……昼間、ジェイさんとガトリンさんが話してて……」
    「あいつら、また仕事中にお喋りしてやがったのか」
     アルローの眉間にシワが寄り、声が低くなった事でまずいと思ったのか。アラタは少し慌てた様子で口を開き、
    「あ、で、でも、ルーチカさんとスーさんに、叱られて……ましたから……」
     顔色を窺うように、上目遣いでアルローを見つめる。その表情からは『これ以上二人を怒らないで』という心の声が、ありありと伝わってきた。惚れた弱みか、アラタにこういう顔をされるとどうにも絆されてしまう。
     わかったわかった、とアラタの頭を軽く叩いて──ふと、疑問が湧いた。
    「まさかとは思うが……他の奴にもキスしたりしてねぇだろうな?」
    「し、してませんっ! アルローさんだけです!」
     首を左右にブンブン振って答えるアラタに、ホッとする。
     良かった。流石に誰彼構わず……なんて事はなかったか、とアルローが安堵したのも束の間だった。
    「他の人から、ほっぺにキスはされましたけど……」
    「……あ?」
    「ほっぺにするキスは、親愛の証だって。ジェイさんとガトリンさん、クランさんに……ラパーチェさん。それからバハリさんとチッチェ姫からも。あ、ロンディーネさんだけは手の甲に」
     指折り数えながら、該当人物を挙げていくアラタと。
     聞き捨てならない発言に加え、まさかのチッチェ姫参戦に、頭を抱えたくなるアルロー。
     だがエルガドで暮らす人間からしてみれば、あの『深淵の悪魔』を倒したアラタはおとぎ話に出てくる勇者みたいなものだ。危機を救ってくれた勇者に対して、お姫様からのキス。そう考えれば一応セーフかも知れない。しかしバハリ辺りは『愛してるよ~!』などというセリフを口にしながら、唇を尖らせアラタの頬にキスしている姿が容易に浮かんできてしまう。
     もちろん彼のそれは本気などではなく、日頃の感謝の表れだというのはアルローも理解しているし、自分の恋人が周りの人間からも愛されているのは、決して悪い事でもない。けれど。
    「アルローさん……?」
     アラタに名を呼ばれ、我に返る。
     目の前で小首を傾げている少年の頬を軽く撫でながら、なんでもねぇよ、と誤魔化したが──無防備すぎるその姿に不安を覚えたり、少々苛立ちを感じるのも事実だった。
     ……年甲斐もなく、独占欲だのヤキモチかよ。
     そんな自分に呆れながらもアルローは再度身を屈め、今度は自分からアラタに唇を重ねる。
     アルローからの不意打ちに、目をぱちぱち瞬かせていたアラタも、繰り返されるキスが先程の『仕返し』だと思ったのか。ふふ、とどこか嬉しそうに笑いながら、アルローからのキスを大人しく受け入れていた。
     最初こそ軽く触れるだけの、くすぐったいようなキスだったが、やがてアルローはアラタの唇の隙間に舌を差し込み、彼のそれを絡め取る。同時にアラタの後ろ頭と背中に手を回し、強く抱き締めた。
     キスの合間に、互いの口から漏れる熱い吐息。
     気が付けばアラタの方からもアルローを求めて、彼に縋り付くように抱き付き、顔を寄せていた。そんなアラタの姿にアルローは目を細めつつも、自分の太腿をアラタの脚の間に割り込ませ、彼の股間に当てると、そのままグッと力を込める。
    「……んぅ!?」
     流石にこれにはアラタも目を剥いて、背を仰け反らせた。
     割り込ませた太腿をグイグイ押し上げてやれば、その度にアラタの身体が小さく跳ねる。
    「んっ……アルロー、さ、ぁん……」
     身を捩り、くぐもった声を漏らすアラタの瞳が、表情が、次第に蕩け始めてくる。
     アルローに揺すり上げられて弛緩していく身体とは裏腹に、股間はその存在を主張し始めるが──
    「キスの日だからな。ここまでだ」
    「あ……」
     意地悪くニヤリと笑って、身を離すアルロー。
     中途半端に刺激を受けたアラタは、どこか残念そうな、物足りなさそうな様子でその場に佇んでいた。
    「なんだ? してほしい事があるならハッキリ言いな」
     自分を見上げているアラタの顔を、アルローの方からもじっと見つめる。
     彼が何を望んでいるのか、それが分からないアルローではない。
     だが今は、本人の口から言わせたい。強請らせたい。少年の心が自分のものだと確かめたい。そんな思いに駆られていて。
     ほんっと大人気ねぇな、俺も……
     自己嫌悪に陥っていると、目の前のアラタに上着の裾をぎゅっと掴まれた。すっかり顔を上気させた彼は、恐る恐るといった風に口を開き──
    「……いい子だ。よく言えたな」
     アラタの発言に満足し、優しく髪を撫でてやる。
     今夜はたっぷり可愛がってやるから、許してくれよ。
     少々虐めてしまった事への謝罪を、胸中でこっそり呟くと。
     よくできました、と言わんばかりに、アラタの額に口付けを落とした。


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