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    kairohiyoriari

    @kairohiyoriari

    アレヘンのSSとかボブハン140字の保管庫です

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    kairohiyoriari

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    アレヘン/全年齢
    パリの帰りの飛行機のアレックス。
    お題/タイトルは「シンプル・100のお題」から→ http://aria.saiin.net/~tenkaisei/questions/t100_01.html
    元ツイはこちら→https://x.com/kairohiyoriari/status/1717893087937323318?s=46&t=GuoUpULU_h9555tEfJaXiA

    #RWRB
    #アレヘン

    君の名前(2023.10.27) パリの灯が遠ざかっていく。
    「プリンス・ヘンリー……ヘンリー・ジョージ・エドワード・ジェームズ・ハノーヴァー=スチュワート=フォックス……か」
     薄暗い機内で、僕は知ったばかりのその名を小さく呟いた。意地を張っていた頃の自分なら、格式張って長ったらしい名前だ、と顔を顰めたことだろう。なのに、今では胸の奥がじんわりと甘く疼くのがなんだか不思議な気分だ。思えば二人でケーキまみれになったのが遠い昔のようだった。あの時の僕は想像もしていなかっただろう。ヘンリーとこんな夜を過ごすことも、一人でアメリカに帰るのがこんなに淋しいということも。
     ふう、と息を吐いて窓の外を見つめる。空がうっすらと白み始めている。まだ彼はパリの空の下にいるのだろうか。それとも、もうすっかり身支度を整えて「プリンス・チャーミング」の顔をして英国に戻ってしまったか。
     身体を包む心地よい疲労感にまかせて瞼を閉じると、そこに浮かぶのは思い出というには生々しいほどに鮮やかな数時間前のヘンリーの姿だ。穢れというものを一切知らないような美しい身体と掌に吸いつくような極上の触り心地の肌。潤んだ榛色の瞳はもちろん、感じ入って寄せられた眉間の皺までもが美しく、僕はベッドサイドのランプが作るヘンリーの睫毛の影にすら魅せられていた。何度も何度もキスを交わした唇は熟れたベリーのように赤く艷やかで、そこから零れる熱い吐息ごと食べてしまいたい、とまた口づけた。
     情けないところを見せた僕を「委ねればいい」と抱きしめてくれた彼は、確かにある部分ではその経験を感じさせたけれど、その一方で何もかもが初めてのようでもあった。深く息を吐きながら僕を受け入れてくれたヘンリーが、事の最中に喘ぎながら僕の名前を呼んだ、それだけで僕の頭は何も考えられなくなって、ただ目の前の彼に溺れるしかできなかった。
    「参ったな……」
     こんな恋はティーンエイジャーで卒業したと思っていたのに、いい歳をしてこのザマだ。別れの時間の最後の最後まで離れたくなかったし、離れた途端に会いたさが募ってどうしようもない。早く会いたい、と口に出してしまったら余計に淋しくなりそうで、その代わりに愛しい人の名前を舌の上で転がした。
    「プリンス・ヘンリー・ジョージ・エドワード・ジェームズ・ハノーヴァー=スチュワート=フォックス……ふふ、やっぱり口が疲れちゃうな」
     あのときヘンリーが口にしたジョークを思い出して小さく笑った僕は、座席に深くもたれて訪れる微睡みに身を委ねた。

    Fin.
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    DONEマ右ワンライ/ルスマヴェ/お題「昼寝」
    同棲ルマツイートの一つを薄く伸ばして書いたのですが、既に投稿として表に出したネタなのでルール違反だったら消します。すみません。
    読んでて集中できない仕上がりになりました…これこそ寝落ちしそうな出来💤
    Sound of Wind, Chips, and Your Dream 昼下がり。なんとなく口寂しい時間。マーヴはガレージに篭っている。つまり今すぐお菓子を取り行けば、マーヴにバレずに小腹を満たせるということ。
    今日の天気は快晴で、気温も風も心地良い。家のところどころで窓を開け、部屋の中まで風の匂いを感じる。こういう日はのんびりと過ごしたい。
    「確かあの棚にアレがあったはず……」
    収納場所を一ヶ所ずつ思い出しながらキッチンを目指した。そうだ、冷えた炭酸水をお供にしよう。シュガーフリーのドリンクなら大丈夫。決意してキッチンに入ると、思わぬ先客がいた。
    「あれ、マーヴ? ここにいたん……あ、」
    見るとマーヴはキッチンカウンターに突っ伏して眠っている。思わず言葉が途切れ、足もぴたりと止まった。ガレージにいると思ってたのに。どうやらマーヴを起こさないようにしておやつを用意するしかないらしい。慣れてはいるが、やはり緊張はする。目当ての棚はマーヴの真後ろにあり、ぐるりとカウンターを回り込まなければならない。そっとマーヴに近づき今一度様子を確認すると、彼は小さな寝息を立てている。
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