本気 悠仁side補助監督の運転で遠征任務に向かう車の中。
放課後の自販機で五条先輩たちに会ったことを思い出していた。
箱根の任務の後から、五条先輩に会うのが気不味い。
急に「カラダ貸せ」と言われ、男の俺の脚の間に、先輩の竿が挟まれて…まるでエッチしてるみたいに動いていた…
正直、あの時驚いたけど、何故か嫌じゃなかった。寧ろ、なんか嬉しかった。
でも、先輩の言ったあの一言。
『胸はやっぱり女だな』
あの瞬間に、ハッと我に返った。
俺だけ、なんで浮かれてるんだって。
先輩は、ただ欲を処理する為に、俺の脚使っただけなんだって。
それを実感した。
一瞬でも、浮かれた自分が恥ずかしくて、先輩の顔が見れなかった。
そのまま風呂出て、寝室へ向かうと、2つ並んで敷かれている布団。
片方の布団を壁まで持っていって、寝たんだったな。
きっと"疲れマラ"ってやつで、面白半分で男とそういうことしてみただけなんだろうな。
寝て起きればきっと笑い話になる。
そう思ったのに、朝食を食べてる時に先輩が
『俺のこと、好きだろ』
とか言ってくるし。
寝ぼけてんのかと思ったら、マジっぽかったから、さすがに焦ったな。
任務から帰ってきてから、会う度に
『悠仁のこと好きなんだけど』とか
『好きだからさ、付き合おうぜ』とか
告白みたいなこと言ってくるし。
五条先輩はまだ俺を揶揄ってんのかな。
なんかの、ゲームのつもりなのか?愛してるゲームみたいな。
きっと、いつもだったら「俺も好き!」とか言って、先輩の悪ふざけにも簡単に返せていたのに。
でも、何でか言えなかった。そう返しちゃダメな気がしたし、簡単に言えなかった。
段々と先輩を見るだけで、意識して、耳が熱くなってしまうようになった。
だから、会わないようにしていたのに。
放課後に会っちゃうんだもんな。
あからさまに避けてるのバレて、自販機に追い詰められたな。
あの時、心臓が爆発するかってくらい鼓動が早くて…久しぶりの先輩に緊張してたな。
先輩に『本気』と言われて嬉しかった。
でも、先輩はおっぱいが好きなんだよな。女の人が好きなんだよな。今までに沢山いたみたいだし。
やっぱり俺のことは、魔がさしたか、遊びの一環か何かなんだ。
そう思ったら辛くなって、逃げてしまった。
感じ…悪かったよな。
でも、たまたま遠征任務が入ってたから、すぐに会えるような状況じゃなくて良かった。
先輩も、この間に気分が変わって、この告白遊びも止めるだろう。
高速を乗った車の揺れは一定で、だんだんと瞼が重くなる。
閉じた瞼の裏に、初めて会った時の先輩の顔が浮かんだ。
真っ黒な丸いサングラスをしていて、頭ガシガシ撫でられた。
目を開けて最初に目に入ったものが、それだったのは衝撃的だった。
でも、「よろしくな」と言われた言葉と、その大きな手に安心したんだ。