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    三点リーダ

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    三点リーダ

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    マリオンと第13期の『ヒーロー』たちが対話をする雰囲気小話。

    06 レオナルド・ライト・Jr マリオンがドアを開けると、そこには先客がいた。
     ぴしりと姿勢正しく椅子に腰掛けていたその人物――レオナルド・ライト・Jrは、ドアの音を聞きつけるやいなや勢いよく振り返り、大きな音を立てて椅子から立ち上がる。

     
    「マ、ママリオン!!」
    「……ボクはそんな名前じゃない」


     声が裏返ったような奇声を発するジュニアに、マリオンは意味が分からないとばかりに呆れた溜め息を吐いた。

     
    「あっ、わ、悪い! 緊張して……」
    「というか、いつからそこにいたんだ。まだ集合時間より幾分か早いはずだが」
    「そ、それは……マ、マリオンはどうなんだ!?」


     もごもごと何かを言い淀むようにする彼に怪訝な瞳と「質問に質問で返すな」という言葉を向けたマリオンは、それでも彼の問いに言葉を返す。

     
    「用事が思ったより早く終わって、何をするにも中途半端な時間が残ったからだが」
    「お、おれもそう! そうなんだよ」
    「そうか」


     ジュニアの言葉を信じたのか、信じていないのか。さして興味もないようで簡単に会話を打ち切ると、マリオンとジュニアの間に沈黙が流れた。それを気にする様子もないマリオンだったが、ジュニアはそわそわと身体を動かして忙しない。口を何度かぱくぱくと動かすと、やがて何かを決心するようにぐっと身体に力を入れて、震える口を開いた。

     
    「マ、マリオンはさ。アカデミーではどんな感じだったんだ?」
    「アカデミー? どうしてそんなことを訊く」


     話の脈絡が掴めないとばかりに、マリオンはきょとんとした表情でジュニアを見る。純粋な疑問なのだろう。その瞳に苛立ちの色は無い。
     
     
    「いや、おれたちって飛び級してるっていう共通点があるからさ。そこから会話を広げていこうかと思って……」


     その言葉にジュニアの意図を察したらしいマリオンが「そういうことか」と言葉を漏らした。

     
    「別に……今と何も変わらないな」
    「変なやっかみとか受けなかったのか?」


     ジュニアの問いに、マリオンは澄ました表情で言葉を返す。

     
    「やっかみ? そんなの『ヒーロー』になったって変わらず続いているが、そんなのボクには関係ない」
    「か、かっけぇ……」
    「そう訊いてくるということは、オマエにもあったみたいだな」
    「うっ……」


     彼の答えに目を輝かせたジュニアだったが、その後に続いた彼の指摘によってその表情を曇らせた。

     
    「まぁ、オマエの場合はレオナルド・ライトの権威がついて回ってくるようなものだからな」
    「やっぱり、マリオンも思うか? おれが、親父の七光りだとか……」


     おずおずといった調子でジュニアがマリオンの顔色を窺う。その声音には覇気がなく、どこか不安そうな色を纏っていて。
     しかしその言葉を聞いたマリオンは「心外だ」といわんばかりにその表情を険しくすると、鋭く言葉を放った。
     
     
    「は? ボクをそんな低俗な連中と一緒にするな」
    「あ……」
    「親の七光り程度で『ヒーロー』になんてなれるわけがないだろう。アカデミーの飛び級だってそうだ。そういう甘い考えをしているから、いつの間にかボクたちに追い越されているんだ」


     苛立ちを抑えきれないのか、マリオンは人差し指でテーブルをこつこつと叩く。外されていた視線がジュニアに向けられたかと思えば、彼はジュニアに質問を返した。

     
    「オマエはどう思っているんだ」
    「えっ?」
    「今この場に立っているのは自分の実力ではないと、そう思っているのかと訊いているんだ」


     マリオンの涼やかな瞳がジュニアを貫く。真意を問われたその言葉は重く、普通の人であれば言葉を紡ぐことさえ出来なくなってしまっていただろう。
     しかしジュニアは両手でテーブルを叩いて勢いよく立ち上がると、前のめり気味で叫んだ。

     
    「――そんなことねぇ!!」


     マリオンの瞳を真っ直ぐに見据えながら、ジュニアは言葉を続ける。
     
     
    「おれは、おれの力でここまで来た。親がどうこうとかそんなの関係ねぇ。いつか、親父の名前なんて出てこないくらい、大きくなってやるんだ」
    「伝説の『ヒーロー』を超える……か」
    「お、おれは本気だぞ」


     冷めた視線が向けられ一瞬息が詰まりながらも、目を逸らすことなくそう言いのけるジュニア。その瞳に込められた感情に気づいたマリオンは、軽く息を吐いた。

     
    「何も悪いとは言っていないだろ」
    「え……」
    「何も考えずただ口にしているだけだったら馬鹿だと一蹴しているところだが……」


     想定していた言葉とは別の言葉が返ってきたのだろう。驚きで見開いた彼のオッドアイをマリオンは見つめながら口を開く。


    「その言葉を発する重みも、達成するためにどれほどの努力が必要なのかも、オマエは全部わかって口にしている――そうだろう?」
    「……」
    「そういう奴は嫌いじゃない。向上心を持たないものに成長はないからな」


     自分の心を見透かすようなその視線に、ジュニアは言葉を返すことができない。

     
    「まぁ……随分とと大きく出たな、とは思ったが」


     そう言うと、マリオンはふっと顔を綻ばす。
     その瞬間。ジュニアは金縛りが溶けたかのように身体を震わせると、歓喜で頬を上気させながら震える手でマリオンを示した。
     
     
    「マ、マリッ……笑っ……!!!」
    「???」
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