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    三点リーダ

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    三点リーダ

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    マリオンと第13期の『ヒーロー』たちが対話をする雰囲気小話。

    12 ブラッド・ビームス「いつもは『忙しい』などと嘯いているのに、ここに来る時間はあるんだな」


     ドアを開けた先に鎮座していた人物に、マリオンは冷徹な瞳を向ける。その視線を受けた彼――ブラッド・ビームスは、向けられた皮肉にきっぱりと答えた。

     
    「何を勘違いしているのか分からないが、俺はこの企画の賛同者だ。余程の理由がなければ参加する」

     
     マリオンが到着するまで仕事をしていたのだろう。操作していた端末の画面を消すとテーブルの上に伏せた状態で置いた。


    「もうこの企画が開始してから12回目の対談となるが、どうだ」
    「無駄な時間を過ごしている、と思っている」


     拗ねたように口を尖らせるマリオンに、ブラッドはほんの少し眉を寄せる。

     
    「この企画の趣旨は理解しているか」
    「互いの理解を深める、だろ」


     うんざりした表情でマリオンは企画の趣旨を口にした。その答えは合っているのだろう。ブラッドはその言葉にこくりと頷く。

     
    「【イクリプス】や【サブスタンス】との交戦においては、セクターの垣根など存在しない。偶然その場に居合わせた『ヒーロー』たちによる共闘は当然予測できる事態だ」
    「それとこのふざけた企画がどう関係あるんだ」
    「分からないのか。……いや、俺の口から聞きたいといったところか」


     ブラッドはマリオンの態度からその心の声を読み取った。マリオンはぴくりと反応を示したもののその正誤を告げることなく、ただじっとブラッドに強い眼差しを向け続けている。

     
    「相手がどのような思考をもって行動する人物であるかを理解することは、今後連携を行っていく上で必須になっていく。だから、この企画に賛同した」
    「理解したくないヤツもいた」
    「『理解したくない』という感想を抱くのも、相手への理解を深めた証だ」
    「……」
    「相互理解の積み重ねは、今後の戦局を左右するだろう。だからこそ、俺はここにいる」


     少しでも相手に伝わるように、ブラッドはマリオンに言い聞かせる。どんな視線を向けられようとも、彼が目を逸らすことはしなかった。しかしマリオンはというと納得いかないと言わんばかりの表情を浮かべたままで。


    「――例えばだが、お前は俺のことをどう思っている」


     唐突な問いを投げかけられて、マリオンは僅かに驚いたように目を丸くする。だがそれも束の間の出来事で、顔を顰めると無愛想に答えを口にする。
     
     
    「いけ好かない。会話が絶望的に面白くない、分かったように口をきくのが気に食わない」
    「予想の範疇、といったところだな」


     自信に向けられた罵詈雑言に対し眉一つ動かすことないブラッドに、マリオンが不快感を露わにした。それすらも予想できていると言わんばかりに、彼は言葉を続ける。

     
    「俺とお前はメンターとメンティー、また『ヒーロー』として過ごした日々によって、こうしてお互いの思考を理解することが出来ている」
    「っ誰が――」
    「『理解しているというんだ。気持ちワルイことを言うんじゃない』か?」
    「っ……!!」


     反応したマリオンに被せるように、ブラッドが言葉を放った。図星だったのだろう。マリオンは絶句し、見開かれた瞳で彼を見つめる。ブラッドはそんなマリオンを一瞥した後「話を進めるぞ」とどこまでも涼しい顔をした。

     
    「こうしてお互いの思考回路を許容してはいないものの、理解はしている。だからこそ、俺たちは容易に連携を取ることが出来ているんだ。――因みに言っておくが、これは決して俺の個人的な考えではなく【HELIOS】が出した客観的な事実だ」


     マリオンが反論することを予想していたのだろう。彼が口を開ける瞬間すら与えることなくブラッドが補足を入れる。ぐっと言葉を詰まらせながらも、敵意を隠すことなく鋭い視線を向けつつけるマリオンに、ブラッドは嘆息を漏らした。


    「これだと、お前の反発心が勝って納得出来ないか。……なら、対象を変えよう。お前は今のノースで連携を取り始めたようだが、その指示はどうやって出している」
    「それは……」


     ブラッドの問いにマリオンが口ごもる。恐らくブラッドの言いたいことが分かったのだろう。そしてそれを自らの口で肯定するような言葉を吐きたくない、という彼の葛藤がありありと表情に浮かんでいた。

     
    「『ルーキーたちはどのような行動を取ろうとするか』だろう」
    「……」
    「そしてその予測は、相手の理解の積み重ねから成り立っている。違うか?」


     マリオンは何も答えない。だが、今まで逸らされることがなかった視線がふいと外された。不貞腐れたようにそっぽを向く彼に、ブラッドは言葉を続けた。
     
     
    「それでも受け入れたくないというのなら、これは仕事の一環だと捉えろ。仕事には手を抜かないところがお前の長所だからな」
    「なっ……!」


     無反応を貫いていたマリオンが、ブラッドの言葉に反応を示す。驚愕で目を白黒させている彼を不思議に思ったのか、ブラッドの厳しい表情がほんの少し和らいだ。しかしそこまで気になることでは無かったのだろう。ブラッドは仕切り直しだと言わんばかりに姿勢を正すと、テーブルをノックするようにこつこつと叩いた。
     
     
    「さて、これで趣旨は理解しただろう。これからが相互理解の時間だ。まずは席に着け」
    「~っ!! オマエの思考なんて一生理解できるか!!」
     
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