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    三点リーダ

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    三点リーダ

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    マリオンと第13期の『ヒーロー』たちが対話をする雰囲気小話。

    15 如月レン マリオンが小会議室に足を踏み入れると、室内には既に人影があった。

     
    「最後はオマエか」


     先にいた人物――如月レンはマリオンの声にぴくりと反応を示すと、視線を持ち上げて彼を見上げた。


    「マリオン……」


     呟くようなその声に気づいたのか気づいていないのか。マリオンは椅子に座るやいなや腕を組み、じっとレンを見つめて言い放つ。

     
    「ガストにも言ったが、この場を使って話すことなんて無い。オマエは何か話したいことはあるか」
    「……特にない」
    「それだと話が終わってしまうだろう」


     マリオンの問いに、レンは暫く考えた後に首を振った。しかし、マリオンはその答えが気に入らなかったのだろう。その答えは許さないとばかりに、不機嫌そうに顔を顰めた。

     
    「……なら、トレーニングに対するアドバイスをしてくれ」
    「それは、今ここでする話ではないな」
    「……」


     マリオンの指摘を受け、考え抜いたレンが提案を口にする。だがそれもマリオンに一刀両断されてしまい、レンは今度こそ黙り込んでしまった。

     
    「気持ちは分からないでもないが。焦ったところで成果は得られない。これは実証済みだ。素直に聞いておけ」


     マリオンがそう言うと、レンは「分かった」と頷く。その様子を見たマリオンが何か思案するように視線を向けているのに気がついたレンは「どうしたんだ」と疑問を口にした。
     
     
    「オマエはアキラと従兄弟だったか」
    「……それが何だ」


     マリオンの口から出た名前に、今度はレンが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。そんな彼の反応に見向きもせず、マリオンは言葉を続けた。

     
    「アイツは何から何まで噛みついているヤツだったが、ソイツの血縁にしては随分と表に出る性格が違うものだと思った。ただそれだけだ」


     そう口にするマリオンの表情からは、揶揄いの意図は読み取れない。純粋に疑問に思っているらしい彼の様子に、レンは比較的長めの息を吐くと言葉を返した。

     
    「血縁といっても従兄弟は遠い方だ。それに、サウスとウエストには兄弟がいるだろ。あいつらはもっと近い関係性だが、全然違う」
    「……それもそうだな」


     メンターリーダーとルーキーの兄弟を思い浮かべたのか、マリオンは不快そうに表情を歪める。それで納得したらしいマリオンだったものの、新たな疑問が彼の口をついて出た。

      
    「ならオマエは、どうしてボクの言葉を素直に受け入れる」
    「どうしてって……」


     問われている意図が分からず戸惑いを口にするレンに、マリオンは言葉を重ねる。

     
    「オマエはアイツを前にすると対抗心が芽生えるように見えた。だが、それをボクにぶつける様子は微塵もない。それが何となく気になった」
    「別に俺は対抗心なんて――」
    「そういう言い訳はいらない。ボクがそう言っているんだから、そうなんだ」
    「……」


     マリオンの指摘に異議を申し立てようとしたレンだったが、彼にぴしゃりと言い放たれてしまったことによって、口を閉ざした。

     
    「それで、どうなんだ」


     暫く黙っていると、マリオンが急かしてくる。その表情は至って涼しいものだったが、いつどこで感情が変化するのか分からない彼の特性を知っているレンは、急かされるがまま口を開いた。

     
    「……俺は」


     ふ、とレンはマリオンから視線を逸らす。

     
    「俺は、弱い。だから、強いマリオンの話を聞く。ただそれだけの話だ」


     淡々と話されたその答えに、マリオンはつまらなそうに息を漏らした。

     
    「ふぅん……。特に面白くもない答えだな」
    「こんな質問の答えに面白いも面白くないも無いだろ……」


     マリオンの反応に気分を害したらしいレンがぼそりと呟く。

     
    「別にそれが悪いことだとは言っていない。……ただ、1つ。指摘するのだとすれば」


     そこで途切れた言葉に、不思議に思ったレンが視線を上げる。すると、マリオンはレンの瞳を射貫くように見つめると、言葉を放った。

     
    「このボクが直々に指導しているにも関わらず『自分は弱い』だなんて口にするな」
    「……!」


     力強い光がマリオンの瞳にともる。彼の瞳に浮かんでいるのは自分に対する絶対的な自信だった。レンはその菫色に引き込まれるように、ただ呆然と彼の言葉を待った。

     
    「ボクが強いのは当然だ。だが、そのために態々自分を卑下する必要はない。オマエは日々強くなっている。それがまだ足りてないというだけだ」


     マリオンの口から発される褒め言葉に、レンは唖然としてマリオンを凝視する。その視線には気づいていないらしい。マリオンはやれやれといった調子で大げさに溜め息を吐いた。

     
    「まったく……。謙虚さは美徳だとのたまうヤツもいるが、ボクには理解できない」
    「まぁ、そうだろうな……」


     マリオンの言葉に、レンは同意を示す。彼からきっと鋭い視線を向けられたレンは失言だったかと口を噤んだが、そうではないらしい。

     
    「ほら」
    「……?」


     何かを促されるような言葉に、レンは僅かに首を傾げる。意味が伝わっていないということに気がついたマリオンは、言葉を換えて再度口にした。

     
    「もう一度言い直せ」


     その言葉で、漸く彼の意図を理解したらしい。レンはどこか気恥ずかしそうにもごもごと口を動かして、やがて決心したようにマリオンの瞳を見つめ返した。

     
    「……俺は、もっと強くなりたい。だから、指導を頼む」


     その言葉に、マリオンは口端を吊り上げて満足そうに頷く。
     
     
    「――あぁ。任せろ」
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