雪見抄(二月のカノン) 冷たい冷たい二月の夜空には、零れ落ちんばかりの星がチカチカと瞬いていました。
その中を真っ白い息を吐きながら、次元は急いで帰ります。二月に入ってからというもの、この辺りは雪続きで、昨晩も遅くまで降り続いていました。慎重に進まないと道端に残るたくさんの雪に足を取られるので、急ぎ足ながらも慎重に歩を進めます。どれだけ頑丈な靴を履いていても足裏にはひんやりと冷気が伝わり、寒さが苦手な次元は一歩進むごとに震えるような心地でした。けれど、もうあと僅かで家に着くのです。それを思えば深い濃紺に星を散りばめた夜空を映したように、気分は落ち着き、澄んでいきます。家に帰れば暖かな五右ェ門が待っているのです。
「帰る家が暖かいってのは良いモンだな」
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