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    ねむおか

    LⅢの次五お話。月一でゆるい次五のお話置き中です。
    そのほか短めのお話。
    R18としてあるものは18歳未満の方は開いてはいけません。

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    ねむおか

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    二月の次五です。大変遅くなった上に何を書いてもネタバレになってしまいそうなのでキャプションらしいキャプション書けず、すみません。ハッピー次五です!

    ※出来れば読まれた後にこちらご覧ください※
    お気付きになられたかと思いますが、オマージュしております。力不足ですがオマージュ元の作品は全て大好きです。気を悪くされた方いらしたらすみません。

    #次五
    sub-five

    雪見抄(二月のカノン) 冷たい冷たい二月の夜空には、零れ落ちんばかりの星がチカチカと瞬いていました。
     その中を真っ白い息を吐きながら、次元は急いで帰ります。二月に入ってからというもの、この辺りは雪続きで、昨晩も遅くまで降り続いていました。慎重に進まないと道端に残るたくさんの雪に足を取られるので、急ぎ足ながらも慎重に歩を進めます。どれだけ頑丈な靴を履いていても足裏にはひんやりと冷気が伝わり、寒さが苦手な次元は一歩進むごとに震えるような心地でした。けれど、もうあと僅かで家に着くのです。それを思えば深い濃紺に星を散りばめた夜空を映したように、気分は落ち着き、澄んでいきます。家に帰れば暖かな五右ェ門が待っているのです。
    「帰る家が暖かいってのは良いモンだな」
     静まり返った夜道には、煙草の煙と共に漏れ出た言葉を聞く者など誰もいません。見上げた先に浮かぶ、白い月が知っている位が丁度良いのです。

     柔らかな明かりの灯る玄関へ入るなり、次元は声を上げましたが、五右ェ門の返事はありません。寝ちまったのか、と静かに部屋へ向かうと、案の定ストーブの横で胡坐をかいたまま眠っている五右ェ門が居ました。先に布団で寝ていれば良いと言っても聞かずにこうしているので、風邪を引きやしないかというのがここ最近の次元の心配事です。立派な飴色の尻尾はストーブの前に投げ出されて、焦げつきそうになっています。すぅすぅと小さな寝息を立てる横へ次元が並ぶと、気配で目を覚ました五右ェ門はまだ眠たそうな目をゆっくりと開けました。
    「···帰ったのか」
    「おう、ただいま。今日も冷えるな」
     その言葉を聞いた五右ェ門は何も言わずに長く、たっぷりの毛に覆われた尻尾を次元へ巻き付けてやりました。ストーブで暖められた尻尾は、湯たんぽのようにすぐに次元の体を暖めてくれました。次元は次元で、五右ェ門の冷えた、薄い肩を抱きしめるようにして暖めてやります。
    「今日は何してたんだ?」
    「もちろん修行だ」
     少しの間も置かずに返ってきた言葉は次元の予想通りでした。日々繰り返される遣り取りには既に安寧を覚える程で、そんな自分に口元を緩めると、更に尋ねました。
    「雪積もってただろ?」
    「うむ。何ら問題はない」
    「尾はちゃんと拭いたか?」
     昨日はびしょびしょだったからな、と笑いながら自分に巻き付いている尾を撫でてみると、それは表面はふわふわとしているものの、内側は僅かにしっとりとしているようでした。昨晩のぐっしょりと濡れて筆のようになっている状態よりは随分良いかと思いつつ、次元は近くに落ちていた手拭で優しく拭いてやりました。
     そうしながら思い出すのは、先日の休みの日に見た、キラキラした雪の結晶を尾に纏いながら剣を振るっていた五右ェ門の姿です。あの眩しい横顔を思い返すと、雪の積もる中で剣を振るうのは止めておけと言う気にもなれず、濡れたらこうして拭いてやれば良い、それだけのことだと思うのでした。
    「子供扱いするな」
     初めはおとなしくされたままになっていた五右ェ門でしたが、自分ではしっかりと拭いたつもりだったこともあり、やがて次元の顎に自らの頭をぐいぐいと押し付けながら不満を伝えました。そうされると、頭部にあるフワフワとした五右ェ門の三角の耳がちょうど鼻先に当たるので、次元はこそばゆくて堪りません。
    「分かった、分かったからやめろって。じゃあ次はこっちだ」
     すぐ目の前にある手を取って、広げてやります。しもやけの、ところどころ赤く膨れた様は、見ているだけで痛々しく、これも次元の日課となっていました。
    「···む!」
     触れられたことで思い出したようにむず痒くなった五右ェ門は咄嗟に手を引こうとしましたが、手首ごとしっかりと掴まれている所為で、儘なりません。
    「離せ!」
    「放っておいたって良くはならねぇんだ。少し我慢してくれよ」
     机の上の塗り薬を、赤くなっている部分へ塗り込んでいきます。日頃のにやけた表情になら抗うことも出来るものの、真剣な表情を前にすると、五右ェ門も黙り込んで預けた指を見つめることしか出来ません。そうして薬を塗る間、海の底に二人だけでいるような静かな時間が過ぎてゆきました。
    「これで良いだろ。早く治ると良いんだがな」
     取ったままの手に唇を寄せると、まじないのように軽く触れていつものように笑います。それまで手を擦られていた五右ェ門は、今感じているむず痒さがしもやけの所為なのか、それとももっと別の、体の奥に疼くものなのかよく分からなくなり、怒ったような顔のまま俯きました。それに気付かない次元ではありません。
    「どうした、もっとして欲しいのか?」
     言葉と同時に手繰り寄せて、答えも聞かずに口付けるのは問いではないだろう、と五右ェ門が抗議しようとしますが口を開けば同時に舌を入れられて、ますます次元の思うがままです。
    「···ん。次元!返事を···」
    「だったら今聞かせてくれよ」
     見透かすような目線にも、甘い声音にも五右ェ門は歯向かう術を持ち合わせておらず、耳の付け根を往復する指によって漏れる、甘い唸り声を押し殺すことだけで精一杯です。
    「卑怯だ」
    「卑怯で結構。そういう生業なんだ」
     大きな耳が次第に後ろに倒れていくと、そのまま観念したように五右ェ門はぎゅっと目を閉じました。宙に浮いた手の平に指を差し込んで握ってやると、同じ力で返してきます。それが次元には堪らなく愛おしく感じてより一層強く握ると、赤く膨れた部分の熱が伝わってきました。
    「次の週末は街まで行こうな」
    「···何故だ」
    「お前の手袋を買いにさ」
     耳元で優しく囁くと、肩に頭を埋めた五右ェ門が小さく頷くのが分かりました。柔らかな尻尾がゆっくりと次元の体へ巻き付きます。
     ···
     ···
     ···
     瞼に仄白いものを感じてゆっくりと目を開けると、いつもとは違う天井、右隣に視線を遣ればいつもと同じ重たい黒髪が真っ白な枕に広がっていました。辺りは大層暗く、沈んだ墨色をした古い日本家屋はしんとして、背を向けて眠る五右ェ門越しの、雪見障子の向こうに見える坪庭の雪景色だけが浮かび上がるように一際明るく、その濃淡は起き抜けの目には痛いくらいです。頭上に広がる木目の、目を凝らすほどに暗く見える天井に視線を戻しながら、次元はぼんやりと考えます。
     ···ここはどこだったか。
     同時に、つい今しがたまで見ていた夢の感触が生々しく、起こさぬようにそっと、横に寝ている五右ェ門の頭を撫でてみます。毛に覆われたくすぐったい三角の耳があったのはこの辺りだったかと撫でてみるも、手の平に感じるのはいつも通りの丸みを帯びた後頭部、そして素直な髪の感触です。念のため布団の中に手を潜らせて、尻尾の付いていた腰の辺りも撫でてみますが、勿論そこにも何もなく、あるのは手の平に慣れ親しんだ細腰だけです。そりゃそうだと一人合点しつつも、名残惜しむように撫で続けていると、やがて五右ェ門の肩が震えはじめ、小さな笑い声と共に、振り向くことなく次元の手首を掴みました。
    「こそばゆいからいい加減止めんか。拙者には尾などないぞ」
    「···起きてたのかよ」
    「良い眺めだろう。思った通りだ」
     背を向けたままの五右ェ門は、どうやらすっかり障子の向こうの景色に心を奪われて、次元の問いにも答えず、小さな庭に雪が積もりゆく様を一心に見つめているようでした。振り向く気配もないので、片方の手首を捕えられたままの次元も、もう片方の肘をつくと五右ェ門の肩越しに外の景色を眺めてみることにします。墨を煮詰めたような暗がりの中から眺める、ささめ雪の舞い降りる様は現実とは思えないほどに森閑としていて、時間や空間の感覚が少しずつ薄れてゆくようでした。これは五右ェ門が夢中になるのも仕方ねぇか、と一向にこちらへ顔を向けないつれなさも当然に思えてきます。それよりも五右ェ門が、この場を楽しんでいることの方が余程重要なので、邪魔をする気など微塵もありません。その代わり、次元も自分のしたいことをすることにして、鼻先で五右ェ門の首に掛かる重たい髪を分け入ると、そこに現れた白いうなじに口付けました。それは浮き上がるように白く、翳る部屋の中で淡く発光するようでした。
     どれくらいそうしていたでしょう、やがてここへ訪れたいきさつを思い出しました。
     ひと月程前のことです。盗みは成功したものの、撤収に思いがけず難儀した挙句、ルパンが五右ェ門のお陰で何とか命拾いした仕事がありました。その打ち上げの場のことです。
    『さっきはさすがのオレも御陀仏寸前だったな。今回は分け前とは別に何か礼をさせてくれよ。五右ェ門ちゃんは何か欲しいモンとかねぇの?』
     ルパンに訊ねられてからしばらく考えていた五右ェ門でしたが、打ち上げも終わる頃、ようやく口を開きました。
    『物は要らぬが、お主が昨年手に入れたという屋敷があったな。あの風情のある、古い京町家だ。あそこへ行きたい。雪の日が良い』
     ···そうしてやってきたのが昨日のことでした。西の方へ、強烈な寒波が来ると聞きつけた五右ェ門が、次元を促し、次元の運転する車でここまできたのです。長い時間運転し続けた次元は、昨晩雪の中到着するなり、碌に部屋を見た記憶もなく、倒れ込むように寝入ってしまったのでした。
     思い出してみると、不満のひとつも出てきます。
    「オレまで巻き込みやがって」
    「当然だろう。不服か?」
    「お前さんと来てるってのに、不服な訳あるかよ。ただ、この部屋がありえねぇ程冷えるってことを除けばな」
    「はは、そうだな。お主には堪えるだろう。感謝しているぞ」
    「珍しく殊勝だな」
     念願の、風情のある屋敷からの雪景色を前にして、五右ェ門の声は終始柔らかく、ご機嫌な様子です。手首を掴まれていた手をやんわりと解いた次元が代わりに指を絡めて握り締めると、五右ェ門は同じ力で握り返してきました。繰り返す度に同じように握り返されるのが心地好く、つい何度もしてしまいます。そうしている内に、夢でしていたことと同じことをしていると気が付き、自らへ呆れて思わず口の端を上げると、そこに五右ェ門の柔らかい声が響きました。
    「お主も、夢を見たのか?」
    「ん?『も』って何だよ」
    「お主、起きてすぐにあちこち触っていただろう。あれは夢で拙者が狐になっていた故、寝ぼけたお主は拙者に尾があるかと思い、確認していたのではないか?」
     違うか?と問う声は優しく、同じ夢を見たことを疑いもしない、それどころか楽しんでいる様子です。
    「確かにオレが見たのは、お前さんが狐になった夢だったがな、お前の夢もそうだったってことか?そもそも同じ夢を見るなんてことあるのか?」
    「分からぬ。だが、現にそのようだから訊ねたのだ。こうして隣り合わせで寝ていれば、起こらないとも言い切れまい。共に同じ物を見て、空間を感じているのだからな」
     言われてみると、腑に落ちるような、そうでないような気がしながらも次元はすぐに考えることを止めました。考えたところで答えの出る物でもなし、夢の内容を詳しく言い合いそこに相違を見付けるなどという野暮なことをする気もない上、何より五右ェ門が同じ夢を見たことを、どこか嬉しく思っている様子であることが声音から明らかに伝わってくるので-それで良い、と思うのでした。
    「成程な。じゃあ、あんな尾っぽがあるってのはどんな気分なんだ?あれだけ立派だと重いだろ?」
    「悪くはなかったぞ。寒がりのお主を暖めてやることが出来たからな。重さなど、たかが知れている」
     五右ェ門の声はどこか誇らしげで、それを聞いた次元は考えるよりも先に、後ろから思い切り強く抱き締めていました。いい大人が夢の話などして、その上互いに、夢でも現実でもしようとしていることは変わらず、その所為で夢と現実が混ぜ合った話を当たり前のようにして、何て戯れだと思いながらも、全てを凌駕して伝えたいことはただひとつ「暖めたいというその気持ちだけで充分だ」ということなのでした。ぎゅうと強く抱く次元の腕の力は、思いを余すことなく伝えて、五右ェ門も何も言わずにその腕へ顎を擦り付けます。そんな二人の前に変わらず雪は降り続け、時間の経過も計れないような薄闇の部屋にも朝の時間は流れてゆきます。
    「···こう暗いと眠くなるな。もう少し寝て、目が覚めたら飯食いに行こうぜ。そのときはお前の手袋も買わねぇとな」
     耳の後ろから囁くと、やがて次元はすう、と眠りに落ちました。まだ六時を回ったばかりで、運転の疲れも取り切れていないので、二度寝も当然のことです。その寝息を聞くうちに、五右ェ門も眠気を誘われて、もう少しだけ眠ることにしました。次元の腕に抱えられたまま、その中でぐるりと静かに体を回転させます。顔を寄せて額を合わせると、次元の背中へ腕を伸ばして、暖める為にぎゅうと強く抱いて目を閉じました。
    『尾の代わりにはならぬだろうが、それでも少しは温まるだろう』
     いつ止むとも知れない雪が続く中、外からの淡い光をものともせずに、座敷は沈むように深い翳を宿しながら、眠りに就く二人を優しく包むのでした。
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    ねむおか

    DONE二月の次五です。大変遅くなった上に何を書いてもネタバレになってしまいそうなのでキャプションらしいキャプション書けず、すみません。ハッピー次五です!

    ※出来れば読まれた後にこちらご覧ください※
    お気付きになられたかと思いますが、オマージュしております。力不足ですがオマージュ元の作品は全て大好きです。気を悪くされた方いらしたらすみません。
    雪見抄(二月のカノン) 冷たい冷たい二月の夜空には、零れ落ちんばかりの星がチカチカと瞬いていました。
     その中を真っ白い息を吐きながら、次元は急いで帰ります。二月に入ってからというもの、この辺りは雪続きで、昨晩も遅くまで降り続いていました。慎重に進まないと道端に残るたくさんの雪に足を取られるので、急ぎ足ながらも慎重に歩を進めます。どれだけ頑丈な靴を履いていても足裏にはひんやりと冷気が伝わり、寒さが苦手な次元は一歩進むごとに震えるような心地でした。けれど、もうあと僅かで家に着くのです。それを思えば深い濃紺に星を散りばめた夜空を映したように、気分は落ち着き、澄んでいきます。家に帰れば暖かな五右ェ門が待っているのです。
    「帰る家が暖かいってのは良いモンだな」
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    ねむおか

    DONE1月の次五です。
    箸休め回です。ご飯作ったりお参りしたり、いつもと同様、ただ緩くてラブい次五です。12月のお話とつながっている部分もあるのでこれだけ読むと少し「?」かもです。すみません。ぱろくで出てきた単語から浮かんだものが出てきますが、こちらの連作は特段ぱろくを想定して書いているものではないので、お読みいただく際はご自身のお好きな次五ちゃんで想像いただけますと幸いです。
    一月は凪 年が明けてまだ間もない時刻、アジトにはいつもの四人が顔を揃えていました。
     五右ェ門の打った蕎麦で年越しをすると聞きつけ、珍しく年越しの時間を共に過ごした不二子でしたが、美味い蕎麦で満たされ次元の揚げた天ぷらに舌鼓を打ちルパンとっておきの酒で程よく良い気分になり、後は寝るだけです。
    「泊まっていけばいいじゃねぇの」
     呂律の怪しいルパンが留めるのも聞かずに、不二子はあっという間に帰り支度を整えてしまいました。
    「またね」
    「またねって···つれねぇんだからなぁ。もう。だったらタクシー拾うところまで送らせてくれよな」
    「ならば、拙者も行く」
     五右ェ門からの珍しい申し出に、不二子はブーツに足を通しながら尋ねました。
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