ノンアルコール・モヒート!(9) トントン。
控えめなノックが響く。カウンターのスツールに座っていた俺は立ち上がり、大きく深呼吸してから鍵を開けた。急いで来たらしい藍湛は、少し呼吸が上がっていた。
「呼び出してごめんな、忙しいのに」
中に入るよう促してから、扉を閉めて鍵をする。店内の真ん中に立ったままの藍湛に、カウンター席を促す。しかし藍湛は立ったままだ。気にせずカウンター内に入って、向かい合う。
「なにか飲む?」
問い掛けると、立ったまま首を左右に振る。酒を飲まされる事を警戒しているのかもしれない。信用なんてきっともう、ない。
「この間は……ごめん」
単刀直入に、告げる。まだるっこしいのは苦手だ。藍湛は下げていた視線を俺に向けた。
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