魔導図書館の地下深く アバンがマトリフを訪ねたのはあの戦いから数年後のことだった。最後に会ったときには彼はパプニカの王宮に勤めていた。そのためアバンはパプニカにむかったのだが、そこに彼はいなかった。
アバンにその事を伝えたのは城の衛兵だった。もう辞めたと言われたきり、理由さえ教えてくれない。アバンがなんとか聞き出そうとすると、王の側近という者が出てきた。その者が言うには、マトリフは最初からパプニカ王国に仕える気など無かったのだという。仕事も不真面目、職権の濫用、閲覧禁止の魔導書の持ち出しなどを行なったために追放したという。側近はマトリフが国家を転覆させようとしていたのではないかとまで言った。
アバンはマトリフのことはあの旅の間のことしか知らない。彼が癖のある人物であることは間違いないが、側近の語るような人でないことは理解していた。マトリフは魔王との戦いで我が身を削ってまで正義のために戦ってくれたのだ。
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