夏祭り「まったく……マスターは色気より食い気ですねぇ」
道満はふぅ、とため息をついた。
視線の先、雑踏から少し離れた木陰で、立香は幸せそうにたこ焼きを頬張っている。彼女の浴衣姿は最初こそ年相応に色香が出てきたと思えたものの、口を開けばやれリンゴ飴だ、わたあめだ、と食べ物のことばかり。ちょこまか動き回っては屋台の位置を把握して、ふたつ買ってこちらにも寄越したり、ひとつを分けあったり忙しない。道満は勧められるままに食べていたが、ふと『今日は食べてばかりだ』と気づいた時、急にざらついた気分になった。
「ん? ふぁひはひった!?」
「飲み込んでから話せと申しました」
相変わらずはふはふとたこ焼きを食べている立香に腹立たしくなって、つんとそっぽを向く。
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