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    sayaka2322

    @sayaka2322
    パスワードはくろひーの身長体重を並べた6文字

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    sayaka2322

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    髭ぐだ♀。2018年頃に書いてたやつ。途中まで。久々に読み返して自分で萌えたのと「キスの日ネタにいいじゃん」て思ったので。

    #ひげぐだ
    unshavenFace
    #髭ぐだ
    beardedBum

    埋み火1 この頃、黒髭と二人で過ごす時間が増えた。
     と言っても二人でいるからといって何かするわけでもない。それぞれ別のことをしている。今日もそうだ。こちらは勉強を、彼は背を向けて携帯ゲーム機をいじっている。
     そのTシャツに包まれた大きな背中に擦り寄ってみたかった。あの巨躯に組み伏せられて、肩甲骨のあたりに爪痕を残してみたかった。でも、私の浅ましい欲望は叶わない。
     彼は私と二人きりになっても過度に触れたりはしない。他の女性にするようなセクハラもない。されたいわけではない、断じて。これは彼が私をどう見ているかの話なのだから。
     話が逸れた。私は先日、彼にチョコレートを渡した。バレンタインのやり直しで、本命だと伝えた。伝えたはずだ。
     お返しはあった。「秘蔵のコレクションが無くなってたんでぇ、これで我慢してくだち」と渡されたのはカルト的人気を誇るアニメのビデオテープだった。再生機器は修理中らしくまだ見ていない。秘蔵コレクション……何か記憶の隅を掠めるものがあったが思い出してはいけない気がする……。
     とにかくお返しはくれたものの、これは黒髭氏からの「いいお友達でいましょうね」なメッセージではないだろうか、と結論づけるしかなかった。本命だと伝えた上で色気のないプレゼントを渡されればそう思いたくもなろう。プレゼントにけちをつけるわけではないのだけれど。
     それだけではない。例えば、こうやって二人で過ごしているとき。エミヤならば血相を変えて叱りつけるような格好でいても、そのまま寝落ちしていても、何事もなく部屋を出ていかれてしまう。彼にとって私は女ではないのだ。
     だったら私はせいぜい気安く友達づきあいのできるマスターでいるしかない。意識していない相手にアピールされることほどウザいものはないだろう。恋人でいられないならせめてお友達の距離は保っていたかった。
     私は伸ばしかけた手を引っ込める。背中に触れたかったせいで無意識に手を伸ばしていた。
    「マスター」
     呼びかけられて、びくりと肩が震える。私の不埒な感情が気づかれただろうか。
    「そろそろ寝る時間でしょ。拙者帰るんで」
    「あ、うん。おやすみ」
     彼はサッサと部屋を出て行く。触れたい。引き留めたい。そんな感情を押し隠して、私は笑って彼を見送る。
     ひとりになった部屋に満ちる静寂は質量をもって私を押し潰すかのようだった。



     翌日のレイシフトは何事もなく終わるはずだった。
     木々の中、気がつけば四方を敵に囲まれている。ここはどこなのか、それすらも判然としない。
     カルデアとの通信は途絶えている。つまり、カルデアからの魔力支援がない。それはサーヴァントの魔力が不足するということ。令呪を使って私の魔力を回すことは出来るが到底足りない。
     目の前で仲間が次々と光の粒子になり消えて行った。これはまずい。
     なんとかマシュと黒髭を残したままその場を切り抜けた。付近を探索し、見つけた小屋に避難する。陽が落ちたので今日はこれ以上進めない。
    「先輩は休んでください。私が外で見張りを」
    「マシュもかなり消耗してる。まずは黒髭に見張りをしてもらおうよ」
     私を寝かしつけて出て行こうとするマシュを引き留め、黒髭の方を見る。
    「へいへい、良い子は寝る時間ですぞっと」
     黒髭は素直に小屋を出て行った。瞬時に状況に対応できるのは彼の長所だ。
     マシュは魔力の消耗が激しかったのだろう。すぐに安らかな寝息が聞こえてくる。
     私も早く体を休めなければと思うのに、どうにも気が昂ぶって仕方なかった。そっと外に出てみる。
    「くろひー?」
     小声で呼んでみるが見える範囲にはいない。どこに行ったのだろう。小屋の裏手に回ろうとして声がかけられる。
    「おいコラ、どこ行くつもりだクソガキ」
    「ひえ」
     背後に二メートル越えの大男が立っている。
    「黒髭いないから、探そうかなって」
    「魔力消費抑えるために霊体化してたんですけど? あのルーンストーンの簡易結界に敵が触れたら気づけるんで問題ナッシング」
    「そ、そっか」
     キャスターのクー・フーリンがくれたルーンストーンのおかげで山小屋の周囲は簡易的な結界が作られている。私の力じゃきっと長くは保たないけれど、それでもこれを活用できる力くらいはつけられていて良かった。……窮地に追い込まれなければもっと良かったのだけど。
    「……実際のとこ、くろひーの魔力残量どうよ」
     私は小屋の中のマシュを起こさないようひそひそ声で話す。黒髭も声を潜めて返す。
    「実際ヤバい。マジで消える五秒前」
    「……いやそんなに早くは消えないでしょ。……あのさ。私の方もあんまりないんだけど。その……血とかで魔力供給する?」
    「要りません」
     ノータイムで返ってきた。
    「マスターの魔力量じゃ血を流して失われる体力と拙者に流れる魔力の釣り合いとれないんで。キャスターですらない拙者にわかるようなこと言います?」
    「わお、辛辣」
     それでも黒髭まで失ったらと思うと怖くてどうにかしたかったのだ。
    「ほらもう戻った戻った」
     しっしっと追い払うような手振りをされる。
    「じゃあさあ」
     我ながら、話の切り出し方が狡いなと思った。
    「……粘膜接触による魔力供給なら、どうかな」
     魔力供給の方法くらいは知っていた。血液よりも効率の良い方法——性交。けれどそれは、女としての私を使うことになるもので。
    「……は?」
     ドスの効いた声に震えそうになる体を叱咤した。真っ直ぐに黒髭の目を見据えて、私はもう一度繰り返す。
    「だから、粘膜接触による魔力供給」
     沈黙が流れた。黙り込んだ黒髭の、感情の読めない瞳がじっと私を見ている。こんな時なのに、怖いより私に意識を集中してくれているのが嬉しかった。
     黒髭の手がゆっくりと伸びてくる。大きな手だった。片手で私の顔を覆い尽くせるほどに。その手に腰を抱き寄せられて、見上げた顔は相変わらず何を考えているのかわからない。静かに身を屈めて接近してくる顔に目を閉じた。黒髭のわさわさした髭が触れる感触がして、かさついた唇が触れて。
     黒髭の舌が私の唇をノックするように突いてくる。応えるように口を開けると分厚い舌がぬるりと侵入してきた。口内を余すところなく舐めとられ、口の端から垂れた唾液を啜り上げられる。
     私は黒髭の船長服を掴んで必死に立っていた。与えられる刺激に立っていられなくなりそうだったのだ。
    「……ぷはっ」
     酸欠になりそうだ。長い長い口付けを終えた二人の唇を、銀色の橋が繋いでいる。
     黒髭が口もとを手の甲で拭った。
    「ご馳走さん」
     すいっと身を離すついでに、扉の方へ押しやられた。
    「ほら、寝た寝た。これ以上もらったらマスターが動けなくなるだろうが。かえって邪魔だ」
    「でも、」
     言い返そうとして口を噤んだ。私は何を言うつもりだったのだろう。キスによって魔力供給の目的は達成された。これ以上は労力に対して成果が得られない。あくまで魔力供給を盾にした私にはここまでが限界だった。
    「……おやすみ」
     私は結局、小屋の中へ戻った。
     唇に灯った熱がいつまでも体を苛んでいた。
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