Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    いなほのほ

    @hokahoka_inaho

    @hokahoka_inaho
    主な生産は🍱⚖️、気まぐれでほか色々。
    大体いつでも気は狂ってる。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍚 🍱 ⚖ 🍮
    POIPOI 28

    いなほのほ

    ☆quiet follow

    ⚖️+🍱+✂️の、10月4日のはなし。
    (※ヤスリカの人が書きました)

    このあと🌃でもしっかり祝われてると思う。

    フレンチトーストとちいさな誕生会ピーンポーン
    部屋に響くのは、どこか間の抜けたチャイムの音。それが鳴り終わるより先に、玄関の扉が勢いよく開いた。

    「リカオちんやっほウェーイ! 遊びに来たよ〜♪ …ってあれぇ? ヤスちんじゃん! やっほウェーーイ!」
    「うぜぇ、つかうるせえ。近所迷惑だろ」
    「ジャロップ…。来るなら事前に連絡を寄越せといつも言っているだろう…です。不在だったらどうする気だったんだ……です。」
    「お茶でもどうかな〜って誘いにきたんだけどー、オジャマなら帰るよ? オレィってば気遣い出来ちゃうタイプだから♪」
    「別に邪魔とかじゃねえよ。なぁリカオ?」
    「あぁ。とりあえず上がってくれ…です。」

    こちらを見上げるヤスに頷き返し、ジャロップを招き入れる。
    彼は、え〜!マジマジのマジで良いの?なんて大袈裟に驚きながらも、素直にブーツを脱いだ。

    「じゃあ早速おじゃましまウェーイ♪…オレィは今日ちょ〜っと早上がりだったんだけど、リカオちん達はふたりで何やってたトコ?」
    「勉強、見てもらってた。…中間、もうすぐでさ」
    「そっかぁ! ヤスちん、頑張ってるんだねぇ」
    「中々に手強いがな。丁度区切りがついて休憩にしようとしていた所だ…です。あまり根を詰めすぎても良くない…です。」
    「それリカオちんが言うの?」
    「……ぅ、うるさいな…です。」

    苦し紛れにそう返せば、ジャロップが愉快そうに笑った。助けを求めて横を見遣れば、ヤスは呆れたように眉尻を下げている。…とりあえず、ここに俺の味方は居ないらしい。

    「ところで。どうして、俺の所に来たんだ? …です。相手ならクースカやウララギでも良かっただろう?…です。」
    「ウェウェ〜イ? そんなのマブダチだからに決まってるじゃーん!」
    「だから、マブダチではない…。」

    いつもの発言にはいつもの返し。そのまま言葉を続けようとしたところでジャロップが、でもさ〜と再び口を開く。

    「クースカちんには断られちったし、ウララギちんも夜しか空いてないんだって。まじサゲシュンのすけ〜」
    「誰だよ」
    「ただの消去法じゃないか…です。」
    「でもリカオちんたちが居たからアゲみざわテンアゲまる! オレィってほんとタンジュン」
    「……なあ。コント中悪いけどあんた、リカオを誘いに来たんだよな?」
    「うん? そうだよ?」

    コントではないんだがと呟いた俺の言葉は、そのまま虚空を漂って消えた。

    「なら…俺が居てもいいならだけど、ちょうど良いから食ってけよ」
    「ウェ?」
    「あぁでも。家主のあんたが決めてくれ」
    「俺も構わないが…大丈夫か? お前の負担になるようであれば、」
    「ホントに!? ヤスちんが!?!」

    叫ぶジャロップをうるさいぞと一蹴する。慌てたように両手で口を抑えた彼の瞳は、それはもうキラキラと輝いていた。…まあ、気持ちは分からなくもない。

    「……んだよ、なんか文句あんのかよ」
    「いやナイナイ! 全然ナナナナ〜イ! でもへ〜、ヤスちん料理とかできるんだ」
    「まあ…軽く作るくらいは、な。母ちゃんみたいにはいかねえけど」
    「あ、そっか。おうちの手伝いとかしてる系だっけ? ワカル〜、メッチャえらいよね〜」
    「うっせ、こんくらい普通だろ。……褒めたって何も出ねえよ」

    ヤスはジャロップをあしらうように、しっし、と手を振りながらこちらへ振り返る。そして彼は黎明色の瞳で俺を捉えたまま、僅かに首を傾げた。

    「リカオ、冷蔵庫開けていいか? 持ってきたやつ出してぇんだけど。あとキッチンも適当に使うぞ」
    「あぁ、自由にしてもらって構わない…です。」
    「おう。……あんたらは座って待ってろよ。焼くだけだし見ててもつまんねえぞ」
    「えぇ〜待ってるだけの方がツマンナイじゃん! オレィにも何か手伝えることないの? てか何作るの?」
    「フレンチトースト」
    「ジャプ! 期待高まっちゃう〜」
    「家で仕込んできたし、手伝いもまだ要らねえ」
    「そっか。ならオッケーちん♪ じゃあオレィここで見てても良い? あ、ジャマならどくから言ってね」
    「…つまんなくても良いなら勝手にしてくれ」

    ジャロップに押し負けたヤスを横目に、フライパンをコンロの上へ乗せておく。それからケトルにたっぷり水を張って、スイッチをON。

    「ふたりともコーヒーでいいか?…です。」
    「おう、ありがとう」
    「オレィもおっけー! ありがとうリカオちん」

    ヤスが溶かすバターの香りに包まれながら戸棚を開ける。マグカップを3つと、いつものインスタントコーヒー…の隣、戴き物のドリップコーヒーを出す。曰く、人気店が監修した限定品で、すこぶる評判が良かったらしい。封を切るやいなや、解き放たれた香りが華やかに広がっていく。

    「わぉ、いい匂い〜。リカオちんがいつも飲んでるやつじゃないよね?」
    「折角の機会だからな。香りが良くて人気の品らしいんだが…正直想像以上だな…です。」
    「へえ…開けただけでコレか、すげえな…。あ。そのカップ、ジャロップのだったんだな」
    「うん、キャワイイっしょ? オキニなんだよね〜」
    「コイツは知らない間に勝手に物を置いていくから困る…です。」

    沸くのを待つ間に、喋りながら皿とカトラリーも準備しておく。ドリッパーをセットしたマグを並べて、それぞれに少しずつ湯を注いで少しの間蒸らす。
    ホコホコと湯気を立てるカップから視線を上げれば、ヤスがトーストをひっくり返すところだった。ぺとん、という音ともにジャロップの歓声が上がった。ヤスの横顔もそこはかとなく嬉しそうなので、どうやらうまく焼けているらしい。ならばこちらもうまく淹れてやらなければと、俺は小さく気合を入れ直した。

    「でもさ、これ元々ふたりで食べるヤツだったんだよね? ホントにオレィも食べてイイの?」
    「一応多めには作ってきたから…まあ平気だろ」

    ふたりのの会話をBGMにして、マグカップへ順番に湯を足していく。ゆっくりと丁寧にコーヒーを落として、量は………もうそろそろだろうか?

    「なあ。とりあえず半分は焼けたぞ。リカオ、そっちはどうだ?」
    「今淹れ終わったところだ…です。ジャロップ、ミルクと砂糖を出しておいてくれ。」
    「ウェイ! 任せて♪
    「残りは今焼いてるからな」
    「あ〜〜っ!!」
    「なんだ!?」
    「急にどうしたんだ…です。」
    「ねぇねぇ見て、ローソクあったよ!」
    「おい、関係ないところを漁るな!…です。」

    棚の奥から発掘したらしいロウソクを掲げながら、ジャロップが声を上げる。うっかり断り損ねて貰ってしまったけれど、特に使う予定もなく棚の奥でひっそりと眠っていた…もとい、眠らせていたものだ。

    「ね、セッカクだからコレ使っちゃお〜よ!」
    「あ〜…ミディスタ映え…ってやつか。…え、つーかそれに刺す気なのか? 刺さんのか?」
    「ダイジョブだって、イケるっしょ! とりまやってみてから考えよ!」

    鼻歌混じりのジャロップの提案に、ヤスが興味を示した。それで楽しいならまあいいかと割り切って、火種を探す。たしか、いつぞやの小道具が残っているはずだ。

    「ねえ! 見てヤスちん、ちゃんと立ったよ!」
    「本当だ。なんか、映え?っていうよか、めでたい感じになったな」

    小さな掛け声と、一拍遅れてフレンチトーストがひっくり返る音がした。

    「おめでたくってダイジョブジョブ! リカオちん今日誕生日だし♪ 」
    「えっ!?」
    「ありゃ?……リカオちん! 今日って何月何日!?!」

    なぜかフリーズしたヤスを見て、慌てたようにジャロップがこちらを向いた。本当は確認するまでもないのだが、一応カレンダーを確かめる。

    「10月4日だ…です。」
    「だよね?! オレィ間違ってないよね?」
    「あぁ。」

    …なるほど。ヤスが何に驚いているのか、今やっと理解が追いついた。
    俺は見つけたマッチ箱を掴んでヤスのもとへ引き返す。

    「そういえばお前には言っていなかった……です。…今日は、俺の誕生日だ…です。」
    「は!? なん…なんで、そんな大事な…、」
    「えぇ〜〜!! リカオちん言ってなかったの?! …ってわ、わわわ! ヤスちんダイジョウブ?」
    「ヤ、ヤス……? どうしたんだ?…です。」

    ヤスは俯いたまま、わなわなと拳を震わせている。ジャロップとふたりして覗き込もうとしたら、ちょうどヤスが勢いよく顔を上げた。

    「そんな大事な日に…なんで俺なんかの勉強見てんだよ…!」
    「す、すまない?…です。」
    「ていうか怒るトコそこ?!」
    「別に怒ったりしてねえよ。あと、おめでとう。…いや、でもさぁ……、言えよな。誕生日だって知ってたら、なんか…もうちょっとなんかあっただろ」

    呆れたように眉尻を下げて、ヤスが笑う。それに乗っかって、そうだそうだとジャロップが野次を飛ばしてくる。

    「気持ちと、おめでとうその言葉だけで充分だ。ありがとう…です。」
    「…そうかよ。………ほら、残りも焼けたぞ! ジャロップ、こっちにもろうそくブッ刺してやってくれ」
    「ウェウェイのウェイでガッテンショー! とびっきりキャワイくしチャオチャオ♪」
    「リカオ、マッチ貸してくれ」
    「あぁ。」

    ご機嫌なジャロップが焼きたてのフレンチトーストにザクザクとロウソクを突き立てて、ヤスがマッチを擦る。かしゅ、と軽い音がして、ほのかな火薬の匂いを漂わせながらマッチが燃える。ジャロップのスマホから響く大量のシャッター音をBGMに、次々と火が灯っていく。

    溶けるから巻きで、なんて言いながら、ふたりが高速の…具体的に言うならBPM220くらいのバースデーソングを歌ってくれる。早送りのようで非常に面白かったが、折角言葉通り巻いてくれたのを無駄にするわけにはいかない。せめて大笑いにならないよう堪えて、震える息でどうにか全て吹き消す。

    「「ハッピーバースデー、リカオ(ちん)」」
    「ふ、ふふ…く…っ、すまない、少し…はは、待ってくれ…です…。」
    「ツボってるな」
    「ツボってるね」
    「くく、……っ…ふぅ。…ふたりとも、祝ってくれてありがとう…です。」
    「ろうそく、片付けるぞ」

    3人でロウソクを抜き取って、マッチの燃え殻と一緒に水を張ったグラスに突っ込む。

    「蝋、垂れてねえな。良かった…」
    「ね、写真イイ感じに盛れたからヤスちんにも後で送っていい?」
    「 おう、一応、もらっとく。ありがとう。…あっ、そうだ! ハチミツ持ってきてんだ。ハッチンがオススメだって押し付けてきたやつ。リカオは使うだろ?」
    「良いのか?…です。」
    「オレィもかけたい!」
    「ほら、好きなだけ使えよ。俺は少しあればそれでいいし、ウチにもあるから残った分はリカオにやる」
    「ありがとう…です!」

    穴だらけになったフレンチトーストに、俺はたっぷり、ジャロップは普通に、ヤスはほんの少しだけハチミツをかけて、誰からともなく顔を見合わせる。

    「「「いただきます!」」」

    ヤス特製のとろけるフレンチトーストはまさしく絶品だった。とっておきのコーヒーも無事うまく淹れられていたようで胸を撫で下ろす。
    良い誕生日が更に良い一日へと昇華したのを感じながら、ジャロップのお喋りにヤスとふたりで相槌を打つ。嵐のような来訪から始まった休憩時間は、3人の『おいしい』の共有を楽しむ平凡な、それでいてとびきり有意義で幸せな時間になった。

    ……これは余談だが。
    ジャロップが帰ったあと、残っていたヤスの課題は大いに捗り、無事予定時刻までに片付けることが出来たのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭😭😭🙏🙏👏👏💯💯💯💖💕🍯🎉🎂💗👏🙏💘👏☺👍🍞🎂🙏☺👍💕☺☺☺☺☺☺💞💞🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    いなほのほ

    DONE🍱⚖️。両片想いだけど倫理観がガチガチで付き合えない話の幻覚。コピペするメモ間違えてるとかいう信じられないミスがあったのであげ直し。
    Q:そんなことある???A:残念ながらありました。
    5回読み返したからもう平気だと思う。平気であってくれ…。
    それは、時間でしか解決できないその日、俺はリカオとカラオケに来ていた。
    リカオの隣に腰掛けたら、こいつは俺を遠ざけるみたいに、俺から離れるみたいに、10cmくらい遠くに座り直した。別にショックだったわけじゃねえけど、あぁまたか…とは思った。

    リカオが好きだ。でもリカオが俺をどう思ってるかは、正直全然分かんねえ。
    俺の気持ちはもう何十回と伝えてきたけど、でもその度にこいつは困った様に『そうか』とだけ言って話を切り上げるから。付き合うとか付き合わないとかの話、めちゃくちゃ避けられてる気がする。
    リカオからしたら俺はまだ子供だし、第一こいつは弁護士だから、そういうの、余計に難しいのかも知んねえけど。
    …それでもたまに、忙しいだろう仕事の合間を縫って弁当買いに来るし、こうやって誘えばカラオケなんかにもついてきてくれるから、俺は今日もこいつを諦められないままでいる。
    3854