四月一日、昼下がり。「リカオに『好き』って言われてみてえ」
ヤスがカウンター越しに投げ掛けた言葉に、リカオの肩と獣耳と尻尾が同時に跳ねた。彼は一歩後退りして困ったように視線を彷徨わせるけれど、ほんのり赤くなった耳たぶを見るに、嫌がられてはいないらしい。
「……い、一体どうしたんだ、藪から棒に…です。」
咳払いの後に発せられた、いつもよりほんの少し上擦ったリカオの声。そこに滲む動揺が嬉しくて、思わず口の端が歪みかける。それを慌てて制しながら、本来の話題へと思考を戻す。
「今は言わねえようにしてるけど、俺は言ったことあるだろ。……でも、あんたからはまだ一回も言われてねえ」
「それは……。」
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