聡狂【夏祭り】「関東ってどこも人多い……」
「まぁ、確かになァ。 何食べる? 好きなもん食べ」
祭りにいこーと唐突に現れた狂児が渋る聡実を連れ出したのは、アパートから少し歩いた先にある小さな神社の境内で行われている夏祭りだった。浴衣姿のこどもが走りまわり、小さいながらも櫓が組まれてその上では太鼓を叩く男たち。
祭り会場を満たす夕暮れから夜へと差し掛かるその空気は夏特有のもので、昼間はうだるほどに暑いものが少しは和らいだようにも感じる。とはいえ、湿気と気温は相変わらずで狂児の言葉を聞いた聡実は遠慮なくかき氷の屋台に足を向けた。
「あ、かき氷、俺も食べよ。 味は?」
「なんか好きにかけられるんやって。 あ、僕は大でお願いします」
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