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    dear_twst

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    dear_twst

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    後半変更分

    リドル氏のお気に入り「あー、気遣って迎えにきてくださった感じなんですな。それはどーも大変ありがた迷惑!こんなお手製のヴェールまで作成してくれちゃって何が目的なの?ただの優しさだとしたら怖いんですが!?目的があるってハッキリ言ってくれた方がまだ納得できるのだが…」

    リドル氏が呆れたようにため息をつき肩を竦めた。かと思いきや、立ち止まりグイッと腕を引かれよろける。急な出来事で体勢がよろめき、前へと躓く。リドル氏が抱き止めてくれる。なんだと思う前に握っている方とは反対の手が、こちらへ向かう。

    何の脈絡もなく伸びてきた手に、そっと顔の向きを固定されて目が合う。指先が冷たい。
    突然の状況に、頭がついていかない。

    何故か、リドル氏が熱っぽくこちらの顔を覗き込んでいる。

    「イデア先輩が好きだからです」
    「はぁ!?」

    ……待ってくだされ。なんだって?

    ぱちり、と瞬く視界で、目の前のリドル氏は真っ直ぐに射抜いてくる。
    月明かりを反射して光る、滲むグレーの瞳。

    じわじわと投げかけられた言葉の意味を、頭が理解する……が、理解できないんだが!!??

    リドル氏が僕をなんだって?

    「今はボク特製のヴェールで隠されてますが、綺麗な金の瞳に整った顔立ち…」

    スルリと冷たい指が頬を慈しむように撫でる、視線はこちらを捉えたまま。吐息さえ感じる、非常に近い距離、にリドル氏がいて。
    そう、今はヴェールを着けてるから隠されてるはずなのに、

    「ボクより歳上なのに幼く純粋な、加護欲を唆る仕草…」

    その瞳に燈されてる熱が、やけにリアルで息が……

    「ッ!っり、りどる…氏…?」
    「押し倒して泣かせたら。さぞ、愉しいでしょうね?」

    愉しそうに、薄い唇が蠱惑的に美しく、歪に口の端を釣り上げて

    「ほら、その可愛い声をもっと聞かせて?」

    とろりと甘くて柔らかい声でこちらを捕食しようとしている。

    つつつと指先が頬に沿って這い、唇に触れる。
    順に伝っていく情欲を掻き立てるような仕草にごくりと喉が鳴る。
    雰囲気に呑まれて、

    しかし賢い脳が状況を理解し、耐え切れず発狂した。

    「ふぁーーーーー!!」
    「ぷっ。あはははは!!」

    添えられてた手が離れ、リドル氏が腹を抱えて笑い出した。もう片方の手は繋いだままであるが、楽しく楽しくて仕方がない、と言うような表情に揶揄われたのだと気付いた。そして、安心した。肩を深く上下させる。

    (変な道開くところだった…)

    心臓がバックンバックンうるさい。そちらの趣味はないが普通に『快』だったから流されそうになってしまった。こんな感覚知らずともよかったのに、その一端を唆されて開発された気がする。『不快』だったらよかったのに…

    なまじ相手の顔が可愛いだけにオッケーしそうになった自分が恐ろしや。拙者、欲求不満か。高校生男子なんだから常に欲求不満だわ。脳内会議で瞬時に結論が出た。

    「最高の反応をありがとうございます。迎えに来た甲斐がありますね。それだけ元気なら大丈夫でしょう」
    「う、まあ、緊張とかもう諸々吹っ飛んだけどさ…」
    「あぁ、髪がピンク色になってる?あと少し顔色がいいですね?照れてるんですか?」
    「べっ、べつにちがいますし!」
    「可愛いですね」
    「ヒョッ!?」

    クスクスとリドルが笑う。こちらは意味のわからん状況に目を白黒させながら顔が真っ赤になる。

    「ほら、もう鏡の間につきますよ」
    「ぶぁ、あ、ハイ」
    「もう大丈夫ですね」

    そういって、手が離れていった。なぜか、離れた温もりが名残惜しく感じた。が、即頭から振り払った。

    (なんか、すごいイベントが起きてた気がするんだが)

    手を繋いで、ヴェールをプレゼントされて、せっ、拙者のことを好きだと告白される?いや、最後のはただのジョークだと思いますが…

    「で、リドル氏はなんでこんなことを?」
    しつこいようだか気になってもやもやするので聞いてみた。きょとりとした後に綺麗に口角が上がった。

    「後輩寮長をフォローするのは先輩寮長として当然でしょう。それに、」
    「それに?」
    「このボクが苦痛を我慢して耐えてるというのに、一人だけ逃げようだなんて許せません。

    イデア先輩も道連れです」

    良い笑顔で言われた。

    すごく納得した。
    というよりリドル氏も苦痛に思ってるのか式典を…そこらへんももうちょっと詳しく聞きたいが。

    「あとイデア先輩が好きだからです」
    「す!?いや、それはもういいから!!」
    「本当です」

    酷く悲しそうにリドル氏の顔が歪む。思いがけない反応に戸惑い手が彷徨う。そして、囁くように静かに告げられる。

    「イデア先輩、ボクはね…あなたのことを本当に尊敬してるし羨ましいとも思っています」
    「僕のことを羨ましい?どこが…」
    「ボクはお母さまが亡くなったことを本当に悲しんでいますが、同時に酷く安心しているんです。ボクの罰はなくなったんだなって…」
    「あ…」

    母親の愛=罰
    母親の死=刑期終了
    刑期を終えた囚人は解放される。
    それは囚人が心から待ち望むこと。

    リドル氏の考えに基づくと、この方程式が成り立つ。でも、それって…

    「お母さまの死をどこか喜んでる自分に吐き気がするんです。ボクも貴方のように純粋に悲しんで悔やみたかった…」

    愛している人の死を喜ぶなんて、こんな酷い話があるのか…

    「そ、っか…」
    「だから純粋なイデア先輩が好きなんです」
    「いや、もうそれはいいって…」

    じわじわ胸の底から湧き上がる、リドル氏に対するこの重たい形容しがたい感情を、何かを、なんと呼べばいいのか……
    上手く昇華させることができない。

    くすくすと面白そうに笑うリドル氏に力無く返すしかできなかった。

    「そうそう、ボクも寮長になりたくてなったわけじゃないです。お母さまが『ハーツラビュルの寮長になるように』と望んだから寮長になりました。なので、ボクの意思は関係ないです」
    「なら、もうやめていいのでは…?」
    「それは出来ませんね。ハーツラビュル寮長の責務はお母さまからいただいた最後の愛なので」
    「あー、ハイハイ。なるほど理解。やっぱり狂ってますな」

    きょとん。として、ふふっと笑った。やはり笑った顔は可愛く見える。リドル氏生まれた性別間違ってませんか。

    式典の衣装を身に纏ったオルトが喜んでこちらに向かってきたので、今度こそリドル氏は離れて行った。

    (…リドル氏狂ってますな)

    胸中で再度ごちると同時に、胃の底が濁る。リドル氏の新しい一面に複雑な気持ちになる。

    哀れみ。憐れみ。痛ましい。
    もう彼を縛る存在はいないのに、まだ愛を乞うなんて。
    せっかく自由になったのに結局また縛られにいっている。愚かな。

    (僕のことが好きだって?)

    ウケるんですが。
    拙者と真逆な存在じゃんリドル氏。
    一般人で、小さくて可愛くて真面目で、カッチコチで無意味な古臭い伝統を守ってキャッキャッとお茶会ばっかりしてる陽キャ集団の寮長様じゃないですか。寮生からオシャンな懐中時計なんか貰っちゃって慕われてるし。なんでも揃ってるじゃないですか。

    (わざわざこんなお手製のヴェールまで用意してくれちゃって…)

    真意が分からない。

    たぶん優しさと気遣いは嘘ではない。
    なら、あの熱の灯った瞳、甘さの滲む声とこちらの情を掻き立てるような指先はなんだったのか。
    そう、こちらを混乱させる言動をポンポンと投げてくるなんて。
    実は快楽主義とか?

    『貴方のように純粋に悲しんで悔やみたかった』

    あの言葉も嘘ではない。

    感情に引っ張られかけて唇が少しだけ戦慄いていた。
    一瞬だけ食いしばった、そこに見えたのは悲しみと自分に対する怒り。
    たぶんだけどたまに淡々と語っていたのは冷たいのではなく感情的になっているのだと思われないためだと思う…
    もしかすると、抑えないと溢れてこぼれ落ちるほど彼はいっぱいいっぱいなのかもしれない。

    リドル氏は結構、思った以上に複雑な存在なのかも…

    (まあ、とりあえず寮長の責務とやらでもしますかな)

    コツコツとヒールが響く。コツ、とヒールがたてる音に合わせて少し気を引き締める。気分は乗らないけどねぇ。せっかくの先輩寮長のありがた迷惑をもらったんで、ちゃんと式典やりますよ。

    冷たいのか熱いのか分からない息を吐いて、この時気づく。

    リドル氏からもらった甘じょっぱい塩飴が、いつのまにかなくなっていた。
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    背後に 1909