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    フジワラ

    @wt_0014
    WTじんあら派の19歳組箱推し🥳
    拙いですが、溢れるパッションから漏れ出た物をそっと置いています。

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    フジワラ

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    秋のじんあらでお月見🎑をテーマに書いてみました。

    秋の行事がなぜか芋掘りしか思い浮かばなかったんですが……🌸さんが「お月見」っていう素晴らしき行事を…しかもそのテーマをくれると言ってくれたので「うっほお!書く書く!」ってなっていたんですが…なんだかんだでこんなに遅くなってしまいました…。雪降りだしちゃったよ……。
    でも、せっかく書いたのでそのままアップしちゃいます~。

    2024/11/25

    #迅嵐
    swiftashi
    #迅悠一
    xunyuichi
    #嵐山准
    arashiyamaJun

    「お、とっきー。いいとこで会った」
    「迅さん」
     本部の廊下にて、隊室に戻ろうと一人歩いていた時枝の後ろから迅が声を掛けてきた。
    「嵐山さんなら隊室ですよ」
    「いやいや、これから防衛任務でしょ。だからさ、伝言頼まれてくれない?」
     手にしていたぼんち揚を時枝に差し出しながら、迅はそう言った。
     
     
    「そろそろ時間だな。綾辻」
    『はい、辺りに門の反応はありません。もうすぐそちらに引き継ぐ隊も到着します』
     夕方から夜にかけての防衛任務が終わる時間、インカム越しの綾辻からの言葉に嵐山は頷く。
    「よし、じゃあ今日はこれで終わりだな」
     すっかり日が暮れて暗くなってしまっている時間だ。嵐山は自分がもうすぐここに来る隊に引き継ぎを行うために残るので、時枝と佐鳥に女性陣の木虎や綾辻󠄀を送っていくように指示を出す。
    「あ、嵐山さん……」
     いつもの指示なのでいつも通り返事が返ってくると思ったが、時枝が珍しく嵐山を呼び止めた。
    「どうした?」
    「えっと……迅さんからの伝言です」
    「迅?」
     予想していなかった名前が出てきて嵐山は首を傾げる。同じく佐鳥と木虎も不思議そうに顔を見合わせていた。
    「はい、本部で迅さんに会って……防衛任務が終わった後に伝えてくれって」
    「わざわざ充に? 直接言ってくれればいいのにな」
    「『防衛任務が終わったら一緒にお月見しようぜ』だそうです」
    「……月見?」
     ぽかんとした表情で嵐山はつぶやく。……確かにそう言われてみると今日は中秋の名月で、よく晴れているので綺麗な月がぽっかりと浮かんでいるのがよく見える。絶好のお月見日和ではあるだろう。
     しかし、どうしてわざわざ時枝に伝言を頼んだのだろうか? 別にそんな内容であれば直接誘ってくれても、電話してくれてもいいのに……きっと迅にはなにか考えがあるのだろうが、残念ながら嵐山にはその考えの心当たりが思いつかない。
     うーん……、と考え込む嵐山に時枝は口を開く。
    「綾辻󠄀先輩と木虎、今日急ぎで帰る感じですか?」
    『ううん、そんなことないけど……』
    「はい、特には……」
    「じゃあ、この後の部隊への引き継ぎと報告書はおれたちがやっておきますので、嵐山さんは迅さんの所へ行ってください」
    「いや、それは俺が……」
    「大丈夫ですよ。今日はそんなに門も開かなかったので引き継ぎも報告書も時間掛からないと思うので」
    『みんなが戻ってくるまで報告書は私の方でやっておきますね』
    「……いつも嵐山先輩にお任せしているんで、今日くらい私たちに任せておいてもいいんじゃないですか」
    「そうですよ! 佐鳥に任せてください!」
    「みんな……」
     後輩たちの優しく頼もしい言葉に感激しつつ、嵐山はありがたくその言葉に甘えることにする。
     何度も礼を言いつつ振り返り、手を振りながら嵐山はその場を離れた。
     
     お月見しようぜ、と言われたが……どこでやるかは時枝は聞いていなかったらしい。時枝も嵐山と迅のことだから事前に場所は決めていると思ったのだろう、迅に特に聞くこともしていなかった。もちろんそんな時枝を責めるつもりは微塵もない。
     月見と言うのだから、月がよく見える場所。
     そんな場所をいくつか思い浮かべてみる。
     学校の屋上……はここから少し離れすぎているので違うだろう。
     玉狛の屋上……それならばきっと玉狛のみんなとやるだろうから小南からも連絡があってもおかしくないし、きっと時枝に伝言はしないだろう。時枝に伝言すると言うことはきっと迅と自分の二人でだと思ったのだ。
     ならば、この警戒区域か見晴らしのいい公園とかだろうか?
     今自分のいる場所からそんなに離れていない場所に、少し大きめな公園があったはずだ。とりあえずそこへ向かおうと嵐山は走り出した。
     ……結果として、そこに迅はいなかった。
     公園の中をぐるりと見渡すがどこにも人の気配はない。
    「……違ったか」
     ぽつり、と嵐山の声だけが夜の公園に落ちた。
     ふと顔を上げたときに水飲み場が目に入る。あれは確か……と記憶が蘇ってきた。そうだ、まだ防衛任務に出始めて慣れないことも多く、いろいろと無様なことになっていた時期に……バムスターの襲撃を避けるときに勢い余って雨上がりの泥水の中に突っ込んでしまったことがあった。あのバムスターは結局迅が倒して……トリオン体とはいえ、あまりにも泥だらけで恥ずかしい状態だったので嵐山はこの公園の水飲み場で泥を洗い流すことになったのだ。そのときにあの水飲み場に寄りかかって迅がゲラゲラ笑っていたことを思い出す。
     あのときは弱くて、不慣れで、たくさん無様な姿をさらしていたな……と羞恥で嵐山は頭を抱える。でも……でも、いつも迅はそんな嵐山に「大丈夫だよ」って笑っていたことも一緒に思い出した。
    「……どこにいるのかな……あいつ」
     ああ、会いたいな。そう思いながら嵐山は次の心当たりの場所へ足を向けた。
     
     なかなか迅が見つけられない……。
     あの公園の後も、よく迅が警戒区域を見回している廃ビルの屋上や、休憩と言いながらサボっている場所などを思いつく限り回ってみたが、どこにもいなかった。
     なかなか見つからないことへの焦りと、行く場所で迅とのやりとりを思い出してしまい、迅に会いたい気持ちがどんどん募っていく。
     ここにもいないのか……と、嵐山は足を止めて大きなため息をつく。
     息を吐き切ると、うつむいていた顔を上げた。
    「……」
     丸く、くっきりと浮かぶ月。月明かりに照らされながら嵐山は考える。
     迅は防衛任務後に伝えるように時枝に伝言を頼んでいた。それは自分に防衛任務に集中させることもだろうが、迅がいる場所が嵐山の防衛任務先からそんなに離れていないと言うことだ。
     月見……ただ月を見るだけならばわざわざ月見をしようと言うだろうか? ただ月を一緒に見るのであれば迅のことだから夜の散歩をしようとかそんな言葉になる気がする。ならば、月見と夜の散歩の違いはなんだろう。
    「月見……月、ススキ……団子?」
     団子……。月見団子なら……嵐山が換装したまま食事をすることにいい顔をしないことを迅は知っている。そうなってくれば……。
     思いついた場所、多分これが正解だろうと嵐山は自信があった。ならばまっすぐにそこに向かおうと嵐山は走りだす。
     
     
     明るく照らされる月明かりに、機嫌良く迅は鼻歌を歌いながら手にしていたススキを揺らす。
    「お。そろそろかな」
     あぐらをかいていた姿勢のまま、首だけを動かしそちらを見たと同時にトン、と軽やかな着地音がコンクリートの上に響く。
    「迅っ!」
    「おー、嵐山。思っていたより早かったな」
     手にしているススキを振りながら迅はそう言って笑った。
     迅の所へ歩み寄りながら、嵐山は換装を解除する。そして迅の隣にそのまま座った。
     隣に座った嵐山に迅が手にしていたススキを渡してくるので、そのまま嵐山は受け取る。そのときに触れた迅の手が温かかったので、迅も換装体ではなく生身なのだろう。
     今度は迅ではなく嵐山が手にしていたススキをなんとなく揺らし始めた。
    「まさか本部の屋上だったなんてな……」
    「えー、だって任務終わりで、月が良く見えて、月見団子食うのに生身でいて安全な場所って言ったらここしかなくない?」
     ほい、と言いながら迅は隣に置いていたビニール袋からパックを出して、そこから取り出した団子を差し出した。
     昼間に玉狛で月見団子を作ったらしい。陽太郎が丸めた分もあるので若干形は歪だが味は保証するよと迅は笑う。そんな迅の様子につられるように嵐山も笑い、その団子を一串受け取ってパクリ、と食べた。優しい甘さが口の中に広がる。
    「うん、美味い」
    「だろ」
     嵐山の反応に迅は気を良くしたようで、嬉しそうだ。今だけじゃない、今日の迅はいつもより機嫌がいい。
    「……最初から本部にいるって教えてくれたら良かったのに」
     団子を食べながら、嵐山はついぽつりとこぼす。
     こんなに機嫌がいい迅は珍しい。そんなに機嫌がいいなら……さっさと居場所を教えてくれていたらもっと早く合流して、隣にいれたのに……。
     少し不満げな嵐山を見て迅は少し意外そうな顔を見せるが、すぐにまた笑った。
    「まあ、嵐山ならここに来ると思ってたからね。信じていたわけだよ、愛の力ってやつを」
    「……俺がここに来れなかった未来も視えていたんだろ」
    「まあね」
     嵐山の言葉を否定することなく頷き団子を食べる迅を見て、嵐山はむうっと不満げに口を尖らせた。そんな嵐山にもう一串、団子を差し出しながら迅はまあまあとなだめてくる。
    「まあ、そのときはちゃんとおれが迎えにいくつもりだったよ」
    「なんでそんな回りくどい真似をしたんだ」
     迅が差し出す団子を遠慮なく取りながら、嵐山は迅を見る。
    「えー? そうだなー……ここに来る間さ、ずっと嵐山はおれのこと考えてくれたわけじゃん」
     ぐっ、と飲み込みかけた団子が詰まりそうになるが、なんとかそれをやり過ごし嵐山は息をつく。まさかこの年で団子を喉に詰まらせるなんて展開はさすがに恥ずかしい。
     ……団子を詰まらせそうになったのもだが、迅が言う通りずっと迅を探している間も迅のとの事を思い出して、ずっと考えていたことも図星だったので……どう反応していいのか嵐山は戸惑う。
     そんな嵐山にかまわずに迅は言葉を続けた。
    「最近多忙で全然構ってくれない嵐山隊長の貴重なこの時間を、ちょっと独占してみたかったって言ったら怒る?」
    「……っ、だったらなおさら、回りくどい真似するな」
     のぞき込んでくる迅の視線から逃げるように、目を反らし嵐山は小さくつぶやいた。いつもしっかり目を見て、はっきり伝えてくる嵐山にしてはめずらしい態度だ。
     そして迅はちゃんとわかっている。これは別に嵐山が不機嫌になっているわけではなく、ただ単に照れているのだということに。ただ、嵐山がこうやって照れてこのような態度になるのは非常に珍しい。
     そんな姿に迅はまた笑った。
     迅が笑ったのが気に入らなかったのだろう、嵐山は手にしていたススキでペシ、と迅を叩いてくる。
    「あはは、悪かったって。機嫌直してよ。ほら、こんなに月も綺麗だしさ」
     迅の言葉に、ススキを持つ手を止めて月を見上げる。
     確かに綺麗な月だ。
     闇夜にぽっかりと浮かぶ綺麗でまるい月、そしてそんな月明かりに照らされて機嫌よく隣で笑っている迅。
     ……うん、こんな状況で拗ねているのは確かにもったいないと嵐山は思う。
     迅の言う通り、最近は忙しくてなかなか迅とも会えなかったのだ。そして、探している間もずっと会いたかった迅が、今隣にいる。
    「……団子、もう一つくれ」
    「はいはい、どうぞ」
     月より団子だね、そうって迅が笑いながら団子を渡してくる。
     その団子を受け取り、しばらく団子を見つめている嵐山を迅は頬杖をついたまま眺めていた。ややしばらくして、嵐山は団子からまっすぐに迅へ視線を移す。
     団子を真剣に見つめていたのに、急にこちらを見た嵐山に迅は首を傾げてみせた。
     まっすぐに見つめてくる嵐山が、そっと笑う。
     
    「今度は月や団子を口実にしないで会いに来てくれ」
    「…………迅、了解」
     
     嵐山だってちゃんとわかっているのだ。
     この遠回しな月見の誘いは、そのままストレートに嵐山に会いたいと迅が素直に言えないからだと……。
     そしてそんな迅を困った奴だと思う反面、愛しいと思うことに。
     
     丸い月が照らす本部の屋上、二人の間で機嫌良くススキが揺れていた。
     
     
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    フジワラ

    DONE秋のじんあらでお月見🎑をテーマに書いてみました。

    秋の行事がなぜか芋掘りしか思い浮かばなかったんですが……🌸さんが「お月見」っていう素晴らしき行事を…しかもそのテーマをくれると言ってくれたので「うっほお!書く書く!」ってなっていたんですが…なんだかんだでこんなに遅くなってしまいました…。雪降りだしちゃったよ……。
    でも、せっかく書いたのでそのままアップしちゃいます~。

    2024/11/25
    「お、とっきー。いいとこで会った」
    「迅さん」
     本部の廊下にて、隊室に戻ろうと一人歩いていた時枝の後ろから迅が声を掛けてきた。
    「嵐山さんなら隊室ですよ」
    「いやいや、これから防衛任務でしょ。だからさ、伝言頼まれてくれない?」
     手にしていたぼんち揚を時枝に差し出しながら、迅はそう言った。
     
     
    「そろそろ時間だな。綾辻」
    『はい、辺りに門の反応はありません。もうすぐそちらに引き継ぐ隊も到着します』
     夕方から夜にかけての防衛任務が終わる時間、インカム越しの綾辻からの言葉に嵐山は頷く。
    「よし、じゃあ今日はこれで終わりだな」
     すっかり日が暮れて暗くなってしまっている時間だ。嵐山は自分がもうすぐここに来る隊に引き継ぎを行うために残るので、時枝と佐鳥に女性陣の木虎や綾辻󠄀を送っていくように指示を出す。
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