シークレット・ループ「いっそのこと、どこかへ閉じ込めてしまおうか」
ぽつりとつぶやけば、ぎょっとした視線が俺を向いた。片手に持ったロックグラスの氷が、揺れた肩に合わせて高く鳴る。
「……飲みすぎだよ、お前」
大きく息を吐きだした後にそう言った友人の声は、多分に呆れを含んでいた。
「そうだな」
忘れてくれ、と続ければ、友人はあからさまに安心したように、グラスを傾ける。
哀愁漂うクラシックが、喧騒の奥から聞こえた。橙色の明かりが灯るこの店は、適度にやかましく、適度に落ち着いた雰囲気がある。バーカウンターから離れた角の円卓を囲む俺たちの会話に聞き耳を立てるものなど、誰もいない。だから、酒を餌にキース・マックスを誘い出し、スキャンダル待ったなしのこんな話を聞かせている。
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