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    pie_no_m

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    pie_no_m

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    お題箱より「🍕から攻められてたじろぐ🎧」です。
    ありがとうございました!
    ※ごつサブ有り

    #ディノフェイ
    dinofacies
    #エリオ腐R
    elioRotR.

    Gimme Gimme Gimme! なんだかんだで、ここの人間たちはそれなりにアクティブな方だと思う。フェイスは自室の扉の前で、ぼんやりと誰もいないリビングを見渡した。
     オフといえば専らクラブへ通っている自分だって、客観的に見ればアクティブな人間に含まれるかもしれないが、今日は違った。贔屓のクラブはここ十日の間に内装工事と設備の点検があるとのことで、フェイスのDJとしての活動はやむなく休止中だった。それは何故か。クラブなら他にもあるが、他の施設は夜毎フェイスのファンが群れをなしてやってくることに慣れていない。つまりのやむなくである。特に予定もない休日、フェイスはゆっくりたっぷりと睡眠をとり、リビングに差し込むのは正午過ぎの光だった。ブランチを済ませたあとはレコードを整理しようかと考えつつ、フェイスが一歩を踏み出すか踏み出さないかという瞬間、玄関代わりに外へと続く扉が開く音がした。
     帰宅したのはディノだった。今日は野球観戦に行くと聞いていたが、プレイボールはそれほど早い時間だったのだろうか。
    「おかえり。試合、もう終わったの?」
    「……」
     フェイスは不思議に思ったことをそのまま聞いただけだが、ディノは答えない。部屋に入ってきてからずっと無言というのも珍しいことだった。試合が中止にでもなって落ち込んでいるのかもしれない。フェイスがもう一度問おうとしたとき、ディノはようやく動きを見せた。肩から下ろした、というより落としたリュックサックが床にぶつかり重い音を立てた。
    「フェイス……」
    「なに、どうしたの? とりあえず座りなよ」
     ディノは相変わらず何も言わない。ただならぬ雰囲気を感じて心がざわついたが、緊急というわけでもなさそうだ。一旦腰を落ち着かせるよう促すと、フェイス自身もソファに座る。その場に落とした荷物を拾おうともせず、ディノはゆっくり部屋の中央まで進んだ。険しい顔が何を意味しているのか全く見当もつかなかったが、フェイスはすぐにその意図を知ることになった。突然ソファの座面に押し倒され、自身の上にディノが覆い被さったからだ。
    「わ、何……ディノ?」
     動揺を伝えても、ディノは退こうとしない。いよいよ恐怖さえ覚え始めたフェイスがその眼を見つめると、意外にもディノの表情は緩み、花が咲くように和らいだ。
    「にひ、フェイス……かわいい」
    「え……っ」
     不意に、言葉を奪われた。ディノは水分補給をする犬のようにフェイスの唇に舌を這わせ、口内に割り入ろうとする。まさかの状況に判断が遅れたフェイスが我に返り、その胸を押し返すと、生温かいものは離れていった。
    「ちょっと、何なの? もしかして酔ってる……?」
    「お酒? 飲んでないよ」
    「なら──」
     どうしたの、という問いかけは再び閉じ込められてしまった。今度は口を開いていたので、ディノはいとも簡単にフェイスの中へ侵入してくる。こんなことは初めてだった。昼下がりのリビングは共同生活の場だ。ここで求められることなど一度もなかった。混乱は絡め取られ、心は柔らかい感触と温度に惹かれていくが、明らかに何かがおかしい。
    「ん、ねえ……ディノ、っ……まって、やだ」
    「……嫌?」
     悲しげな顔が傾ぐ。ディノは状況に全く違和感を抱いていない様子で、受け入れまいとするフェイスの態度に傷付いているようだった。
    「嫌、っていうか、こんなとこで……突然どうしたの?」
    「フェイスに触りたいなあって思って」
     言いながら、ディノの手がフェイスの腰から胸辺りを撫でる。明るいリビングで、皆が座るソファの上で、脳が茹だってしまいそうだった。フェイスからの質問が止むと、ディノの頭がフェイスの首筋に埋まる。ここまでと止めなければならない理由や意味が分かっていても、危ない橋のラインは徐々に後退していき、その愛撫を味わってしまう。音を立ててフェイスの肌に触れるディノの唾液が空気に触れてひんやりと冷たくなり、そしてだんだんと乾いていく感触。
    「……っ、ディノ、駄目、だってば」
    「うん、ごめん……」
     言葉とは裏腹に、ディノの手がフェイスの部屋着と素肌の隙間を縫おうと布地を探り出したとき、再び部屋の入り口が開く音が聞こえ、フェイスはすんでのところでディノを押しのけ、ソファの前に棒立ちになることに成功した。ほぼ同時に、ジュニアがリビングへ姿を現す。
    「おい、クソDJ、いるか?」
    「どうしたのおチビちゃんそんなにあわてて」
    「どうしたもこうしたもねー……ってディノ! いたー!」
     ディノはフェイスに押しのけられたあと、自力で起き上がったらしい。ぼんやりとした顔でメンティー二人を眺めている。
    「ディノ、大丈夫か? とりあえずキースに連絡しねえと」
     ジュニアが手早くコールする。フェイスはすでに何となくの予感を持っていた。
    「あ、キースか? 見つけた、リビングにいた! え? サブスタンスも見つけた? オーケー、とりあえず博士んとこに連れてく」
     そういえばフェイスの携帯端末は枕元で、電源を切ってしまっていたことを思い出す。切羽詰まった様子のジュニアとその通話先のキースからの断片的な情報だけで、何が起きているかはおおよそ理解できた気がした。
    「ねえ、まさかとは思うんだけど……」
    「サブスタンスだ! クソDJお前、今まで寝てたのか?」
    「……ごめんって、次から気をつけるから、詳しく教えてよ」
     鼻息荒い同期に頭を下げて、フェイスは研究室への道すがら、詳細を聞き出すことに成功した。ディノはサブスタンスという単語を聞いてほんのわずかに自我を取り戻したらしい。まだぼんやりとしているが、いたずらをして叱られた子犬のようにおとなしく二人の後をついてくる。
     事の発端は野球観戦が行われるスタジアムから検出されたサブスタンス。レベルは低く、気分が高揚した上に日常生活におけるちょっとした欲求を抑えられなくなる、アルコールのような効果を持つもののようだ。スタジアムでは酒類も売られているため発覚は遅れそうなものだが、玩具店を丸ごと買い占める勢いのスーパーヒーローが目撃されたことから【HELIOS】へ連絡があった――能力のおかげで影響が増したのだろう。
     一緒にいたはずのディノが行方不明なので、キースはイエローウエストのピザ屋を巡り、ジュニアと手分けして捜索に当たっていた、ということだった。
    「なんか……本当にごめん」
    「イヤ、まあオフだったからっていうのもあるけど……何が起きるかわからねーんだから、気を付けろよ」
     さまざまな思いの入り混じったフェイスの謝罪を、ジュニアは軽く受け入れてくれる。ノヴァ博士にディノを引き渡したころ、無事にサブスタンスを回収処理したと、キースから連絡が入った。

    「ほんっとうに、ごめんな」
    「もう、わかったってば、次謝ったら二度と許さないから」
     お詫びのショコラ、その紙袋が床につくほど深く頭を下げて、ディノは本日幾度目かの謝罪の言葉を口にした。
     丸一日の入院後、特に後遺症もなく復活したヒーローのうち、ジェイ・キッドマンは綺麗に先日の記憶が抜け落ちていたそうだが、ディノは普段酒にも酔わないせいか、自身を喪失していた間のことをはっきりと覚えていた。
    「我を忘れて襲いかかるなんて、動物みたいだ、本当に、その……フェ、フェイス……!」
     謝罪の言葉も出せず、ディノは情けない声でフェイスの名を呼ぶ。自責の念で相当なダメージを負っているようだ。フェイスはリビングの床に触れそうなショコラを救出し、それからディノの両頬を支え、前を向かせた。
    「……あのさあ、俺、嫌じゃなかったよ」
    「えっ」
    「場所が場所だったし、驚いたけど……ディノにああいうことされるのが、駄目だったってわけじゃないから」
    「フェイス……」
    「それに」
     そこでフェイスは口を噤んだ。これ以上は告げなくても良いことかと首を振る。ディノに意識させない方が、圧倒的に得だからだ。不思議そうなディノの顔を見て、優越感は何度もせり上がってくる。
     ディノの日常生活における、ちょっとした欲求について――フェイスは、ピザに勝ったのだ。
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    pie_no_m

    DONE
    日曜日の番犬 イエローウエストの夜。多種多様な人工灯に煌々と照らされた通りは一晩中眠ることを知らない。歓楽街としては魅力的だが、昼間と比べ物騒で、どこか後ろ暗く、自分の身を自分で守る術を持たない人間が一人で出歩けるほど治安が良いわけでもなかった。ひとつ裏の通りに入れば剣呑な雰囲気は特に顕著であったが、フェイスは気にした様子もなく、胸の前に大きな箱を抱えて歩いていた。一年のうち、もしかしたら半分は通っている道だ。警戒はしても、怯えはしない。その上、今夜は一人ですらない。
    「ごめんね、付き合わせちゃって」
    「気にしてないよ。明日はオフだし、むしろ体力が余ってうずうずしてるくらい」
    「アハ、ディノらしいね」
     歩を緩めて箱を持ち直したフェイスの少し後ろを、フェイスより大きな箱を抱えたディノがそれでも身軽にスキップする勢いで歩いている。箱の中身は、フェイスが懇意にしているクラブオーナーが貸し出してくれた音響機材だった。大きなものは業者に任せたが、いくつかは精密機器も含まれるので直接運ぶための人手が欲しいのだと頼んだところ、ディノは快く引き受けてくれた。『ヒーロー』としての業務終了後、そしてディノの言う通り明日は休日なので、【HELIOS】の制服は身につけていない。一般的な服を着た、背丈のある男が爛々と目を輝かせて歩く様は、この界隈で言えば異常だった。目を引いても絡まれないというのは、見た目のおかげで人種性別問わずエンカウントの多いフェイスにとって非常にありがたいことだ。最初にディノをクラブへと誘ったときも、似たような理由があったことを懐かしく思う。
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    てゐと

    DONEフォロワーさんからもろに影響を受けたので夏のジュドニコを教師パロで書かせていただきました!
    以前保健室の冷蔵庫にニコが自分のものを入れているってフォロワーさんのツイート、本当に大好きですこ~し拝借させていただきました…すみません、お許しを。まあでもいいですよね、最高。

    ジュード→養護教諭
    ニコ→生徒

    余談ですがジュードせんせが言っている「担任のアイツ」はあの人のことです
    とけだす、泡沫「うわ、あつ……」
     誰が何と言おうとこんなにも暑いのに、空調の世話に慣れない中途半端な、夏になりかけの季節だ。校舎の窓という窓が開けられて、何が好きで我慢大会をさせられているのかと涼を求めて保健室の扉を開けたのに。ニコが風の流れを作ったので、消毒液の匂いが混じった生暖かい風が頬をさっと撫でる――いや、頬をじわりと撫でつける。
    「なんだ、ジュードはいないのか」
     廊下とは違い、締め切られた空間の暑さには本当にうんざりしてしまう。文句を言いながらもペタペタと上履きを鳴らすニコの額を、つうっと汗が流れていった。拭うこともしないまま、我が物顔でずかずかと進む先には冷蔵庫があって、ニコは迷うことなく上段に手を掛けて、まずは冷気を浴びた。それからアイシング用の冷却材や氷嚢用の氷の山を手のひらで掻き分けて探し出したのは、プラスチックの黄色いパッケージだ。ジュードはあまりいい顔をしないが特に止めもしないので、保健室の冷凍庫には定期的に氷菓を忍ばせることにしている。食べては入れて、食べては入れて。随分と奥に仕舞い込まれていたところを見るに、随分とそれもご無沙汰になってしまったようだ。
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