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    pie_no_m

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    pie_no_m

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    お題箱より「待ち合わせをする🍕🎧」です。
    ありがとうございました!

    #エリオ腐R
    elioRotR.
    #ディノフェイ
    dinofacies

    お気に入りのあの店で あの日、いつにも増して強引さを感じさせるSNS上でのやり取りは、言うまでもなくフェイスの側が折れる結果となった。待ち合わせの場所や時間を周囲の人間――主にフェイスのファンだが――に悟られないよう、ディノからの個人的なメッセージは思ったよりも迅速にフェイスのアカウントまで届いた。末尾の「待ってる」というシンプルなひと言を確認しただけで、その日はひとり静かに過ごしたい気分であったことなど都合良く忘れたフェイスは目的地、件のイタリアンレストランへ向かう足を早めた。
     
    「俺のこと、呼べば来るものだって思ってない?」
     ピザには、正直飽きている。飽きていても美味しいのがピザらしい。毒されている自覚はあるけれど、その味はなるほど評判通りで、フェイスは悔しさを含めた文句を空に放り投げた。それでも今回は「まし」な方だった。行くか行かないか、来るか来ないかの意思を問われることもなく、自動的にフェイスの行き先や予定が決まっていることだってあるのだから。惚れた弱み、自己責任でも、小言くらいはぶつけたい。
     対するディノはご機嫌に、口いっぱいの好物を飲み込んでから「そんなことないよ」と答えた。
    「フェイスが来てくれたら嬉しいな、って思ってるだけで」
    「でも、俺に断られるとは思ってなかったでしょ」
     食い下がるフェイスに、ディノはまるい瞳の輪郭をとろけさせながら微笑んだ。こういうときに、大きく開いた時間の差を思い知らされる。彼の前ではいまだにどうしてか、どうしたって、幼い子どもと変わらない存在になってしまう瞬間がある。フェイスの言葉や態度だけのせいにするには柔らかすぎる視線を、居心地の悪さと共に受け止めるしかない自分が恥ずかしくて、少しだけ愛おしい。
    「だって、今日はさ、仕方ないだろ? フェイス、一日楽しそうだったし……俺だって」
     フェイスと同じ目線、つまり聞き分けのない子どものような口調で、ディノは最後に唇を尖らせてみせた。
    「フェイスとの時間が欲しかったんだよ」
     自分が悪かったことにして――フェイスが仕方なく折れたふうに話をまとめて、ディノの瞳は相変わらず甘く緩んだままだった。同期の『ヒーロー』たちと街を巡ったことは偶然の連なりでしかないが、ディノだけはフェイスの身を直接捕まえた。理由として、今の話はそのままディノの本音なのだろう。試合に勝って勝負に負けたフェイスが悔しい思いを倍増させたところで、ディノの携帯端末はジュニアからの救援要請を受け、軽快な通知音を鳴らした。

     それならば、と機会を待つこと数週間。SNSを開けば、ディノのアカウントは今日もやけに賑わっている。フェイスの時間を確保したがるわりに、当の本人は無意識に人を集める習性を持つのでたちが悪い。フェイスの兄やもう一人のメンターとの会合がないことだけは昨夜のうちに確認済みだった。同じくオフを過ごすフェイスがクラブから早々に切り上げてきたのもこのためだ。
     作戦はシンプルに、同じことの仕返し――といえばやはり子供じみている気はするが、たまにはその身を振り回してみたい。フェイスの突然の誘いに、ディノは応じてくれるだろうか。通りの端に立ち止まったまま、メッセージの作成画面を開く。
    『このあと、時間空いてる?』
     文章を打ち込むと、間を空けずに確認済みのマークが表示された。チャット式の個人メッセージ欄を見つめる。次に現れるのはディノからのメッセージだと思っていたが、フェイスの携帯端末は突然小刻みに揺れ動き、液晶はディノからのコールを知らせた。
    「……ディノ?」
    『ハイ、フェイス、いまどこにいるんだ?』
     端末を傾けた耳元で、想像の何倍も弾んだ声がする。ディノに今いる通りの名を告げると、すぐに向かうと返事が来たのを、フェイスは慌てて遮った。
    「待って、俺、まだ何にも言ってないんだけど」
    『うん、フェイスは急用ならそう言うだろうし……他の話があるなら、ご飯でも食べながらどうかなって』
     通話先のやわらかい笑顔が目に浮かぶ。打算的な自分を恥じるほど、ディノの声はただただ嬉しそうだった。つられて微笑んでしまいながら、フェイスは今日も勝ち越しを決めた恋人に応える。
    「……うん、じゃあ、待ってるから。場所は――」
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    pie_no_m

    DONE
    日曜日の番犬 イエローウエストの夜。多種多様な人工灯に煌々と照らされた通りは一晩中眠ることを知らない。歓楽街としては魅力的だが、昼間と比べ物騒で、どこか後ろ暗く、自分の身を自分で守る術を持たない人間が一人で出歩けるほど治安が良いわけでもなかった。ひとつ裏の通りに入れば剣呑な雰囲気は特に顕著であったが、フェイスは気にした様子もなく、胸の前に大きな箱を抱えて歩いていた。一年のうち、もしかしたら半分は通っている道だ。警戒はしても、怯えはしない。その上、今夜は一人ですらない。
    「ごめんね、付き合わせちゃって」
    「気にしてないよ。明日はオフだし、むしろ体力が余ってうずうずしてるくらい」
    「アハ、ディノらしいね」
     歩を緩めて箱を持ち直したフェイスの少し後ろを、フェイスより大きな箱を抱えたディノがそれでも身軽にスキップする勢いで歩いている。箱の中身は、フェイスが懇意にしているクラブオーナーが貸し出してくれた音響機材だった。大きなものは業者に任せたが、いくつかは精密機器も含まれるので直接運ぶための人手が欲しいのだと頼んだところ、ディノは快く引き受けてくれた。『ヒーロー』としての業務終了後、そしてディノの言う通り明日は休日なので、【HELIOS】の制服は身につけていない。一般的な服を着た、背丈のある男が爛々と目を輝かせて歩く様は、この界隈で言えば異常だった。目を引いても絡まれないというのは、見た目のおかげで人種性別問わずエンカウントの多いフェイスにとって非常にありがたいことだ。最初にディノをクラブへと誘ったときも、似たような理由があったことを懐かしく思う。
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    てゐと

    DONEフォロワーさんからもろに影響を受けたので夏のジュドニコを教師パロで書かせていただきました!
    以前保健室の冷蔵庫にニコが自分のものを入れているってフォロワーさんのツイート、本当に大好きですこ~し拝借させていただきました…すみません、お許しを。まあでもいいですよね、最高。

    ジュード→養護教諭
    ニコ→生徒

    余談ですがジュードせんせが言っている「担任のアイツ」はあの人のことです
    とけだす、泡沫「うわ、あつ……」
     誰が何と言おうとこんなにも暑いのに、空調の世話に慣れない中途半端な、夏になりかけの季節だ。校舎の窓という窓が開けられて、何が好きで我慢大会をさせられているのかと涼を求めて保健室の扉を開けたのに。ニコが風の流れを作ったので、消毒液の匂いが混じった生暖かい風が頬をさっと撫でる――いや、頬をじわりと撫でつける。
    「なんだ、ジュードはいないのか」
     廊下とは違い、締め切られた空間の暑さには本当にうんざりしてしまう。文句を言いながらもペタペタと上履きを鳴らすニコの額を、つうっと汗が流れていった。拭うこともしないまま、我が物顔でずかずかと進む先には冷蔵庫があって、ニコは迷うことなく上段に手を掛けて、まずは冷気を浴びた。それからアイシング用の冷却材や氷嚢用の氷の山を手のひらで掻き分けて探し出したのは、プラスチックの黄色いパッケージだ。ジュードはあまりいい顔をしないが特に止めもしないので、保健室の冷凍庫には定期的に氷菓を忍ばせることにしている。食べては入れて、食べては入れて。随分と奥に仕舞い込まれていたところを見るに、随分とそれもご無沙汰になってしまったようだ。
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    recommended works

    pie_no_m

    DONE🐺🍕×🐈‍⬛🎧で👿🍣と💀🍺も出てくる。
    やりたい放題のファンタジーパロです。何でも許せる方向け。
    ラ リュミエール 息をひそめ、自らの気配を殺す。
     カーテンは閉め切り、電気を消していても、フェイスの目には部屋の中の様子がよく見えた。窓から射し込むランタンの灯りは、リビングの床に二人分の影を伸ばしては縮めていく。尖りきって壁にまで届きそうな三角の影は全部で四つ。フェイスの猫のようにぴんと立てた耳と、隣で膝を抱え背を丸めるディノの、フェイスのものより大きくてふさふさの毛が目立つ耳。そのシルエットがひくひくと落ち着きなく動くのを、フェイスは身動きもせずただじっと見つめていた。
     十月三十一日。外から子供たちの興奮した話し声や高い笑い声が聞こえる。きっと彼らは魔物や悪霊の姿を模して、通りの玄関の扉を順番に叩いては大人に菓子を要求している最中だろう。それではなぜ、そんな通りに面した部屋に住む自分たちはこうして身を隠すような真似をしているのか。フェイスはともかく、ディノは普段から街の人間と仲が良い。喜んで道行く子供たち皆に菓子を配りそうなものだが――明白な理由である三角形の影が、フェイスの見る前でまた一回ひくりと動いた。
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