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    オスブラ版深夜の創作一本勝負

    第20回
    【お題】・居眠り

    まんなんのオスブラ先生の設定です。
    お付き合い初期。

    ***

    「オスカー!」
    「っはい!」
     はっと顔を起こした瞬間、そこにはオスカー先生の顔があった。
     驚いた様子のその表情はすぐにくしゃりと緩んでいく。
    「ブラッド先生が居眠りなんて珍しいですね」
     数回まばたきをして周囲を見回す。
     国語科教員室の見慣れた机と、おそらく俺に声をかけに来たオスカー先生。
    「すみません、ノックしたんですが返事がなかったので覗いてしまいました」
     その手には行き場を失った、おそらくオスカー先生が脱いだのであろうジャージの上着。
     オスカー先生は何食わぬ顔で、それを羽織ると袖を通した。
     スムーズなその動作に魅入って、頭の隅に残っている何かを反芻する。
     目の前に広げていた資料の内容ではない。
     ぼんやりとした夢のような。
    「急に名前を呼ばれたので驚きました」
     オスカー先生は照れたように言って、頭をかく。
    「しかも強い口調で呼び捨てされたので」
     その言い方に不快感を持っている様子はない。
     どちらかといえば。
    「すまなかった、夢を見ていたようだ」
     言いながら、そうか、夢を見たのか、と思う。
     両手で顔を覆って思い出そうとするが、思い出せない。
     ただ。
    「オスカー先生がどこかに行ってしまって」
     帰ってこない夢だったような気がする、と。
     呟けば、オスカー先生の口元が緩む。
    「それは・・・ありがとうございます」
    「何の礼だ?」
    「呼び止めてくださったことへ、でしょうか」
     または、ブラッド先生の夢に登場できたことへ、ですかね。
     言いながら思考が飛んでしまったのだろう、オスカー先生の視線が揺らぐ。
    「あとは、その、オスカー、と呼んでいただけたので」
     と言われて、ぐ、と息が詰まった。
    「そうか」
     夢の中ではとても自然にそう口にしていた。ずっとそうしていたかのように。
     今の自分の中にも、いまだにその自然さが残っている。
     一度だって、そう呼んだことなどないのに。
     俺は立ち上がってオスカー先生に向き合う。
    「あ、帰りますか?」
     オスカー先生は足元に置いていた自分の荷物を掴もうと屈む。
     そうして低くなったオスカー先生の肩に両手を置いて、頭部、その耳元にそっと顔を近寄せて。
    「帰ろうか、オスカー」
     と囁けば、オスカー先生の動きが止まった。
     その後、ゆっくり顔があげられて、その顔は真っ赤だった。
     その色と表情に言いようのない感情の波が襲ってくる。
     自分の顔に歪みが生じているのがわかった。
     このまま抱きしめてみたい。
     そして。
    「ブラッド先生、早く、帰りましょう」
     そう言ってオスカー先生が自分の肩にある俺の右手を握ってくる。
     そのまま視線がふい、と床の方に逸らされた。
    「キス、したいので」
     呼吸が止まる。早々に白旗を上げよう。
    「同意だ」
     ここでするわけにはいかないのだから。
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